ART FILE 30|「Bill Cunningham: Facades(ビル・カニンガム:ファサース)」
ART FILE 30|アメリカ・ニューヨーク
「Bill Cunningham: Facades(ビル・カニンガム:ファサース)」
ストリートファッション・フォトグラファー、ビル・カニンガムの初期作品を展示する「Bill Cunningham: Facades(ビル・カニンガム:ファサース)」展。6月15日(日)まで「ニューヨーク・ヒストリカル・ソサエティー・ミュージアム」で開催中だ。
Text by Winsome Li (OPENERS)
歴史と現代が交錯する斬新なファッションスナップ
帽子職人にして退役軍人のビル・カニンガムは、ストリートファッション・フォトグラファーの先駆者といわれ、現在85歳になったいまも、ニューヨークやパリ、都会の真ん中でファッショニスタを追いかけながら、シャッターを押しつづけている。
今回の展示はビル・カニンガムが手掛けたプロジェクトおよび写真集「Facades(ファサース)」をもとに、88点の作品が並べられる。「ファサース」は1968年から足掛け8年の製作期間を経て、ニューヨークのファッション史、建築物、都市の特徴を写真で記録したドキュメント・プロジェクトだ。
このプロジェクトのため、ビル・カニンガムは当時、さまざまな年代のヴィーテージ衣装500点以上をかき集め、みずから自転車でニューヨーク市内の1800カ所を巡り、ロケ場所を捜し回った。歴史的な建築物から、モダンなランドマークや落書きだらけの地下鉄まで、ニューヨークの「歴史」と「現代」を代表する場所を舞台にして「ファサース」を作り上げた。
また、モデルを務めたのはビル・カニンガムの隣人である、写真家のエディタ・シューマン(Editta Sherman)。18世紀のヴィーテージドレスと造花をあしらったハットをコーディネイトしたビクトリアン・スタイルや、三角帽とかつらでスタイリングした18世紀の乗馬ルックなど、時代感に溢れたファッションを具現した作品群だ。豊かな表情で登場するエディタ・シューマンは背景の街並みとともに、詩的かつ独特な強さを醸し出している。
現在、ビル・カニンガムはニューヨーク・タイムズ紙のファッションスナップコラムを現役で担当している。そんな彼の初期作品を、この展示で存分に味わってほしい。