MOVIE|女たちの裏切りと駆け引きの3日間『マリー・アントワネットに別れを告げて』
MOVIE|『マリー・アントワネットに別れを告げて』(1)
ヴェルサイユで繰り広げられる、女たちの裏切りと駆け引きの3日間
マリー・アントワネットの朗読係を務めた少女の視点からフランス革命を描く『マリー・アントワネットに別れを告げて』が、12月15日(土)からTOHOシネマズシャンテ、Bunkamuraル・シネマほかで全国順次ロードショーされる。
Text by YANAKA Tomomi(Page1)、TANAKA Junko(Page2)
レア・セドゥ、ダイアン・クルーガーら豪華女優陣の競演が実現
フランスでもっとも権威のあるフェミナ賞に輝いたシャンタル・トマのベストセラーを原作に、王妃に仕える朗読係というまったくあたらしいアプローチからヴェルサイユの裏側に迫る『マリー・アントワネットに別れを告げて』。
朗読係のシドニーを演じるのは新鋭女優のレア・セドゥ。マリー・アントワネットにはダイアン・クルーガー、そして王妃を虜にした魅惑的なポリニャック夫人にはヴィルジニー・ルドワイヤンという豪華女優陣の競演が実現した。
監督・脚本はフランス映画の重鎮ブノワ・ジャコー。本物のヴェルサイユ宮殿を舞台にロケを敢行し、時代の香りを余すことなく伝えている。
「愛」か「生命」か……少女に突きつけられた究極の選択
1789年、バスティーユ陥落を合図にフランス革命が勃発。王妃マリー・アントワネットとその寵愛を受けるポリニャック夫人の名前も載った、286人のギロチンリストがヴェルサイユに突きつけられる。王妃に心酔する朗読係のシドニーは、この窮地を全力で支えようと決意するが、王妃から命じられたのは「ポリニャック夫人の身代わりになれ」という世にも残酷な命令だった。
王妃に憧れ以上の熱い想いを抱く少女に突きつけられた「愛」か「生命」かの究極の選択。きらびやかな宮廷から無秩序な奈落へと崩壊していくヴェルサイユのなかで繰り広げられる、女たちの裏切りと駆け引きの3日間に身を投じたい。
MOVIE|『マリー・アントワネットに別れを告げて』(1)
王妃の朗読係、シドニーを演じたレア・セドゥにインタビュー
ここで、朗読係のシドニーを演じた新鋭のフランス人女優、レア・セドゥのインタビューをお届けしよう。女優としてはもちろん、ファッションリーダーとしても注目を集める彼女が本作にかけたおもいとは?
「セリフだけで表現するより“空気”を演じるのが好き」
──世界的に有名なマリー・アントワネットに比べて、あなたが演じたシドニーはあまり知られていませんね。まずはシドニーという人物と映画のストーリーについて教えてください。
わたしの役はある若い使用人の女性で、王妃マリー・アントワネットに仕える朗読係。あまり知られていないけれど実在した人物なのよ。ヴェルサイユでは、あらゆる資料が保存されていて、どんなことも記録されているの。この映画の原作『王妃に別れを告げて』を書いた女性作家のシャンタル・トマは、ヴェルサイユの資料室に行って、シドニー・ラボルドというマリー・アントワネットの第二補助朗読係の存在を知ったの。そしてこの小説を書き上げたのよ。確かに、物語の大部分は想像を膨らませて描かれているのだとおもう。シドニーについて書かれた資料はほとんどなかったみたいだから。だけど、彼女がマリー・アントワネットに対して、とても強い憧れを持っていたということだけは伝わってきたようね。
──この役のどんなところに惹かれましたか?
シドニー・ラボルドという女性は、これまでだれにも興味を持たれず、埋もれていた存在だったのに、突然こうして小説や映画で日の目を浴びたことね。
──監督はあなたのどこに惹かれたのだと思いますか?
大人になりきれていない、子供に近い感覚を持っていて、それを見せられるというところではないかしら。
──じっさいに役を演じてみて、いかがでしたか?
わたしはセリフだけでなにかを表現するよりも、空気を演じるのが好きなの。この役も言葉だけでなく、表情や仕草などすべてで空気を作り上げていく役だったから、とても楽しかった。
──この作品の一番の魅力はなんだとおもいますか?
マリー・アントワネットの話を真正面から描いた作品はたくさんあるけど、この作品は宮殿内部の話や王妃の生活を描いているのが面白いとおもうわ。使用人たちの暮らしぶりが垣間見えるのもユニークね。
──原作や映画では、マリー・アントワネットのプライベートな部分が描かれています。とてもオリジナルな視点だとおもいますし、ある意味では大胆とも言えるでしょう。役を演じてみて、またこの映画を経験してみて、マリー・アントワネットに対する見方は変わりましたか?
どう言ったらいいのかしら……。マリー・アントワネットについて、以前どういう考えを持っていたのかは自分でもよく分からないけど、彼女の捉え方がちがうものになったとはおもうわ。
──それはどんな印象でしょう?
そうねぇ。貪欲な女性というイメージかしら。なんでも欲しがって、甘やかされた子供のようだったとおもうわ。
──ポリニャック夫人のドレスを着たあと、シドニーのなかでなにかが変わったように感じられるシーンがありましたね。
シドニーはそれまで王妃の単なる朗読係でしかなかった。それが“ポリニャック夫人の身代わり”というミッションを与えられたとき、はじめて自分に役が与えられたとおもったのよ。突然スポットライトを浴びたようにね。
──寝ているポリニャック夫人の裸を見るシーンがありましたが、あのときシドニーはどういった心境だったのでしょうか?
ポリニャック夫人の裸を見て、シドニーはこれが王妃の欲望の対象なんだとあらためて深く認識するの。と同時に、自分は絶対にその対象にはなれないということも。あのときのシドニーの表情は、王妃から深い愛を捧げられているポリニャック夫人への羨望の眼差しなのよ。
レア・セドゥ|Léa Seydoux
1985年、フランス・パリ生まれ。祖父はフランスの大手映画会社パテの会長。フランス映画で数かずの賞に輝いた後、ハリウッドにも進出。いま最も注目されている若手女優の1人。モデルとしても活躍し、プラダの香水のCMなどに出演している。主な出演作に『美しいひと』(2008年)、『イングロリアス・バスターズ』(2009年)、『ミッション: インポッシブル/ゴースト・プロトコル』(2011年)など。最新作は『L’enfant d’en haut』(2012年)。