Taiki Yokote_Nyan, Ten, Onni, Pii, Shii, 2026
LOUNGE /
ART
2026年6月26日
横手太紀、CON_とparcelにて2会場を相違させる個展を開催
ART|to make today lovely, too / to make today lonely, too
横手太紀の個展「to make today lovely, too / to make today lonely, too」が、2026年6月27日(土)から7月26日(日)まで、東京・馬喰町のCON\_とparcelにて開催される。横手は、日常のなかで名前のない存在や見過ごされた時間に目を向け、彫刻やインスタレーション、映像、写真などを通じて、その背後に潜む見えない物語を浮かび上がらせてきたアーティストだ。本展はその新作による2会場個展となる。
Text by WASEDA Kosaku
「lovely」と「lonely」。一字だけを違える二つの会場
同じビル内に位置するparcel(2F)とCON_(4F)は、ほぼ同じ間取りと面積を持つ。前者には「to make today lovely, too」、後者には「to make today lonely, too」というタイトルが掲げられ、わずか一字だけを違える名のもとに、同じ形をした空間に、まったく異なる味付けが施される。
愛おしさと寂しさ、安堵と不安は、別々の感情ではなく、同じ一日の表と裏でもある。横手氏の問いは、そのように二つに意味の間を揺れ動く。
横手氏のこれまでの作品に貫くのは、妄想と現実の「あわい」への関心だ。見えないものは、見えないがゆえに想像のなかで肥大する。実際には起きていない出来事、まだ訪れていない不安が、妄想によって現実と見分けがたい強度を帯びはじめる。
Taiki Yokote_Moku_ Floating Rubble (when the cat_s away, the mice will play), 2025_photo by Jungwoo Lee
Taiki Yokote_I’ll eat you up, I love you so_2025
その視点は、作品の素材選びにも直結している。ブルーシートや自転車カバーといった日用品がうねりをもって動き、コンクリート片が地面から数センチ浮いて回転し続ける。手がけた作品では、本来動かないはずのモノが通常ではあり得ない動きを見せる。重要なのは、それらが「動かされている」ように見えず、「おのずと動いている」ように感じられるところだ。
動力源や機構が巧妙に不可視化されることで、私たちがモノに結びつけている常識的な視点、コンクリートは地面に落ちているべきである、ブルーシートはひとりでに動かない、といった前提を拒否するのだ。
また横手は使用済みのかばんを用いた動く作品を本展の2会場をつなぐ存在として構想している。かばんは身体の延長として持ち主の生活の痕跡を引き受けながら、使われなくなった瞬間にただのモノへと戻る。それは物理的な荷物であると同時に、「エモーショナル・バゲッジ」、希望も絶望も入り混じった精神的な重荷、という比喩でもある。
本展ではさらに、横手がかつて飼っていた犬をモチーフとしたぬいぐるみの新作も発表される。動物を模したかたちでありながら商品でもあるぬいぐるみは、すでに愛着や感情移入の対象となるモノだ。横手はこれまでも、動物の毛皮やフェイクファー、動物が壁に残した痕跡の彫刻、あるいはアトリエに舞う埃のなかに宿る(すでにいないペットの毛や人間の皮膚をも含む)微細な物質を扱うことで、生物と無生物の境界を揺さぶってきた。
lovely と lonely。その一字の差が示すのは、対立ではなく振れ幅だ。横手の作品の核心は、どちらかの感情に着地することではなく、その中間を飛行し続ける時間そのものにある。ブルーシートもコンクリート片も、どれもどこかドライで無機質な素材だ。それだけに、曖昧な浮遊感というよりむしろ確固たる意志をもって空中にとどまり続けるように見える。静止しているようでいて、つねに微かに動いている。「あわい」に加えて「飛行」という事象も、横手太紀という作家の一貫性なのかもしれない。

横手太紀 / Taiki Yokote
1998年生まれ。神奈川県逗子市育ち。2021年東京藝術大学美術学部彫刻科卒業。2025年東京藝術大学大学院美術研究科彫刻専攻修了。
横手太紀の実践は、身の回りの景色や出来事によって揺さぶられる感情から始まる。存在と不在、非言語的なやりとり、目では捉えきれない微細な存在や事象。横手は物質とその背景にある見えない交感に目を向け、それらを丁寧な眼差しによって、集合体のなかに埋もれた個の存在や、多様な時間の流れを浮かび上がらせる。人間と非人間、現在と記憶、現実と想像が自然と同じ場に流れるなかで、そうした他者との静かな共鳴はそのあわいへ目を向ける態度であり、私たちと社会や世界とのより深い接続を促すものである。主な展覧会に、「Frieze Seoul 2025」(COEX、ソウル、2025年)、「Minor Attractions 2025」(The Mandrake Hotel、ロンドン、2025年)、「West Bund Art & Design 2024」(西岸芸術中心、上海、2024年)、「BOLMETEUS」(SAI、東京、2024年)、「until soil unites」(CON_、東京、2024年)、「六甲ミーツ・アート2023 beyond」(六甲山、兵庫、2023年)、「even a worm will turn」(parcel、東京、2022年)、「惑星ザムザ」(小高製本工業跡地、東京、2022年)、「Encounters in Parallel」(ANB Tokyo、東京、2021年) 、「獣(第0章 / 交叉時点)」(北千住BUoY、東京、2021年)など。
to make today lovely, too / to make today lonely, too
会期|2026年6月27日(土)〜7月26日(日)
時間|水曜~日曜 14:00~19:00
休館日|月火祝休
会場|parcel(2F) / CON_(4F)
東京都中央区日本橋馬喰町 2-2-14 まるかビル 2F・4F
※会場は階段のみのアクセス。車椅子ユーザー等でサポートを希望する場合は、事前にCON_のInstagramへ連絡のこと。
問い合わせ先
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Q.CON_はどんなギャラリーですか?
2022年4月、東京・日本橋馬喰町で開廊。ビジュアリティとコンセプトの両立を軸にコンテンポラリーアートをはじめとしたさまざまな表現文化を横断するプログラムを展開している。東京の都市文化を再考と実践するなかで、コンテンポラリーアートに限らず、音楽をはじめとする表現活動を有機的なムーブメントとして捉え直すことをビジョンとして掲げ、アーティストとの対話やリサーチから生まれたプログラムを企画することで、同時代性から生まれる新しい文脈の構築を継続的に行っている。