INTERVIEW|蒼井優×高畑充希が語る『アズミ・ハルコは行方不明』
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2016年12月27日

INTERVIEW|蒼井優×高畑充希が語る『アズミ・ハルコは行方不明』

蒼井優×高畑充希 共演作『アズミ・ハルコは行方不明』とは

女性の“第二思春期あるある”が詰まった映画(1)

10代の女子高生たち、20代の木南愛菜(高畑充希)、30代の安曇春子(蒼井優)の3世代の女性の困惑ややるせなさが、2つの事件を軸に、時系列を交差させテンポよく展開されていく新感覚の青春ムービーが誕生。リアルな世代の女性像を、今旬の女優、蒼井優と高畑充希がそれぞれ演じ上げた。自身も役どころに違和感がなかったという春子役、最初から最後まで「わからなかった」まま演じ続けたという愛菜役について、お互いの心境を語ってもらった。『アズミ・ハルコは行方不明』は全国公開中。

Photographs by JamandfixText by ASAKURA Nao

アラサーチームでしっくりとした現場

――女性スタッフや女性プロデューサーなど、女性の意見を取り入れて現場作りをしていたと松居大悟監督がおっしゃっていました。お二人から何か提案したり、監督の演出で印象的だったことはありますか?

蒼井優(以下、蒼井) 私は特になかったと思います。春子のキャラクターについて何かを話し合うみたいなことはしませんでしたね。監督もプロデューサーも私もアラサーで、現場がしっくりくるというか、自分たちの日常のエネルギーと同じ状態だったので、カメラ前とカメラ後ろで温度が変わらないという感じでした。もちろん、アドバイスが欲しいときには相談したり、質問したりはしましたけど。

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――どんな時に監督にアドバイスを求められたんですか?

蒼井 曽我に振られて追いかけて……っていう長ゼリフのシーンがあるのですが、ああいう何が何でも、みたいな心境に陥ったことが自分の人生になくて。感覚がつかめきれてない気がしたので、監督にどうすればいいか聞いたら「とにかく格好悪くやってくれ」って言われたんです。それでやってみたら「こういうことだったんだ!」と形から入ることで、中が全部埋まった感じはありました。

――高畑さんは悩みながら演じられていたそうですが。

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高畑充希(以下、高畑) 悩んでましたね。「わかんない、わかんない」って毎日言いながらやって、松居さんに「わからないけどどうしたらいいですか」って聞いたら「俺もわからない」って言われてしまって(笑)。そんな感じで終わっていました。

――役柄が、やはり難しかったのでしょうか。

高畑 難しかったです。意志がないっていうのは何なんだろうって。(愛菜は)一貫性もなくて。「こういう人だね」っていうのに当てはまらない。毎度毎度人に合わせて。わからないのでとにかく、太賀には「ウザい」って思ってもらおうと思っていっぱいウザいことをしました(笑)。

――「失踪」がテーマだと思いますが、お二人がもし本当に失踪することになったら、どんな人生を送りたいですか。

蒼井 まず、バレますよね(笑)。

――バレない前提でお願いします(笑)。

高畑 地元の大阪に福島っていうところがあるのですが、そこで小料理屋をやりたいです。自分のペースで働けたらいいですよね。毎日人が来て、適度な刺激があって、あとはのんびり、というような。

蒼井 それって里帰りじゃん(笑)。私は……昼はコーヒー屋、夜はスナックっていう店をやりたいです。

――お二人ともそういう方向なんですね(笑)。

蒼井 自分の空間があったり、自分で作って自分で完結することってないんですよね、私たちの仕事は。芝居した後、どういう仕上がりになるかは監督のものですし、スタートも自分たち発信ではない。だからそういうのに憧れがちなのかな。

高畑 ママが一番飲むっていう(笑)。

蒼井 そうかも(笑)。

Page02. 実際の共演は、2シーンのみ

蒼井優×高畑充希 共演作『アズミ・ハルコは行方不明』とは

女性の“第二思春期あるある”が詰まった映画(2)

実際の共演は、2シーンのみ

――お二人共演されてみて、いかがでしたか?

