「知る」は、おいしい! リゾナーレトマム|TRAVEL
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2019年9月25日

「知る」は、おいしい! リゾナーレトマム|TRAVEL

TRAVEL|リゾナーレトマム

このひと皿と出合うために、リゾナーレトマムへ OTTO SETTE TOMAMU(1)

季節ごとに、このレストランを訪れたい──。人生が彩りを増す、そんな出合いはそう多くはありませんが、「OTTO SETTE TOMAMU」(以下、「オットセッテ トマム」)はまさにそんなレストランです。「北海道の極上素材を食べたい」「質の高いイタリアンっていいよね~」「でもやっぱりフレンチも好きなんですけど」という欲望を、一度にすべて満たしてくれるのですから。

Photographs by OHTAKI Kaku|Text by HASEGAWA Aya|Edit by TSUCHIDA Takashi

数年後には、予約が取りにくい店に……いま飛行機に乗って、食べに行く価値アリ!

「オットセッテ トマム」は、「リゾナーレトマム」のメインダイニングとして、2019年7月にオープンしたイタリアンレストラン。少し長くなるかもしれませんが、まずは「オットセッテ トマム」の置かれているシチュエーションをざっくり説明しておきますね。
星野リゾート トマム全景。左のツインタワーが「ザ・タワー」。右のツインタワーが「リゾナーレトマム」。
安藤忠雄氏設計「水の教会」。
「リゾナーレトマム」は新千歳空港からバス、クルマ、鉄道で約90分、北海道のほぼ中央に位置する「星野リゾート トマム」内にあります。「星野リゾート トマム」は東京ドーム123個分の広大な敷地を持つ、北海道最大級の滞在型リゾート。29のスキーコース、国内最大級の屋内ウエーブプールに温泉、さらには四季を通して北海道を体感できるアクティビティも充実しています。安藤忠雄さん設計の「水の教会」で結婚式だって挙げられちゃうんですよ。え、結婚する予定はないですって? ご安心あれ、朝の6時30分から7時30分までは結婚式を挙げなくても見学できます! 2018年8月には、敷地内に「ファーム星野」を開設。農産物の生産にも取り組んでいます。宿泊施設は2つ(「ザ・タワー」「リゾナーレトマム」)、レストランは最大20店舗(季節により異なります)と、数日の滞在で、遊び、食べ尽くすにはかなりの気合が必要です。また「星野リゾート トマム」を語る上で欠かせない、「雲海テラス」についてはあとで改めて紹介しましょう。
「オットセッテ トマム」に話を戻します。「星野リゾート トマム」を代表するレストランとして誕生した「オットセッテ トマム」のコンセプトは、イタリア語で美食のカレンダーを意味する「Calendario Gastronomico(カレンダリオ・ガストロノーミコ)」。トマム同様、イタリアの山岳地帯に位置し、山海の素材に恵まれたピエモンテ州やリグーリア州の調理法で、北海道の極上素材を独創的なイタリアンに仕上げています。
ところで、みなさんは「北海道の美味しいもの」と聞いて何を思い浮かべますか。自然に恵まれた場所なだけに素材そのものが美味しいですよね。そこに北海道旭川市出身の料理長・武田 学さんのこだわりがあります。「みなさんがこれぞ北海道と思われる食材の、素材そのものを味わっていただきたいと思っています」(武田さん)。
「OTTO SETTE TOMAMU」料理長、武田 学さん。
そんな武田さんは、もともとはフレンチのシェフ。「子どもの頃、テレビで見たフランス料理がかっこよくて(笑)」、シェフを志したのだとか。「キハチ」「銀座レカン」で研鑽を積み、「フォーシーズンズ丸の内東京」では副料理長を務めました。その後、地元に戻り、「旭川グランドホテル」で料理長として腕をふるいます。そう、今名前をあげたレストラン、施設はすべてフレンチのレストランです。しかし「リゾナーレトマム」に、「オットセッテ トマム」を作ることになった際、白羽の矢が立ったのは、フレンチのシェフである武田さんでした。これってなかなかすごいことじゃないですか? と思うのですが、ご本人は「フランス料理とイタリア料理のあいだに、それほど垣根はないと思うんです。あまり違和感はなかったですね」と意に介しません。
「OTTO SETTE TOMAMU」
場所|リゾナーレトマム サウス31階
営業時間|18:00〜20:30(要予約、宿泊者以外の利用も可)
料金|1万3000円(税・サ別)※1コースのみ
「旭川グランドホテル時代、毎年、イタリアからシェフを招き、イタリアンフェアを行なっていたんです。その際、イタリア人シェフは、イタリア料理はフランス料理に影響されている部分が多く、昔は定期的にフランスで勉強してくるシェフも多かったと話していました。そもそも北海道の素材を生かすには、テクニックを駆使するフレンチの調理法より、あまり手を加えないイタリアンの調理法のほうが向いていると感じています」
あまり手を加えないイタリアンのほうが向いている──。たしかにそうかもしれません。北海道の食材は素材そのものが美味しいですから。ただ実際にいただいてみるとわかるのですが、武田さんの料理は繊細で、とーっても凝っています。調理法に明るくない筆者にもたくさんの手数(てかず)をかけていることがわかります。
たとえば秋のメニュー(全8品のコース、1万3000円)の冷前菜「皮目を香ばしく焼いた鮭といくらのコルノ」の主役は、川を遡上するために栄養を蓄え、脂が乗った秋鮭です。「鮭の皮のパリパリ感と、いくらのぷりぷり感を味わっていただければ。北海道の鮭のなかでも抜群に旨い羅臼の秋鮭を中心に使用していきます」(武田さん)と、鮭はマリネすることでさらに旨みを凝縮させ、北海道の郷土料理であるルイベをイメージしてレア感を残して焼き上げています。じゃがいものエスプーマとニラの風味を効かせたソースも用意。

