ベルリン、アムステルダム、ニューヨーク、シンガポール──世界4都市のカメラマンに聞く、夏休みの過ごし方|特集
特集|ベルリンのビール・フェスから、ニューヨークのパブリックアートまで
世界4都市のカメラマンに聞く、夏休みの過ごし方(1)
街の見どころは現地の人に聞くのが一番! これからベストシーズンを迎えるベルリン、アムステルダム、ニューヨーク、そしてシンガポール。日夜フォトジェニックな被写体を求めて、街を駆け回っている各地のカメラマンに、この夏外せない3つのおすすめプランをうかがった。
Text & Photographs by TOYODA Hiroshi (Page 01 / Berlin)YUI Kiyomi (Page 02 / Amsterdam)YANAGAWA Shino (Page 03 / New York)HARA Takao (Page 04 / Singapore)
ベルリンの夏はビールと廃墟が熱い!
1. インターナショナル・ベルリナー・ビールフェスティバル
ぼくのようなビール好きにとって、ベルリンは天国のような場所だ。とくに街のいたるところでビール・フェスティバルが開かれる、春から夏にかけてはそう。個人的なオススメは、3年前に移住してから、一度も一日も(!)欠かしたことがない「インターナショナル・ベルリナー・ビールフェスティバル」。毎年全日程を制覇するために、仕事を調整しているのだ。どうしてそこまで?
魅力をひと言で語るのは難しいけど、やっぱり昼から屋外でビールを飲む。この素晴らしさに尽きるんじゃないかな。“インターナショナル”というだけあって、全長2.2キロの並木道に世界90カ国300以上の醸造所が出店している。もちろん全部「生」。試してみたいビールを見つけたら、1杯(200ミリ)2ユーロ前後で試飲ができる。ケニアとかエチオピアとか、普段お目にかかれないビールとの出合いがあるからやめられない。
Internationales Berliner Bierfestival
日程|8月7日(金)〜9日(日)
時間|10:00〜24:00 ※初日のみ、12:00〜
入場料|無料 ※ビールジョッキ代、ビール代は別途必要
会場|Karl-Marx-Allee
10243 Berlin, Germany
http://www.bierfestival-berlin.de
2. ブレックファースト・マーケット
ベルリンではいま、ちょっとした廃墟ブームが巻き起こっている。といっても、廃墟を巡るツアーのような類じゃなく、昔の建物に価値を見出そうというムーブメント。廃墟と化していた建物を、ユニークなアイデアをもった若者たちが、次々とイベントスペースに変えていっているのだ。
「マルクトハレ・ノイン」もそんなひとつ。200年以上の歴史をもつこの建物は、かつて300以上のブースが立ち並ぶ卸売市場だった。長らくゴーストタウンになっていたそうだけど、最近、流行に敏感なベルリン人が集うグルメスポットに大変身。ぼくのお気に入りは、毎月第3日曜に開催されている「ブレックファースト・マーケット」。エッグベネディクトからおかゆまで、世界中の朝食が朝から晩まで食べられる。週末は遅起きして、友人や家族とゆったりご飯を食べる。そんなベルリン式の朝を疑似体験できるかも?
Breakfast Market
日程|毎月第3日曜
時間|10:00〜20:00
入場料|無料
会場|Markthalle Neun
Eisenbahnstrasse 42-43, 10997 Berlin, Germany
http://www.markthalleneun.de
3. ジャジー・ベルリン
もうひとつ、廃墟を利用した人気のイベントスペースが「ノイエ・ハイマート」。蚤の市からフードイベント、コンサートと、手を替え品を替え訪れたひとを楽しませてくれる。建物の外にテラス席がもうけられているのもポイント。夏の夜風に吹かれながら飲むビールは格別だ。明け方まで営業しているから、時差ボケで眠れない夜に一度訪れてみてはいかがだろう。
イチオシは、毎週金曜におこなわれている「ジャジー・ベルリン」。たった2ユーロで、最新のジャズに触れることができる。もちろんすべて生演奏。大物から新進気鋭まで、国内外からさまざまなミュージシャンがやってきて、ベルリンのジャズファンたちを楽しませている。演奏の腕に自信があるというひとは、セッションに参加してみてはいかがだろう(事前エントリーが必要)。ベルリンのナイトライフを体感したいひとはぜひ。
Jazzy Berlin
日程|毎週金曜
時間|22:00〜翌2:00
入場料|2ユーロ
会場|Neue Heimat
Revaler Straße 99, 10245 Berlin, Germany
http://www.neueheimat.com
http://www.jazzclubsinberlin.com(Jazzy Berlin)
豊田裕|TOYODA Hiroshi
カメラマン。スタジオ、広告会社写真部を経て2012年にベルリンに移住後、料理撮影を主としてフリーランスで活動中。ビール大好き。
http://www.hiroshitoyoda.com
Page 02 アムステルダムの夏はパレードにおまかせ?
