MOVIE|ストルガツキー兄弟のSF小説を15年の歳月をかけ映画化
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巨匠アレクセイ・ゲルマン監督の壮大な遺作『神々のたそがれ』
2013年に死去したロシアの巨匠アレクセイ・ゲルマン監督の遺作となる壮大なSF作品『神々のたそがれ』。3月21日(土)から、渋谷ユーロスペースほか全国順次公開される。
Text by YANAKA Tomomi
構想期間35年、製作期間15年、足掛け半世紀をかけて完成
これまでソビエト連邦成立以降を時代背景とし、実際の歴史的出来事を題材にしてきた作品を多く手掛けてきたアレクセイ・ゲルマン監督。ソビエト政府の検閲により上映禁止処分を受けるなど、時代の波にもまれてきた監督の遺作となったのは、初の空想科学小説の映画化だった。
原作となるロシアの小説家ストルガツキー兄弟が1964年に発表したSF大作『神様はつらい』は、アレクセイ・ゲルマンが映画化し監督デビュー作にしようともくろんでいたという。しかし、ときは冷戦下。企画を断念せざるを得なくなってしまい、構想期間35年、製作期間15年、足掛け半世紀というときを経て映画化が実現された。
2000年から6年にも及ぶ撮影の後、編集に5年もの歳月を費やしたという本作。しかし、製作が最終段階に入っていた2013年2月に監督が享年74歳で亡くなってしまう。そして息子のアレクセイ・ゲルマン・ジュニア監督が彼の仕事のあとを継ぎ、映画の完成にこぎつけた。
出演には、本作の製作者も兼任しているレオニード・ヤルモルニクが主人公ルマータを熱演。このほかにもロシアの実力派俳優が出演したほか、エキストラに至るまでゲルマン監督自身が選び抜いた俳優のみが出演している。
舞台は圧政や殺りく、知的財産の抹殺が繰り返される過酷な世界
地球から800年ほど遅れた発展を遂げている、とある惑星の都市アルカナル。中世ルネッサンス期の様相を呈するこの都市に目をつけた地球人たちは、科学者や歴史家らの調査団を派遣した。
しかし、最初の潜入から20年が経過しても、そこで繰り広げられるのは圧政や殺りく、知的財産の抹殺であり、文化発展の兆しはまったく見られない。
地球人のひとり、ドン・ルマータは、未来から知識とちからをもって現れた神のごとき存在として惑星の人びとからあがめられているが、政治に介入することは許されず、ただ権力者たちによって繰り広げられる蛮行を傍観するのみだった。
むせ返るほど圧倒的な映像。そして“神”になった男の悲しみ。アレクセイ・ゲルマン監督の遺作にして集大成といえる作品が日本にも上陸する。
『神々のたそがれ』
3月21日(土)から、渋谷ユーロスペースほか全国順次ロードショー
監督│アレクセイ・ゲルマン
出演│レオニード・ヤルモルニク、アレクサンドル・チュトゥコ、ユーリー・アレクセーヴィチ・ツリーロ、エヴゲーニー・ゲルチャコフ
配給│アイ・ヴィー・シー
2013年/ロシア/177分
http://www.ivc-tokyo.co.jp/kamigami/