“意外性と感動”にこだわった前衛料理

1964年、「エル・ブリ」はスペイン・カタルーニャ地区にあるカラ・モンジョイという海沿いの町に開店した。店の名前は初代オーナーの愛犬、フレンチ・ブルドッグの品種名である“ブリ”に由来する。1984年、フェラン・アドリアは料理人として「エル・ブリ」に入社。わずか3年のキャリアでレストランの料理長になった。1990年から、フェラン・アドリアは「エル・ブリ」のベテランマネジャーであるジュリー・ソレールと店を共同経営し、見た目も味も革新的な料理を世の中に紹介した。

彼らにとって“料理はコピーしてはいけない”というのがモットー。そのため、これまでに使ってきたレシピと料理本をすべて処分し、ゼロから「エル・ブリ」のオリジナルレシピを作り出した。味覚を超える、料理とコンセプチュアルアートを融合したメニューをぞくぞとく誕生させる。フェラン・アドリアはカスタマーに新しい感覚を提供するため、常に料理の“意外性と感動”を探求してきた。

料理界に革命を起こした「エル・ブリ」の1846品

フェラン・アドリア率いるシェフチームのクリエイティブ精神は、斬新な調理方法で食材をアート作品に昇華させ、料理の芸術的な面を引き出した。彼らは全部で1846品の料理を生み出し、料理界に革命を起こしたのである。「エル・ブリ」の裏舞台である厨房と料理研究室は、写真や映像として今回の展示で紹介されている。また、リサーチ資料（手書きの絵やノート）、料理のプラスチック製モデル（料理の色、サイズと位置を確認するためのダミー）、「エル・ブリ」特製の調理器具、完成した料理の写真、レストランレビューと掲載誌の切り抜きなど、「エル・ブリ」に関わるものを幅広く展示。料理を味ではなく、目で確かめるのが本展の醍醐味だ。

天才料理人のフェラン・アドリア

フェラン・アドリアのリーダーシップによって、「エル・ブリ」はイギリスの専門誌『レストラン・マガジン』における「世界のベストレストラン50」で1位を獲得すること実に5回。そして、「エル・ブリ」は年間200万件を超えるの予約が殺到し、「世界一予約の取れないレストラン」と呼ばれるようになった。

天才料理人と認められたフェラン・アドリアは、2004年に『TIME（タイム）』誌の「世界で最も影響力のある100人」に選ばれた。さらに、漫画家のマット・グレイニングはフェラン・アドリアをキャラクター化し、著名なアニメ「ザ・シンプソンズ」に仲間入りさせている。そんなフェラン・アドリアの偉業のすべてを見ることができる。

「エル・ブリ」は2011年に閉店したが、これで終わりではない。フェラン・アドリアは「エル・ブリ」を新しい未来へ導いている。2つのプロジェクトを抱えて、「エル・ブリ」は「エル・ブリ財団（elBulli Foundtion)」として2015年から運営する予定。まず、「エル・ブリ」は一般公開の食研究センターに変わり、「エル・ブリ」の伝説と食の文化を多くの人々に伝えることになる。2つ目のプロジェクトは、食材のDNAや料理の調理方法を分類したアーカイブアプリ「BulliPedia（ブリペディア）」の製作だ。新たなステージへ到達した「エル・ブリ」。今後の活躍がますます期待されている。

「elBulli: Ferran Adrià and The Art of Food」
会場｜ロンドン　サマーセットハウス
会期｜7月5日（金）～9月29日（日）
開場時間｜10：00～18：00　　※木曜日のみ21：00まで
入場料｜10ポンド
住所｜ Somerset House, Strand, London WC2R 1LA
Tel. +44(0)20-7845-4600
www.somersethouse.org.uk