パレスチナで、自由を求めて『オマールの壁』|MOVIE
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2016年4月18日

パレスチナで、自由を求めて『オマールの壁』|MOVIE

MOVIE|第86回 アカデミー賞 外国語映画賞 ノミネート作品

パレスチナで、自由を求めて『オマールの壁』

『パラダイス・ナウ』のハニ・アブ・アサド監督による新作、『オマールの壁』が2016年4月16日(土)角川シネマ新宿ほかにて公開する。パレスチナの分離壁で囲まれた現状と、その中で生き抜く若者たちの日々を、切実に、愛とサスペンスフルに描いた本作も高い評価を受け、第86回 アカデミー賞 外国語映画賞にノミネートされた。スタッフ、撮影も全てパレスチナで行われた本作は、パレスチナの現実を世界中の人に訴えかける映画となった。

Text by OPENERS

壁で分断された世界、占領下で生きること、パレスチナの「今」を知る

この映画は青春映画であり恋愛ドラマである。分断された世界のなかで生きるひとりの若者が、壁をよじ登ってまで愛する女性に会いに行く、情熱の物語。さながらパレスチナ版ロミオ&ジュリエットのような若い二人の恋愛ドラマである。ただ一つだけ、その世界観には衝撃を受ける。物語はフィクションでありながら、描かれる環境が「これがパレスチナの現実なのだ」、と訴えかけてくる。

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停戦と戦闘がくり返された、2014年のパレスチナでのゲリラ戦や空爆。多くの市民を巻き込んだ惨劇により、2000人以上のパレスチナ市民が犠牲になった。しかし、数字をただ羅列するだけでは人びとの心には残らない。この映画は、スタッフはすべてアラブ系パレスチナ人、撮影もすべてパレスチナで行われ、制作にかかる100パーセントがパレスチナ資本によってつくられただけあり、数字ではわからない現状をドラマの端々から視覚的に教えてくれる。

主人公はただの平凡なパン職人。映画を見た最初は、王道の恋愛ものだと思うかもしれない。しかし、主人公が恋人に会いに行くだけなのに、なぜ壁を登ってはいけないのか、なぜ壁を登っただけで捕まるのか、そもそもなぜ壁で分断されているのか、少しずつ異様さを感じてくる。友が集まれば、銃を向けて襲撃の練習をする。主人公が警察に追われ、逃げこんだ知らない家の家人は、日常のごとく、すっと裏口へと案内してくれる。望まれない政府の力による統治がつづくパレスチナの、人権を抑圧され、自由のない現実。その重厚なバックグラウンドが、この映画をただの恋愛映画ではないことを物語る。だからこそ、ナディア役のリーム・ニューバニが微笑みかけるだけで、とても愛おしいと感じさせる。

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監督は、2005年に自爆攻撃へ向かう若者たちを描き、ゴールデングローブ賞外国語映画賞を受賞、アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされた『パラダイス・ナウ』のハニ・アブ・アサド監督。アサド監督も、この作品に対して「これは占領下に閉じ込められ、厳しい状況に直面した愛についての映画なのだ」と語っている。

一生囚われの身になるか、裏切者として生きるか――ひとりの青年のギリギリの選択

思慮深く真面目なパン職人のオマールは、監視塔からの銃弾を避けながら分離壁をよじのぼっては、壁の向こう側に住む恋人ナディアのもとに通っていた。長く占領状態がつづくパレスチナでは、パレスチナ市民に自由はない。オマールはこんな毎日を変えようと仲間とともに立ち上がったが、占領軍の兵士殺害容疑で捕えられてしまう。秘密警察より拷問を受け、一生囚われの身になるか仲間を裏切ってスパイになるかの選択を迫られるが…。

『オマールの壁』
2016年4月16日(土)より角川シネマ新宿、渋谷アップリンクほか全国ロードショー
監督・脚本・製作|ハニ・アブ・アサド
出演|アダム・バクリ、ワリード・ズエイター、リーム・リューバニほか
配給・宣伝|アップリンク
2013年/パレスチナ/97分/原題『OMAR』
http://www.uplink.co.jp/omar/

           
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