特集|ベルリンのビール・フェスから、ニューヨークのパブリックアートまで
世界4都市のカメラマンに聞く、夏休みの過ごし方(2)
アムステルダムの夏はパレードにおまかせ?
1. アムステルダム・ゲイ・プライド
個人的なイチオシは、毎年7月下旬から8月上旬にかけて街をあげて開催される「ゲイ・プライド」。もっともアムステルダムらしいイベントのひとつで、その名のとおり、LGBTの人びとの社会的立場の向上をテーマにした恒例の祭典だ。ニューヨークやベルリン、シドニーやパリなど世界各都市で開催されているから、ほかの街で見たことがあるひとも多いかも?
今年20周年を迎えるアムステルダム版は、世界遺産となった旧市街運河地区が舞台。そのロケーションのよさからも人気が高く、期間中は世界各国からLGBTたちが訪れる。ハイライトはなんといっても中日(なかび)におこなわれる「カナル・パレード」だ。参加者たちは、おもいおもいにデコレートしたボートで運河をパレードするのだが、民間のグループだけではなく警察や軍、政党ほか、行政関係者たちもこぞって参加するのがアムステルダム版の特徴。彼らの誇らしい表情から、国を挙げてLGBTの人権問題に取り組む姿勢が伝わってくる。パレードをしっかり見たいひとは、ルート上の運河に架かる橋に陣取るとGOOD。
Amsterdam Gay Pride
日程|7月25日(土)〜8月2日(日)
入場料|カナル・パレードは無料。そのほかのイベントはホームページをチェック。
会場|Theater Amsterdam、Homomonument、Paleis van de Weemoed、Paradisoほか
http://pride.amsterdam
2. ミッフィー・アートパレード
今年はかのミッフィー(うさこちゃん)が60歳を迎える(びっくり!)。この還暦を祝って、「ミッフィー・アートパレード」と称した展示プロジェクトが展開されている。これはオランダと日本のクリエーター60組が、真っ白なミッフィー像をキャンバスにしてアート作品を制作し、オランダ5都市、日本でも7都市前後で展示するというもの。
アムステルダム随一の観光スポット、ミュージアム広場にも12体が勢揃い。かわいいものから、おもわず引いちゃいそうなおどろおどろしいものまで、作風はさまざま。これらの作品は会期終了後オークションで販売され、売り上げはユニセフに寄付される。とにもかくにも、今夏アムステルダムに来るなら、ぜひ還暦のミッフィーと一緒に記念写真をどうぞ。
Miffy Art Parade
日程|5月1日(金)〜9月30日(水)
入場料|無料
会場|Museumplein Square、Hortus Botanicus Amsterdam、Rijksmuseum、Van Gogh Museum、Conservatorium Hotelほか
http://www.miffy60-exhibition.jp/art-parade/
3. アルティス動物園・ゾーメルアーフォンデン
ヨーロッパ最古の動物園のひとつ「アルティス動物園」は、6月〜8月の土曜、日没時間まで開園している。日没と言ってもオランダの夏は日が長いので、夜遅くまでの開園ということになる(6月は10時過ぎ。8月は9時過ぎ。動物園のホームページで確認できる)。動物の夜の様子が見られるほか、ライブやワークショップ、ガイドつきツアーなどイベントも盛りだくさんだ。
夕方涼しくなってくると、園内ではロコたちがピクニックやバーベキューをしながらのんびりくつろぐ。時折、ライブ音楽の向こうからオオカミの遠吠えも。キリンやゾウは寝支度をはじめ、チンパンジーの赤ちゃんはママの腕のなかで熟睡。この不思議な雰囲気、たとえるならプチ・サマーフェスティバルとアーバン・サファリを足して2で割ったような感じ。園内には大きなプラネタリウムもあるので、日の長い夏の夜にどうしても星空が見たくなったらこちらへ。
ZOOmeravonden
日程|6月6日(土)〜8月29日(土) ※毎週土曜
時間|9:00〜日没
入場料|2歳まで無料、3〜9歳 16.5ユーロ、10歳以上 19.95ユーロ
会場|Natura Artis Magistra
Plantage Kerklaan 38-40, Amsterdam, Netherlands
http://www.artis.nl
ユイキヨミ|YUI Kiyomi
カメラマン/ライター。20年ほど前にアムステルダムに移住。ライフスタイル誌、デザイン系書籍などを中心にフリーランスとして活動中。
http://kiyomiyui.com
http://www.studiofrog.nl
Page 03 ニューヨークの夏は無料の文化イベントが目白押し!
