連載エッセイ|#ijichimanのぼやき「“常連”とは何なのか。自分なりの関係が築ける、ちゃんと付き合える店」
連載エッセイ|#ijichimanのぼやき
第57回「“常連”とは何なのか。自分なりの関係が築ける、ちゃんと付き合える店」
“常連“とは何なのだろう。
毎週通う客なのか、月1回行けばいいのか、店主に名前を覚えられている客か、メニューを見ずに注文する客か、ボトルキープしている客か、それとも店の売上に貢献する客なのか。
店の業態や価格帯にも左右されるから、一概に規定するのは難しい。けれど、総じて言えるのは、その人がいることで店の空気が自然に成立するような客、なのだろう。店との距離が近すぎるわけでもなく、かといって他人行儀でもない。注文も振る舞いもいちいち気負わず、店のリズムを乱さない。その人がいることが、店にとっても特別ではなく、いつもの風景になっている。そういう人が、常連なのではないかと思う。
Photographs and Text by IJICHI Yasutake
人と人、人と店




「俺、あの店の常連だから」と自分から言う人は、好きではない。
店が好きだから通っているというより、「俺はあの店を知っている」「あそこの店主と仲がいい」「あの店に行けば俺のことを知っている人がいる」ということを、自分の価値や人脈のようにアピールしたい感じがしてならない。いい店を知っていること、店主と親しいこと、その店に自分の居場所があることまで含めて、「自分はこういう店に出入りする人間です」と見せたいのだろう。店との関係すら消費・誇示の対象にしてしまっている、店との関係まで自分のステータスにしてしまうそういう俗物っぽさが、どうも苦手でならないのだ。




むしろ、店から“常連さん”と呼ばれると、こちらとしては、妙にむず痒く思うほどだ。
何年ぶりに行っても、遠慮することも気負うこともなく、ふらっと寄れる。扉を開ければ、「久しぶりですね」と柔らかく迎えてくれる。こちらも「どうも」と入っていける。ひとりで行けば、ちょっとした他愛ない会話をすることもあれば、スマホを見て時間を過ごすこともある。
そう考えると、人と店の関係も、人と人との関係と同じなのかもしれない。
そう考えると、人と店の関係も、人と人との関係と同じなのかもしれない。




その店で久しぶりに会った人がいても、前回の続きから会話が始まる。かといって、昔話ばかりするわけでもない。互いにそれぞれの時間を過ごしてきたことを前提に、また自然に会話が始まるし、無言だからと言って気まずいわけでもない。
結局、常連というのは、行為の頻度ではなく、場との呼応関係であって、名乗るものでも、店から認定してもらうものでもない。ラベルでも、通った回数でも、使った金額でもない。定量的なものよりも、店との時間の積み重ねのなかで、いつの間にかできている阿吽の関係。そういう関係が、どれだけ築けているか。店と客のあいだにある、言葉にしにくい定性的な実態のほうが大事なのだと思う。人間関係と一緒。











京都・神馬
店主と客、客同士の距離感もちょうどいい。長く通う人たちが、店の空気をつくっていて、そこにいる客の姿に憧れる。京都の三大酒場のひとつ。











三軒茶屋・イル ヴィオットロ
自分自身が通う店。店主とも付き合いがあり、料理を食べに行くことと、店主に会いに行くことの境目が、いつの間にかなくなっている。








浅草・ひら井
常連が店に馴染み、家族のようなのに馴れ合いではなく、ちゃんと関係がある。浅草らしい距離感の店。







三河島・モランボン
特別なことをしているわけではない。でも、そこに人が集まり、特定の客と距離が近いわけでもなく、それぞれが自然に過ごしている。こういう店にこそ、長く続く関係が生まれるのだと思う。








銀座・傳鳥
自分自身が通う店。店主とも知り合いだが、特別な会話を交わすわけでもなく、気を遣わずに飲める。四十を過ぎて、こういう店が何軒かあることは、けっこう大事なこと。
伊地知泰威|IJICHI Yasutake
1982年東京生まれ。慶應義塾大学在学中から、イベント会社にてビッグメゾンのレセプションやパーティの企画制作に携わる。PR会社に転籍後は戦略プランナーとして従事し、30歳を機に退職。中学から20年来の友人である代表と日本初のコールドプレスジュース専門店「サンシャインジュース」の立ち上げに参画し、取締役副社長を務める。現在は、(株)イール代表取締役・(株)PA Communication取締役・LAMP(株)取締役を務め、幅広い業界におけるクライアントのブランディング・マーケティングをサポートしながら、街探訪を続け、食を起点に人と人を繋げている。好きな食べ物はふぐ、すっぽん。好きなスポーツは野球、競馬。好きな場所は純喫茶、大衆酒場。
Instagram:ijichiman
1982年東京生まれ。慶應義塾大学在学中から、イベント会社にてビッグメゾンのレセプションやパーティの企画制作に携わる。PR会社に転籍後は戦略プランナーとして従事し、30歳を機に退職。中学から20年来の友人である代表と日本初のコールドプレスジュース専門店「サンシャインジュース」の立ち上げに参画し、取締役副社長を務める。現在は、(株)イール代表取締役・(株)PA Communication取締役・LAMP(株)取締役を務め、幅広い業界におけるクライアントのブランディング・マーケティングをサポートしながら、街探訪を続け、食を起点に人と人を繋げている。好きな食べ物はふぐ、すっぽん。好きなスポーツは野球、競馬。好きな場所は純喫茶、大衆酒場。
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