酒粕がクラフトジンに。サステナブルを実現する東京リバーサイド蒸溜所|EAT
LOUNGE / EAT
2022年5月20日

酒粕がクラフトジンに。サステナブルを実現する東京リバーサイド蒸溜所|EAT

EAT|東京リバーサイド蒸留所

酒蔵やビールのサプライヤーから出る廃棄素材を使用してクラフトジンに再生

「サステナブル」というキーワードが社会を駆け巡る昨今、改めてビジネスとして成立していけるものはどれだけあるものだろうか。2020年2月に設立したベンチャー エシカル・スピリッツ社が掲げる「循環経済を実現する蒸溜プラットフォーム」という理念とは何か。環境配慮とビジネスを両立する光明とは。新作発表を機に、東京の職人が昔から集まる街・蔵前に蒸留所を構える小気味良くリノベーションされた雑居ビルへ伺ってみた。

Photographs and Text by IJICHI Yasutake

こんな下町に希望を感じる場所を見た。

東京リバーサイド蒸溜所は、築50年の建物をリノベーションで再生した趣ある建物、丸ごと1棟を指す。1Fはテイクアウトできるストア、2Fはクラフトジンを使ったカクテルや特別料理が頂ける「Bar&Dining Stage」。屋上は菜園になっている。
スカイツリーも臨める屋上菜園で育てているのは、18種類のハーブ。屋上で育てられたハーブは、2F「Stage」のカクテルやフードメニュー、クラフトジンのボタニカル(香りづけ)に使われている。土に生えているものをそのままかじりつきたいくらいのハーブだが、それは叶わないとしても、もぎたてをそのまま使っているので、ジンにもフードにも芳醇な香りがふんだんに活かされている。
蒸溜所は1Fストアの裏側。まず、高級車に勝るとも劣らない金額という、壮大で重厚な蒸溜器に圧倒される。この蒸溜器を通して、廃棄予定だった酒粕にボタニカルが加わり、新たな味わいのジンに生まれ変わる。
当然だが、使う酒粕によって生まれ変わるジンの味わいもまったく異なるものとなる。そもそも、エシカル・スピリッツの代表山本氏は元々日本酒業界に身を置いてた方。日本酒の生産工程で生成される酒粕のクオリティの高さを知る中で、それが廃棄または肥料にしか使われないことを勿体ないと思い、原料として買い取り、再蒸溜してクラフトジンに再生・販売を始めた。その利益は、酒粕提供元の蔵元に酒米を提供し、またそこから新しい日本酒を生産する循環型の仕組みを作っている。こだわりは半端ではない。
ここで生まれたハーブやクラフトジンがすぐに味わえるのが、2F「Bar&Dining Stage」。今回頂いたのは、バドワイザーと月桂冠と連携してビールから再生するクラフトジン「REVIVE」シリーズの新作2種。
ベルギーのホワイトビール ヒューガルデンを再生した「REVIVE from Hoegaarden Root」と、アメリカンクラフトビールのIPAを再生した「REVIVE from IPA Disrupt」。2021年夏までに廃棄危機となった余剰ビール60,000ℓが、15,000本以上(/375ml)のクラフトジンとしてよみがえったという。Rootの方は世界的に有名なカクテル「コープス・リバイバーNo,2」に、Disruptは「モヒート」にしてもらい、ムール貝や牡蠣酢豚など3品のコースと共に頂いた。
独特な風味が豊かで味わい深いジンは、今まで味わったことがないような味わい。フード(白鳥翔大 共同監修)は当然季節の素材によってメニューも変わるというが、このコースを通常1,800円(税抜)で提供しているというから驚愕。このクオリティとこの価格なら、ひとりで立ち寄っても誰かと一緒でも安心できて、居心地が良く使いやすい。
蔵前は、今でこそ東京のブルックリンと呼ばれてオシャレなイメージももたれつつあるが、古くからものづくり職人の街と知られる。長い歴史と文化の中で培われた技術や育てられてきた建物が、今の価値観の中でリノベーションされて再生されている。
日本各地の日本酒の蔵元の想い、クラフトジンづくりへのこだわり、菜園、建物…東京リバーサイド蒸溜所も同様だ。蔵前という街とあいまってか、そのストーリーとジン自体のクオリティの高さが各所で評判を呼び、海外からの引き合いも多くなっているという。
様々なものづくりの魅力が詰まった中に今っぽさが凝縮されたストーリーだけではなく、おいしいことを真摯に追求するスタンス。東京リバーサイド蒸溜所、エシカル・スピリッツの今後の取り組みもフォローしていきたい。

東京リバーサイド蒸溜所

問い合わせ先

東京リバーサイド蒸留所
https://ethicalspirits.jp/