製造情報開示を実施する英国産スパークリングワインのパイオニア「ナイティンバー」｜Nyetimber

Nyetimber｜ナイティンバー

自社畑の葡萄のみを使用する、別名“Perfectly British”

ヨーロッパ、中東、アジア、アメリカなど20カ国の著名なレストランで提供される、最上級の英国産スパークリングワイン専門メーカー「ナイティンバー」は、イギリス南部のウェスト・サセックス州に生産拠点を構える。イギリス産のシャルドネ、ピノ・ノワール、ピノ・ムニエの3品種の葡萄を用いて、イギリス国内でスパークリングワインを初めて製造したブランドだ。

Text by OZAKI Sayaka｜Edit by TSUCHIDA Takashi

開示情報を読み解き、生産の過程に思いを馳せる

「ナイティンバー」創立の歴史は1086年まで遡り、王族や貴族の所有という変遷を経て、約900年後の1988年に本格的にワイン醸造用葡萄の栽培をスタート。2006年、現在のオーナーのエリック・ヘレマが組織を購入し、翌2007年に醸造家のシェリー・スプリッグスとブラッド・グレイトリックス夫妻が「ナイティンバー」に参画した。彼らが追求してきたのは、丹精込めて育てた自社畑の葡萄のみを使い、イギリスの地で世界最高峰のスパークリングワインを造ることだ。

醸造家・シェリー・スプリッグス（写真右）は、2007年から醸造責任者を務め、わずか10年余りでシャンパーニュの名だたるメゾンに匹敵すると言われるまでにナイティンバーの地位を高めた。シェリーはカナダ生まれで、バンクーバーのワイン研究センターで修士号を取得後、オーストラリアのアデレード大学でワイン醸造学を学び、エノロジストの資格を取得。卒業後はオーストラリア、ニュージーランド、アメリカの最高のワイン産地で世界中から尊敬を集めるワインメーカーで研鑽を積んだ。

その後、カナダのワイナリーから多くの誘いを受けたが、イギリス生まれの父親がプレゼントとして持ち帰った1本の「ナイティンバー」との出合いから、夫のブラッド・グレイトリックスとともに、ナイティンバーへの参画を決意。2013年には権威あるシャンパーニュの評論家であるトム・スティーヴンソンが著した「シャンパーニュとスパークリングワインの百科事典」で90ポイントをマークし、世界的な醸造家として知られる存在となった。

さらに2018年、ロンドンで毎年開催されるインターナショナル・ワイン・チャレンジ（IWC）で、女性で初というばかりでなく、シャンパーニュ地方以外の醸造家として初めて「スパークリングワインメーカー・オブ・ザ・イヤー」受賞の快挙を果たした。

そしてナイティンバーは新たな取り組みとして、ワイン一本一本の透明性を担保すべく、すべてのワインに関する葡萄品種別、ヴィンテージ別のブレンド割合、ボトリング（瓶詰め）、リドリング（動瓶）、およびディスゴージメント（澱抜き）を行なった日時についての情報開示を行なっている。購入者は、ウェブサイト（Nyetimber.com）からボトルのバックラベルに記された数字を入力して、個々のワイン情報を検索することが可能だ。

卓越した専門性を誇る醸造家が造るナイティンバーは、“Perfectly British”の理念のもと、世界各国の上質なライフスタイルを望む人々に最上級英国産スパークリングワインとして親しまれ、ワイン業界でも数々の功績を上げて広く賞賛されている。