蒼井 最初、愛菜っていう役を高畑充希ちゃんにオファーしていると聞いて、「正気か」って思いました(笑)。でも引き受けてくれたら嬉しいなと楽しみでした。“高畑充希”という人物は自分の中でワクワクする存在のひとりなので。愛菜は自分にはやれない難しい役だけど、「充希ちゃんどういう風に落とし込むんだろうな」と思っていたら、現場で(高畑が)「わからないわからない」って言ってたから「いいぞ」って(笑)。愛菜自身が自分のことをわかっていないから、充希ちゃんがつかめちゃってると愛菜に説得力が出てしまう。愛菜にはわけのわからない存在であって欲しかったので、充希ちゃんはきついだろうけど、「いいんだよ」って思って見ていました。最後に落ち合った時に振り返った充希ちゃんが愛菜でしかなくって。内心ガッツポーズしましたね。

――成長を見届けていたということですか?

蒼井 “愛菜が愛菜になるまで”、というような感じで見られてよかったなと思います。

――高畑さんの方はどうでしたか?

高畑 私はもう、わからなすぎてわからなすぎて。監督にはすでに「俺もわからない」と言われて当てにならないと思っていたので(笑)、優ちゃんに「わかんない!」って言ったら「わかんなくていいんだよ。わかんないのが愛菜だよ」って言ってくれて。「こっちを信じるっ!」と思いました(笑)。その方向に誘われて、わぁっと付いて行った感じだったので、不思議な感じがして。今までアップアップでやっていたけど、その2人のシーンだけちょっと心が穏やかになるというか、やっと手が差し伸べられた感覚で安心できたんです。私は優ちゃんパートを全く見ずに「安曇春子さん」と初めて会う感覚だったのですが、映画が出来上がって、それまでの安曇春子の表情を見て、こんなにも違ったんだと思いました。その差がすごい腑に落ちて、「あぁ、全て色んなことを越えていった“安曇春子”に私は出会ってたんだな」って思い出して、幸せな気持ちになりました。

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20代後半の女性に訪れる?“第二思春期あるある”が詰まった映画

――この映画は、10代・20代・30代の3世代の女性が登場しますが、それぞれの世代に苦痛や不満があって、そういうのがリアルに描かれていたと思います。お二人自身は、女性として、彼女たちをどう思いますか?

蒼井 春子と一緒ですね。「早くこっちおいで」って。春子世代だった自分にも教えてあげたいです。20代って氷の上を歩いているみたいで、滑るし割れそうでガシガシ歩けない。でも、三十路街道に入った瞬間、急にその氷だった道が土になる。こんなに楽しいと思ってなかったですね、30代が。私も春子と全く同じ境遇に陥ったことがあります。女子高生が最強に見えて、20代の後半で唖然とするというか。自分の人生の中でも17歳で女子高生だった時って無敵だったので。いかに17歳からの10年をどう生きるかで、30歳になった時の解放感が違うと思うんです。よく女友達と20代後半にやってくる第二思春期の話をするんですけど、“第二思春期あるある”が詰まった映画になったと思います。

――高畑さんは、これからその“第二思春期”を迎えられると思うのですが、逆にどういう女性として成長していきたいですか?自分が30歳になった時のイメージはありますか?

高畑 好奇心旺盛でいられたらいいかな……。いや、嘘です(笑)、わからないです。流れに身を任せます。どうなってるか全然わからないし。でもまだしばらく時間はあるので、周りの人を大事にしたいですね。今を積み重ねていきたい。多分、私も“第二思春期”にぶち当たると思うんですけど、そうなった時も、「まぁ落ち着け」って言ってくれる人が周りに1人いたらいいな。

蒼井 1人でいいんだ(笑)。

――やっぱり、女子高生の時は無敵でした?

高畑 無敵でしたね。仕事も失敗したらどうしようとか……今も考えないか(笑)。とにかく自信がありましたね、自分という存在に。でもちょっとずつ自分の弱点とかもわかってきて自信がなくなってきて、その分楽ちんになってきました。できなくても、しょうがないかって思えるようになったので。「ごめんなさい」と素直に言えるようになりましたね。10代の時は自分を過信していたから、転んでも「転んでないもん!」って思ってたけど、今は転んでも、「そのうち忘れるかな」って思えるようになってきた。だから10代も楽しかったけど、今も楽しい。30代も楽しみです。

『アズミ・ハルコは行方不明』
出演|蒼井優、高畑充希、太賀、葉山奨之、石崎ひゅーい、菊池亜希子、山田真歩、落合モトキ、芹那、加瀬 亮ほか
監督|松居大悟
配給|ファントム・フィルム
©2016『アズミ・ハルコは行方不明』製作委員会
全国ロードショー中

           
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