MOVIE|最後に「平和と安全」を味わうのは誰か?『標的の村』
MOVIE|最後に「平和と安全」を味わうのは誰か?
オスプレイ配備に反対する村人たちの姿を追うドキュメンタリー『標的の村』
アメリカ軍基地に四方を囲まれた沖縄北部にある人口160人ほどの東村高江地区。その地に計画された、新型輸送機オスプレイ配備に反対する住民たちの姿を追いながら、沖縄の基地への抵抗の歴史を紐解いていくドキュメンタリーが『標的の村』だ。8月10日(土)より、ポレポレ東中野ほかで全国順次ロードショーされる。
Text by YANAKA Tomomi
監督は琉球朝日放送のキャスター、三上智恵さん
日本にあるアメリカ軍基地の74%が密集する沖縄。2012年9月26日、新型輸送機オスプレイの配備の反対運動をつづける住民たちは身を投げ出し、クルマを並べ、台風のなか、アメリカ軍普天間基地のゲート前に座り込み22時間にわたり完全封鎖した。この全国ニュースからほぼ黙殺された前代未聞の出来事の一部始終を記録していたのは、地元テレビ局の琉球朝日放送だった――。
監督は琉球朝日放送のキャスターとして活躍する三上智恵さん。記者で今回、製作を務めた謝花尚さんとともに、沖縄を舞台にした骨太のドキュメンタリーをこれまでに数多く生み出しつづけてきたコンビが、テレビ用に製作した番組をもとに、劇場版として拡大し、公開される。
国から訴えられる高江地区の人たち
米軍のジャングル練習場に囲まれ、ヘリコプターが我が物顔で飛び回り、低空で旋回する高江地区。さらに追い討ちをかけるように、死亡事故が多発する新型輸送機オスプレイの着陸帯(ヘリパッド)建設が決まった。
自分たちがアメリカ軍の“標的”だと憤る住民たちは、建設に抗議し座り込みをおこなうも、本来であれば命や権利を守ってくれるはずの国から「通行妨害」で訴えられてしまう。訴えられたなかには座り込みに参加していなかった7歳の少女も含まれていた。
村では、1960年代のベトナム戦争時も、ベトナムでのゲリラ戦を想定し襲撃訓練がおこなわれ、高江の住民がたびたび南ベトナム人の役をやらされていたという歴史があり、“標的”にされるという感覚をもつことはごく自然なことだった。
復帰後40年たってなお切り広げられる沖縄の傷。沖縄のひとびとは一体誰と戦っているのか。奪われた土地と海を空を引き換えに、「平和と安全」を味わうのは誰なのか。本土で黙殺される沖縄の声がいま問いかける。