特集|2015年国際映画祭速報|第87回アカデミー賞
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2015年3月10日

特集|2015年国際映画祭速報|第87回アカデミー賞

特集|第87回アカデミー賞

注目の受賞作品を一挙紹介!

2月22日夜(日本時間23日朝)、アメリカ・ロサンゼルスでおこなわれた第87回アカデミー賞授賞式。授賞式までの1年間、アメリカ国内の特定地域で公開された作品を対象に、6000人以上とされるアカデミー会員の投票によって受賞者を選出する。『博士と彼女のセオリー』『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』に象徴される伝記物、ひとりの少年の成長と家族の軌跡を、12年の歳月をかけて撮影したドラマ『6才のボクが、大人になるまで。』や、全編1カットかと見紛うほど、巧みなカメラワークと計算され尽くした演技で魅せる『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』など、斬新な手法で撮影した意欲作が目立った今年。世界が注目する舞台で、オスカー像を手にしたのは?

Text & Edited by TANAKA Junko (OPENERS)

特集|第87回アカデミー賞

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作品賞/監督賞/撮影賞/脚本賞

『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』

製作国:アメリカ
監督:アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ(Alejandro González Iñárritu)
撮影:エマニュエル・ルベツキ(Emmanuel Lubezki)
2015年4月10日(金)より、TOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー

異彩を放つ“ダークホース”が4冠に輝く

『バベル』『アモーレス・ペロス』など、シリアスな人間ドラマで知られるアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督が、自身初となるダーク・コメディに挑戦。ヒーロー映画『バードマン』で一世を風靡した俳優のリーガンが、再起をかけてブロードウェイに挑む姿を、『バットマン』シリーズのマイケル・キートン主演で描いてみせた。「わたしは以前から、40歳をすぎたら自分が怖いと思わないことは“やる価値がない”という意見だ。この作品はいい意味で怖かった。あたらしい領域であり、まちがいなくわたしは安全地帯の外にいた」と振り返るイニャリトゥ監督。その言葉通り、本作で彼はオープニングからラストまで全編1カットかと見紛う、前代未聞の流れるようなカメラワークを採用。これは『ゼロ・グラビティ』の臨場感溢れる宇宙映像で、2014年にもアカデミー賞撮影賞を受賞した敏腕、エマニュエル・ルツバキによるもの。ふたりの天才が初のタッグを組んで生み出した、映画史をひっくり返す最高傑作。「ホラーとコメディ、そしてSFはアカデミー賞を獲れない」というジンクスをも覆し、今年のアカデミー賞最多タイとなる4冠に輝いた。


特集|第87回アカデミー賞

© UNIVERSAL PICTURES

主演男優賞

エディ・レッドメイン『博士と彼女のセオリー』

製作国:イギリス
監督:ジェームズ・マーシュ(James Marsh)
2015年3月13日(金)より、TOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー

「このオスカー像はALSと闘うみなさんたちのもの」

ALS(筋委縮性側索硬化症)という難病を抱えながらも、宇宙の起源の解明に挑み、現代宇宙論に多大な影響を与えつづける車椅子の天才物理博士、スティーヴン・ホーキング。そんな彼の側には、学生時代に出会った女性、ジェーンの存在があった。出会いから結婚、出産……。歳月を重ねるごとに増す試練にも強固な愛の力で立ち向かっていくが、ときに壁に突き当たり、限界を感じ、自分たちの無力さに打ちひしがれるふたり。『博士と彼女のセオリー』は、彼らの苦悩と純愛を描いた感動のヒューマン・ラブストーリーだ。見事、主演男優賞に輝いたエディ・レッドメインは、感慨深い面持ちで「このオスカー像はALSと闘うみなさんたちのものです。スティーヴン、ジェーン、そして子どもたち。みなさんの代わりに責任をもってこの像を管理します。毎日磨いて大切にしますから、安心してくださいね」と語った。


特集|第87回アカデミー賞

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助演女優賞

パトリシア・アークエット『6才のボクが、大人になるまで。』

製作国:アメリカ
監督:リチャード・リンクレイター(Richard Linklater)
上映中

“素顔”で12年の軌跡を演じ切った女優魂

『6才のボクが、大人になるまで。』は、12年もの歳月をかけてひとりの少年の成長と家族の変遷を記録したドラマ。この画期的な手法で撮影に挑んだのは、『恋人までの距離(ディスタンス)』などで知られるリチャード・リンクレイター監督。撮影を通して本当の家族のように絆を深めたという主要キャスト4人らとともに、映画史に残るヒューマン・ドラマを作り上げた。なかでも33歳から46歳という期間を、ほぼノーメイクで撮影に臨むという女優魂を見せつけたアークエットの演技がアカデミー会員の心を捉えた。自身初のオスカー像を手にしたアークエットは、壇上で「この国で子どもを産み、税金を納めてきたすべての女性……。私たちはみなさんのために闘ってきました。いまこそ、女性に平等な権利と賃金を」と訴え、会場から拍手喝采で迎えられた。



主演女優賞
ジュリアン・ムーア『アリスのままで』

製作国:アメリカ
監督:リチャード・グラッツァー&ウォッシュ・ウエストモアランド(Richard Glatzer & Wash Westmoreland)
2015年6月27日(土)より、新宿ピカデリーほか全国ロードショー

助演男優賞
J・K・シモンズ『セッション』

製作国:アメリカ
監督:デイミアン・チャゼル(Damien Chazelle)
2015年4月17日(金)より、TOHOシネマズ 新宿ほか全国ロードショー

脚色賞
グラハム・ムーア『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』

製作国:イギリス、アメリカ
監督:モルテン・ティルドゥム(Morten Tyldum)
2015年3月13日(金)より、TOHOシネマズみゆき座ほか全国ロードショー

外国語映画賞
『イーダ』

製作国:ポーランド
監督:パヴェウ・パヴリコフスキ(Pawel Pawlikowski)
2015年3月6日(金)まで、シアター・イメージフォーラムでアンコール上映中

 

           
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