そうなんです、こんなところにフレンチっぽさを感じるんです。
牡丹海老とクロスターチェのトースト 白バルサミコの泡を乗せて
温前菜は、「留萌(るもい)の秋の代表的な食材である牡丹海老をたっぷりと楽しんでいただきたい」という武田さんの思いを昇華した、「牡丹海老とクロスターチェのトースト 白バルサミコの泡を乗せて」。65度の低温でじっくりと火入れをした牡丹海老は、ぷりぷり感とふっくらした食感が同時に味わえます。下のトーストには、クリーミーで濃厚な甘海老のビスクがしみ込ませてありました。牡丹海老と甘海老の華麗なる競演が楽しめます。
豚肉のラグーとおぼろ昆布のタヤリン
パスタ料理は、「豚肉のラグーとおぼろ昆布のタヤリン」。パスタには、卵黄とセモリナ粉で作ったピエモンテ州の郷土料理「タヤリン」を使用。これに、北海道の海で育まれたおぼろ昆布と、豚肉のラグーを合わせました。「その手があったか!」と膝を打つ逸品です。武田シェフの料理には、これまで想像もしなかったような食材の組み合わせを見ることが多く、それがどれも唸るほど美味しい! 例えば、夏メニューは「雲丹とトマトのタヤリン」が大好評だったとか。生のトマトを使って作ったソースの酸味が、濃厚な味わいのウニと見事な競演を果たしていました。
キンキのゴルゴンゾーラソース 玉葱のグラティナート
魚料理「キンキのゴルゴンゾーラソース 玉葱のグラティナート」は、旬を迎え、脂の乗ったキンキを、スプマンテで蒸しあげた料理。キンキの旨みがとけだしたスープに、さらにゴルゴンゾーラを加えました。最後はゲストの前で、トリュフをかけて仕上げます。付け合わせの玉ねぎには、中にベシャメルソースとつぶ貝を入れ、皮ごとオーブンで焼き上げました。螺旋状になっているのはじゃがいもです。「試行錯誤を繰り返したのですが、鉄の棒に巻き付けて焼くことで、ようやくうまくいきました(笑)」(武田さん)と、細かなところにも妥協はありません。
※このページのメインカットの詳細:秋のメニューから、冷前菜「皮目を香ばしく焼いた鮭といくらのコルノ」

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このひと皿と出合うために、リゾナーレトマムへ OTTO SETTE TOMAMU(2)