特集|ベルリンのビール・フェスから、ニューヨークのパブリックアートまで
世界4都市のカメラマンに聞く、夏休みの過ごし方(3)
ニューヨークの夏は無料の文化イベントが目白押し!
1. サマー・エキシビション・アット・ソクラテス・スカルプチャー・パーク
「ソクラテス・スカルプチャー・パーク」は、いま注目を集めるクイーンズの西岸、イーストリバー沿いに建つ公園。地元住民の憩いの場であると同時に、いたるところにアート作品が展示されている“屋外ミュージアム”でもある。背景にマンハッタンの摩天楼を望む立地も魅力のひとつ。もともと廃墟同然の埋め立て地だったそうだけど、いまから30年前、彫刻家マーク・ディ・スベロの呼びかけで整備が進んで、いまのようなかたちに姿を変えたのだとか。
個人的には、夏におこなわれるオープンアトリエがオススメ。毎年、若手彫刻家がやってきて、ここに滞在しながら作品を制作する。そうして完成した作品はすべて無料で見ることができる。植物で巨大なピラミッドをつくったアニエス・ディーンズの作品、合板で風変わりな塔を完成させたアイケー・スタジオの作品など、今年も名作揃いだ。
Summer Exhibitions at Socrates Sculpture Park
日程|5月17日(日)〜8月30日(日)
時間|10:00〜日没
入場料|無料
会場|Socrates Sculpture Park
32-01 Vernon Boulevard, Long Island City, NY 11106, United States
http://socratessculpturepark.org
2. サマーステージ
夏はこれがなくちゃはじまらない、というくらい毎年楽しみにしているのが「サマーステージ」という名の一大音楽フェスティバル。5月から10月まで、ジャズからクラシック、ロック、R&B、ヒップホップまで、ありとあらゆるジャンルのコンサートが連日おこなわれている。しかも、そのほとんどが無料(!)という太っ腹具合。
舞台は「セントラル・パーク」の特設ステージをはじめ、ブルックリンやスタテン・アイランド、クイーンズ、ブロンクスと、ニューヨーク一帯に設けられている。30周年を迎える今年は、例年以上に豪華出演陣が顔を揃えているので、お見逃しなく。
SummerStage
日程|5月18日(月)〜10月4日(日)
入場料|無料 ※一部を除く
会場|Central Park 、Marcus Garvey Park、Highbridge Park、Clove Lakes Parkほか
http://www.cityparksfoundation.org/summerstage/
3. ブライアント・パーク・ヨガ
マンハッタンの中心部にある公園「ブライアント・パーク」。夏のあいだ、ヨガ好きのニューヨーカーや観光客がここに集結する。毎週、火曜の朝と木曜の夜限定で、無料のレッスンが開かれているのだ。たっぷり1時間のプログラムを受けもつのは、雑誌『Yoga Journal(ヨガ・ジャーナル)』に所属するプロの講師たち。彼らのかけ声に沿って数百人がおなじポーズをとっている姿は、教室に参加しなくても一見の価値ありだ。
こうした屋外でおこなわれる無料のレッスンは、マットを持参しないと参加できないことが多いのだけど、ここはマットも無料で貸し出してくれる。手ぶらで気軽に参加できるのがうれしい。
Bryant Park Yoga
日程|5月19日(火)〜9月24日(木) ※毎週火曜・木曜
時間|火曜 10:00〜11:00、木曜 18:00〜19:00
入場料|無料
会場|Bryant Park
41 W 40th Street, New York, NY 10018, United States
http://www.bryantpark.org
柳川詩乃|YANAGAWA Shino
写真家。スペインのアンダルシア在住後、2004年にニューヨークに移住。広告やエディトリアルを中心に活躍中。9月にはニューヨーク大学で人種問題をあつかった写真展『Finding Dante』を開催予定。
https://shino-yanagawa.squarespace.com
Page 04 夏のシンガポールで文化の坩堝を体感!
