INTERVIEW|物語を綴る酒、ハイランドパークの魅力(前編)|HIGHLAND PARK
INTERVIEW|オークニー諸島の厳しい気候が生み出した自然の賜物、ピートがもたらす芳醇な香り
物語を綴るウイスキー、ハイランドパークの魅力(前編)
スコットランド最北端という厳しい環境下にある蒸留所で造られたウイスキー「HIGHLAND PARK(ハイランドパーク)」。同ブランドのグローバル・ブランド・アドヴォケイト、ダリル・ハルデイン氏に注いでもらった「ハイランドパーク18年」は、なんとも優しいふくよかな香りとフルーティな味わいが口の中に広がり、思わず自然に笑みがもれた。モルトファンが一目置くハイランドパークは、どんな土地や人、製法から生まれるのか。ダリル・ハルデイン氏が静かに“ハイランドパークを巡る物語”を語りはじめた。
Text by KAJII Makoto (OPENERS)
Photographs by SUZUKI Shimpei (INTERVIEW)
北緯58度59分から生まれるウイスキー
オーカディアン(オークニー人)は、自分たちの歴史とおなじくらい、自分たちのウイスキーに大きな誇りをもっている。1798年、北欧とスコットランドの文化が交差する「オークニー諸島」で創業したハイランドパーク。以来、ハイランドパークはオークニー諸島の遺産の一部となっており、1999年にはユネスコの世界遺産に登録されている。
ハイランドパークのスポークスマンであるダリル・ハルデイン氏は、「ハイランドパークの魅力は主に3つあります。長く伝統的な製法を持続していること、それにより胸を張って推奨できるウイスキーを造れていること、そしてとにかくおいしいこと」と微笑む。
「オークニー諸島は大小70の島からなり、蒸留所のあるカークウォールは北緯58度59分にあります。スコットランドとは歴史が異なり、私たちはとてもリラックスできる落ち着いた町に暮らしています。また、私たちは青い目で、髪の色が薄く、肌の色も白くて、スコットランド人ではなく、スカンジナビア系の民族です」
スウェーデン人は、ハイランドパークの蒸留所はスカンジナビアのものだと信じていて、スコットランド最北端ではなく、“スウェーデンの一番西の端”にある蒸留所だと思っているという。
「北緯58度59分の土地を想像できますか? 日本からオークニーに来て最初に気づくのは、とても風が強いということです。時速40マイル以上の風が吹く日が、年に80日以上あります。つねに風の音が聞こえています。でも畑仕事など野外で仕事する人が多いので、厳しい気候に慣れてタフな性格になっていきます。ただ厳しいといっても、それほど寒くはありません。年間でも零下にはならず凍結しません。暖かくても15度ぐらいですが」
ハイランドパークの品質を支えるもの
そんな環境で造られるハイランドパークの品質を支える5つのキープロセスを紹介しよう
フロア・モルティング
ハイランドパークは現在も製造に使う20%のモルトを手作業(水に浸した大麦を一定時間ごとに攪拌しながら麦芽を作る作業)でおこなっている。
オークニーのピート
樹木の育たないオークニーでは、スコットランドのほかの地域とは異なったピートが採れるが、ハイランドパークでは3つの異なる層から手作業で切り出されたピートを使用。これによりモルト特有のフローラルなスモーキーさがくわわる。
クールマチュレーション(低温熟成)
夏でも15度、冬でも零下にはならない涼しい環境でウイスキーは眠りつづける。さらに、湿潤な土地なので、本土の乾燥した地域よりもエンジェル・シェア(熟成中に蒸発してウィスキーがなくなる分量)は少なくなる。
オーク樽のシェリーカスク
ウイスキーの風味のうち、最大70%が樽に由来すると考えられている。ハイランドパークではスパニッシュオークとアメリカンオークのシェリーカスク(樽)を使用。シェリーカスクは高価だが、独特のコクと重層的な複雑さを生み出す重要な役割を担う。
カスクハーモナイゼーション
個々の原酒を合わせたのち、再び樽に戻しておこなう一定の調和期間のことで、ウイスキーメーカー(ブレンダー)のマックス・マクファーレン氏がバランスを整える。この過程により、原酒同士が馴染んで一貫性とバランスが生み出される。また、0度以上の気温でも濾過(ろか)が可能になるため、口当たりが損なわれない。
ウイスキー好きの男はなぜスコットランドを目指すのか
「日本からも大勢の男性が、スコッチウイスキー巡りのためにオークニーまで来られます。モルトウイスキーを好きな男性は、いいものの価値がわかる方が多く、現地に来ることで“飲む資格”を得られると思っているのでしょう。また面白いことに、モルトウイスキーはブランドごとにちがうタイプの男性を惹きつけます。『マッカラン』が好きな人は有名ブランドが好きな方が多い印象ですが、ハイランドパークは謙虚で目立ちたがらない、本質を理解している方が多い。私たちの物語や伝統、歴史を求めて、そこに価値を見いだす方に好まれる傾向にあります」
日本からは、先日もスコッチ文化研究所(http://scotchclub.org/)のメンバーが訪ねたそうで、「工場が小さいので、製造過程のすべてを見ていただける数少ない蒸留所の一つです。ぜひ来て、見て、飲んで、買っていただきたいです」
ダリル・ハルデイン|Daryl Haldane
「ハイランドパーク」グローバル・ブランド・アドヴォケイト。1984年生まれ、スコットランド出身。エジンバラ在住。2012年より、ハイランドパーク社における初のグローバル・ブランド・アドヴォケイトとして、世界各国で「ハイランドパーク」のルーツや愉しみ方を広める役割を担っている。イギリスの大手酒造メーカーにてブランド・アンバサダーを務めた経験をもち、ミクソロジスト(ありとあらゆる食材、リキュールを絶妙のバランスで混ぜ合せてカクテルを作るスペシャリスト)としての高度な知識と経験、またウイスキーをはじめスピリッツ全般に膨大な知識を有する。
レミー コアントロー ジャパン
Tel. 03-6441-3025
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