階段を1段1段登るように、コース内容が高まっていく

肉料理「落ち葉に隠れた牛肉と茸(きのこ)のカルトッチョ」は、柔らかい赤身と強い旨味が特徴の牛フィレを、柔らかくなるまで煮込んだトリッパと3種の茸とともに塩釜で焼き上げています。塩釜でゆっくり仕上げることで肉の旨みを引き出し、また、ほかの素材にも肉汁を行き渡らせることができるのだとか。「北海道に来ないとなかなか触れることはできない食材、文化に触れ、喜んでいただきたい」(武田さん)と、アイヌの文様の鍋はこの料理のために特注したものです。
塩釜から取り出した際の香ばしい香りを演出するべく、ゲストの目の前で牛フィレが取り出される。
なお、ワインは一部道内ワイナリーの物もありますが、基本的にはイタリアのものを取り揃えているそう。お酒がイケる口なら、一皿ごとの料理に合わせた、ワインとのペアリングコース(プラス8000円)もおすすめですよ!
武田さんの料理は、美味しいだけでなく、エンターテイメント性も高いのが特徴です。ひと皿ひと皿にドラマと新鮮な驚きがあり、階段をのぼるようにテンションが高まっていきます。プレゼンテーションも可憐です。聞けば、絵画や料理本を参考に盛り付けを学んでいるそうで「若い頃、先輩にデパートなどのショーウィンドーも空間の使い方の参考になると聞き、積極的に見るようにしています」(武田さん)。
そんな武田さんにご自身の料理人としての強みを尋ねたところ、躊躇なく、「旭川時代から続いている生産者との交流です。生産者から情報をもらいながら、最高の素材を仕入れています」ときっぱり。素材そのものの味を生かしながら、イタリアンとフレンチの調理法を駆使し、素材の味をさらに引き立てる「オットセッテ トマム」の料理の軸は、武田さんの北海道、そして、素材への深い愛情にあるのかもしれません。東京にはレベルの高いイタリア料理店がたくさんありますが、「オットセッテ トマム」の料理は、武田さんにしか作ることのできない、ここトマムでしか食べることのできない料理です。
余談になりますが、武田さんは現在、単身赴任中。手作りのお弁当を持参し、出社することも多いとか。それ食べてみたいんですけど! 気候のいい時期に販売してみてはいかがでしょうか(笑)。
鮭ルーム
料金|3万9100円〜(2名1室利用時の1名あたり。税込、夕朝食付き)
定員|1日1組限定
予約方法|公式HPから予約
さて、北海道を代表する食材である鮭を徹底的に堪能したいなら、四の五の言わずに、「ザ・タワー」にあるわずか1室のコンセプトルーム「鮭ルーム」に滞在しましょう。こちらのお部屋、壁やカーテン、ソファやクッション、マグカップ、ルームキーなど、とにかく鮭尽くしです。ベッドボードには、川で鮭を狙うクマをイメージしたパネルが。青色の絨毯は川をイメージしており、ベッドの上には、鮭の顔がデザインされたナイトキャップとパジャマが用意されていました。もちろん、オリジナルです。……これ、売店で売っていたら、勢いでつい購入しちゃう人、続出かと。いや、お土産にもらったらかなりうれしいですね。ジェットバスでは、イクラ丼をイメージしたお風呂も楽しめます。“食べ物”という認識だった鮭が途端に愛おしくなってしまいました。
鮭の燻製を作るアクティビティ「鮭の燻製体験」(~2019年10月31日。1人8000円、10月1日以降、1人8200円)も人気です。ファームエリアのテントで、スタッフのサポートのもと、鮭の燻製を作るというアクティビティなのですが、2種類の燻製器を使って、がっつり燻製したもの、レア感を残したものの味比べをさせてもらえるんです! それが最高に楽しくて。また燻製に北海道生まれのニッカウヰスキーがよく合うこと(笑)。もはや止まりません。鮭はもちろんのこと、ドライマンゴーやチーズの燻製も白眉でした。
星野リゾートの施設全体にいえることですが、「星野リゾート トマム」は、とりわけ“ゲストを喜ばせる”ことに真剣勝負(笑)。スタッフからはそんな空気感が滲み出ていますし、アクティビティやイベントは、すべてを把握するのすら難しいほど多彩です。