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世界4都市のカメラマンに聞く、夏休みの過ごし方(4)
夏のシンガポールで文化の坩堝を体感!
1. ナショナル・デイ
街中が赤と白の国旗で埋め尽くされ、スピーカーからは国歌が鳴り響く。これがシンガポールの「ナショナル・デイ」。マレーシアから独立したことを記念して、毎年8月に開催されている記念式典である。
個人的に楽しみにしているのが、マリーナ・ベイに浮かぶ特設ステージでおこなわれる壮大な航空ショー。エアフォースの飛行機を使って、約40分間アクロバティックな飛行をしてみせるのだが、イベント当日までの1カ月間、毎週土曜に予行練習がおこなわれていて、それを楽しみにしている地元のひとも多い。ショーを締めくくる花火がこれまた迫力満点。今年はちょうど独立から50周年という記念イヤーにあたるため、いつも以上に盛り上がることまちがいなし。
National Day
日程|8月7日(金)〜10日(月)
入場料|無料
会場|Padang、Marina Bay、Gardens By The Bay、Esplanadeほか
http://www.ndp.org.sg
2. ハリ・ラヤ・ハジ
年に一度のメッカ巡礼(ハッジ)を締めくくる吉日を祝う「ハリ・ラヤ・ハジ」。断食(ラマダン)明けを祝う「ハリ・ラヤ・アイディルフィトリ」とならぶイスラム教の二大祭りのひとつだ。ラマダンから数えて70日後、3日間にわたっておこなわれる。
伝統的な祭事を終えたあと、イスラム教徒は両親や親戚、友人宅を訪問して、昼食をともにしたり、宴会を開いたりする。ぼくのようにイスラム教徒でないひとは、ゲイラン・セライやカンポン・グラムに向かうのが正解。祭日の期間中、この地区一帯には伝統的なデコレーションが施され、絨毯から民族衣装、工芸品、食べ物までが立ち並ぶバザーが開かれるのだ。異国情緒あふれるこの雰囲気は一度ためしてみる価値あり。
Hari Raya Haji
日程|9月24日(木)
会場|Geylang Serai、Kampong Glamほか
http://www.yoursingapore.com/festivals-events-singapore/cultural-festivals/hari-raya-haji.html
3. ハングリー・ゴースト・フェスティバル
「ハングリー・ゴースト・フェスティバル」は、毎年8月ごろ、中国系シンガポール人が開催する大規模な伝統行事。意味合い的には、日本のお盆に近いかもしれない。ワヤン(京劇)やユーモアたっぷりのコメディ、歌のパフォーマンス、アクロバティックなポール・ダンスと、街のいたるところでさまざまな催しがおこなわれている。こうしたゲタイ・パフォーマンスが、先祖の供養になると言い伝えられているのだ。
個人的に印象的なのが、家の外に置かれたドラム缶。亡くなったあとも、多くの財産を得られるようにと、紙でつくられた偽のお金を燃やすのだ。チャイナタウンやレッドヒル、ゲイランなど、中国系の多く住む地域では、朝から晩まで白い煙がモクモクとあがっている。
Hungry Ghost Festival
日程|7月27日(月)〜8月24日(月)
会場|Chinatown、Lorong Koo Chye Sheng Hong Templeほか
http://www.yoursingapore.com/festivals-events-singapore/cultural-festivals/hungry-ghost-festival.html
原隆夫|HARA Takao
カメラマン。1976年生まれ。2002年にシンガポールへ移住。2013年にLUXPHO PTE LTD設立。広告写真をメインに活動中。
Page 01 ベルリンの夏はビールと廃墟が熱い!