INTERVIEW|写真家 堀 清英 写真集『いぬまるけ Dogs…anywhere』刊行
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2015年2月4日

INTERVIEW|写真家 堀 清英 写真集『いぬまるけ Dogs…anywhere』刊行

INTERVIEW|写真家 堀 清英

写真集『いぬまるけ Dogs…anywhere』刊行

『CASA BRUTUS』『GQ JAPAN』『SWITCH』……名だたるクオリティ誌からフジテレビジョン、BEAMS、IDEE、大和ハウスなど大手企業の広告写真、そしてソニー・ミュージックアソシエイテッドレコーズ、東芝EMI、avex、ユニバーサルミュージック、ビクターエンタテインメントほか多くのミュージシャンのCDジャケットを手がけるなど、その動向が注目される写真家 堀 清英。ニューヨークで培った感性を武器に、活動をつづける彼が、このたび写真集『いぬまるけ Dogs…anywhere』を刊行した。著者である堀 清英自身に、撮影の裏側から作品に込めた想いまで、写真集『いぬまるけ Dogs…anywhere』の魅力について聞いた。

Text by OPENERS

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堀 清英の“今”のセルフポートレイトなんです

──本プロジェクトがスタートしたきっかけは?

「WISH...original」のカタログ制作に携わらせていただいたさい、ロケでの撮影の最中、つぎつぎにアイデアが浮かび、あまりに楽しくて、このドアストッパーを輸入している会社の社長さんに軽い気持ちで「写真集を作って展覧会をしませんか?」と尋ねました。すると、ふたつ返事で「やろう!」と言ってくれたことがきっかけです。

INTERVIEW|写真家 堀 清英 写真集『いぬまるけ Dogs…anywhere』刊行 01

──タイトル“いぬまるけ”の意味は?

名古屋弁で“いぬだらけ”という意味です(笑)。今回動かない犬たちに自己を投影しました。これは堀 清英の“今”のセルフポートレイトなんです。自分のストーリーがワンちゃんたちのキャラクターに負けないものをつくること。ある意味ワンちゃんたちは芸能人的なキャラクターなわけですからね。普段の“ひと”を使った自分の作品づくりと同様に撮影に挑みました。撮影中はこの子たちが「どこに連れてってもらいたがっているか?」を絶えず聞いてましたね(笑)。

INTERVIEW|写真家 堀 清英 写真集『いぬまるけ Dogs…anywhere』刊行 02

結局自分の行きたいところだったんですけど。たとえば、海外旅行に行ってないなぁって思いながら飛行機撮ったりとか、世の中の秩序より普遍的な秩序ってどうしたら感じられるのかって思ったら、天球儀を山の上に運んでいたりとか。ちなみに表紙の写真は重要文化財・横浜市開港記念会館で撮影しました。そのほかについては内緒です。難しかったのは編集作業でした。700枚近く撮った写真のなかから48ページにするのですからね。なかなか選びきれませんでした(笑)。

──一番お気に入りのカットは?

この問いには少々困りますね……。かつてのガールフレンドに対して誰が一番好きだったかって聞かれている感じがします(笑)。でも、しいて言うならば黒い皮のワンちゃんの写真はいまの自分を強く投影していますね。

──それはなぜ?

INTERVIEW|写真家 堀 清英 写真集『いぬまるけ Dogs…anywhere』刊行 03

“黒”は昔から自分を写真で表現していくうえでキーになる色です。黒から連想するモノやコトを思い浮かべてみてください。私には光すら拒絶する暗黒、一番染まりにくい色、無個性であり逆に強い個性、頑固、などなど……。写真をはじめて以来、黒い山高帽、黒い衣装を着たひとの物語をずっと撮りつづけています。写真集の見返し部分にも、じつは黒の山高帽の犬がいます。写真集のなかではこの子だけ、人間の捨てたゴミのなかにいたり、荒れた環境に身を置きます。外の環境にいつも左右される自分がいて、ついブレてしまう、だけど克服したよっ! て。

小学校のとき鉄棒の逆上がりがはじめてできたときのような感覚を自分に味わせてあげたい、という願いがこの子には込められているんです。

──羽が効果的に使用されていますが、これはなにを意味しているのでしょう?

撮影中にトンビ(鳶)が羽根を落としていったんです。そのとき、ニール・ヤングの「BIRDS」という曲が頭のなかで聞こえてきました。ウル覚えで訳がまちがっているかもしれませんが、「自力で飛び立とうとするとき、羽根が舞い降りてきて、行き先を教えてくれる」というフレーズです。それでこの羽をシンボリックに使いたくなったわけです。

私自身が作ったストーリーは、犬たちが展示会から抜け出して、ちがった環境に飛び込んで行ったり、見つけたり、偶然出会ったりする物語を組みましたが、あえて文章でストーリーを書きませんでした。見ていただいた方々が皆さん自身のストーリーを遠慮なく作っていただきたいです。

余白もたくさんとってありますので、子どもたちにはどんどん自由に絵でも言葉でも書き込んで、楽しんでもらいたいですね!

INTERVIEW|写真家 堀 清英 写真集『いぬまるけ Dogs…anywhere』刊行 04

──今後の活動予定についてお聞かせください。

現在あるブランドさんの撮影で、国内外で共通のファッションポリシーをもつ人びとのドキュメンタリー写真集の企画が動いております。また、今年は元KEMURIのボーカリスト 伊藤ふみお、故アレン・ギンズバーグとのセッションTシャツを作りましたが、来年はギンズバーグはもちろんほかのアーティストと、今年とはまたちがった見せ方で発表する予定です。

INTERVIEW|写真家 堀 清英 写真集『いぬまるけ Dogs…anywhere』刊行 05

──ありがとうございました。

『いぬまるけ Dogs…anywhere』

『いぬまるけ Dogs…anywhere』
著者|堀 清英
価格|1575円
モデル|WISH...original
デザイン|大橋 修(thumb M)
A5版変形/48ページ/カラー/ハードカバー
発行|堀 清英

堀 清英|HORI Kiyohide

堀 清英|HORI Kiyohide
写真家。愛知県出身。1991年渡米。ニューヨークのICP(国際写真センター)にて学ぶ。97年に帰国。その後『FRaU』『DUNE』『GQ JAPAN』『Number』『OCEANS』『POPEYE』『SWITCH』『SPUR』『エココロ』など、ファッションからカルチャー、メンズからウィメンズまで幅広く人気誌にて活躍。また、フジテレビジョン、テレビ朝日、BS朝日、TAKEO KIKUCHI、BEAMS、ミズノ、au、ラフォーレ原宿、オーストラリア政府観光局、IDEE、大和ハウスなど大手企業の広告、そしてソニー・ミュージック・アソシエイテッドレコーズ、東芝EMI、avex、ユニバーサルミュージック、ビクターエンタテインメントほか、多くのミュージュシャンのCDジャケットやライブ写真を手がけるなど、精力的に活動する。
http://www.kiyohidehori.com/

           
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