筆者が訪れた8月末には、元ゴルフ場の広大な敷地をいかした「ファームエリア」に、ヤギ、羊などが放牧され、羊と同じ目線でゆるりと寛げる「羊とお昼寝ハンモック」、牧草でできたソファに座ってくつろぐ「牧場ラウンジ」や、ふかふかの「牧草ベッド」などが楽しめました。「ヤギの郵便屋さん」も悶絶するくらいキュートでしたよ! 葉っぱのお手紙を出すんですけど、ヤギさんの好物だから、食べられちゃうかも(笑)。またファームエリア内にある「ミルクスタンド」では、「ファーム星野」で飼育している牛の牛乳やソフトクリーム、「トマシェイク」が楽しめます。牛乳といえば、朝食でいただける、トマム牛乳で仕込んだ、旨味が口の中いっぱいに広がる「たっぷりクリームのフレンチトースト」は必食です(ビュッフェダイニング「hal(ハル)」で提供)。
ゴルフ場時代の遺物であるゴルフカートを活用した「バギーで行くサファリドライブツアー」もエキサイティングです。少し足を延ばせば、80~90%という高確率でエゾジカやユキウサギ、キタキツネに遭遇できるのだとか。また夏場は「とうきビアガーデン」「メロンシャンパンフェス」なんて心躍るイベントも開催していました。秋は、「じゃがいもフェス」や秋の収穫を祝う「ファームガラパーティー」を実施。冬には北海道の寒さをいかした氷の街「アイスヴィレッジ」が登場し、スキーをしない人も北海道の冬を満喫できます。
お伝えしたいことが多く、ちょっとした大作になってしまいましたが、もうひとつ、「星野リゾート トマム」を紹介する上で触れないわけにはいかないのが、ゴンドラで約13分の、標高1088mに位置する、5~10月にかけてオープンする展望台「雲海テラス」です。
「雲海テラス」はスキー場として作られた場所にあり、春から秋の早朝に、時折、雲海が見られることは、スキー場のスタッフなど限られた人だけが知る情報でした。この自然が織りなす美しい風景をゲストにも見てほしいと、2006年に「雲海テラス」をオープン。その後、毎年のように新しい施設が拡充されています。たとえば、雲の上を歩くような感覚が味わえる「クラウドウォーク」や、巨大ハンモック「クラウドプール」など、壮大な景色をより楽しむための仕掛けが随所に。今夏は、高さ3メートルの梯子を上り、雲上の特等席から雲海と山々の絶景を眺める「クラウドバー」がオープンしました。雲海テラスにある「てんぼうかふぇ」では、雲海をイメージしたコーヒーや、綿菓子が乗った「雲海ソーダ」など、“映える”ドリンクがいただけます。なお「雲海テラス」は、冬場は氷点下の環境で、空気中の水蒸気や霧が樹木などに着く「霧氷(むひょう)」を体感できる「霧氷テラス」と名前を変えてオープンします。こちらもなかなか幻想的ですよ。
左/雲海ソーダ500円と、雲海モクテル700円。右/雲海ガイドさんが当日の雲海の見通しや、雲海発生のメカニズムを現場実況。
雲海の発生は運次第。今回、残念ながら取材班はお目にかかることができなかったのですが、これは再訪して、リベンジせよということでしょう。別シーズンの「オットセッテ トマム」のメニューも食べなきゃだし(誰にも頼まれていないけど(笑))、次はいつトマムに行こうかと目下、思案中です。
リゾナーレトマム デザインスイートファイブ
(展望ジェットバス、サウナ付き)
料金|2万500円〜5万3200円(5名1室利用時の1名あたり。税込、朝食付き)
リゾナーレトマム デザインスイートツイン
(展望ジェットバス、サウナ付き)
料金|2万4500円〜8万1100円(2名1室利用時の1名あたり。税込、朝食付き)
※このページのメインカットの詳細:落ち葉に隠れた牛肉と茸(きのこ)のカルトッチョ
問い合わせ先

星野リゾート トマム
Tel.0167-58-1111(9:00〜20:00)
https://www.snowtomamu.jp/

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