from TOKYO MOON|6月6日 ON AIR 『オルネ ド フォイユ』オーナー谷 あきらさんを迎えて(後編)
Lounge
2015年4月22日

from TOKYO MOON|6月6日 ON AIR 『オルネ ド フォイユ』オーナー谷 あきらさんを迎えて(後編)

from TOKYO MOON|6月6日 ON AIR

パリ郊外の一軒家をイメージしたインテリアショップ

『オルネ ド フォイユ』オーナー谷 あきらさんを迎えて(後編)

日曜の夜、上質な音楽とともにゆったりと流れる自分だけの時間は、大人たちの至福のとき。そんな豊かな時間をお届けするのは、DJ松浦俊夫によるラジオプログラム『TOKYO MOON』──。彼が世界中から選りすぐったすばらしい音楽や知的好奇心を刺激する大人のためのトピックスを、毎週日曜日Inter FM 76.1MHzにて19時からオンエア。ここでは毎週オンエアされたばかりのプログラムを松浦俊夫みずからお届けします。さて、今回彼がピックアップしたものとは?

Text by MATSUURA Toshio

今週は、ゲスト 谷 あきらさんの内面に迫ります

先週に引きつづき、青山のインテリアショップ『オルネ ド フォイユ』オーナーの谷 あきらさんに、アンティークや蚤の市の魅力、ご自身の著書やブログについて、そしてお店をオープンしてからこれまでの道のりなど、さまざまな話をうかがいました。谷さんの人生に影響をあたえてくれた音楽についても、意外なお話を聞くことができました。

REVIEW|TRACK LIST

01.Brian Eno / By This River (Virgin)
02.Gustavo Santaolalla / Al Otro Lado Del Río (DG)
03.Takagi Masakatsu / Elegance Of Wild Nature (P-Vine)
04.Urbs / So Weit (G-Stone)
05.Wechsel Garland/ Verbluten (Karaoke Kalk)
06.rei harakami / Owari No Kisetsu (Sublime Records)
07.Architecture In Helsinki / Need To Shout - Mocky Remix(Tailem Ben)
08.Björk / It's Oh So Quiet (Universal)

パリの蚤の市で見つけた宝物たち

松浦 谷さんはお店の運営以外にも蚤の市についての本ですとか、手芸小物の本、アンティーク紙の本だったりを出版されているんですよね。実際に全部拝見して、非常に個性的だなって思ったんですが、あえて手芸小物だったり、アンティーク紙に絞り込んで書かれたのにはなにか動機があったのでしょうか?

 “本を作るために”というのとは逆で、蚤の市に通いつづけているうちにだんだん気になったものをコレクションするようになっていったんです。それもやはり普通のものでは飽き足らず……。もちろん商品は商品で人気のものは仕入れるんですが、それ以外に商品にはなりづらいかなという、個人的な好みですよね、そういう気持ちがどんどん芽生えてきまして。そのなかで手芸というのは……もちろん僕は手芸は一切しないのですが。

松浦 あれっ、そうなんですか(笑)!?

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 しないです、はい(笑)。じゃあ、なんで集めたかというと、ラベルのデザインの美しさに魅かれたんです。いまのものですと、こう、商売っ気のあるデザインが多いと思うんですが、当時は道具などはとても貴重なもので、デザインもすごく丁寧にされていたんです。もう高級品というようなデザインですよね。そういったデザインっていまのデザインにも活かせるんじゃないかって思っていて、最初は資料的な感覚でどんどん集めているうちに、気づくとかなりのボリュームになっていたんですよね。それを少しずつお店でも販売していたのですが、せっかく集めたデザインも売ってしまったらなにも残らないので、なにかのかたちでデータベースのようなものを残せないかなと思ってたんです。そんなときに出版社さんから声をかけていただいて、それがきっかけで本になったというわけです。

アンティークを扱ううえでうんちくを語るというよりは、商品“そのもの”を伝えたい

松浦 谷さんが執筆業もされていることを知ってから……それはブログではじめて知ったのですが、説明がすごくうまいのかなと思ったんです。いまのようなおしゃべりのときもすごくわかりやすく説明してくれますし、文章が非常にさらりとしていて、気持ちがちゃんと伝わってくる。もともとそういうのは得意なんですか?

 本当に僕、文章もしゃべりもだめで、自信ないのですが……。ただ、意識はしていませんが、アンティークを扱ううえでうんちくを語るといいますか、歴史的背景だなんだっていうのはあまり語らずに、できる限り“商品そのもの”を伝えているので、それがおそらくわかりやすい要素なのかなと思います。

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松浦 やはりインテリアにしても、音楽にしても、アートにしても、うんちくを語りだすと固有名詞と漢字と括弧で埋め尽くされちゃって、なにが言いたいのかわからなくなっちゃうということが多々ありますよね。谷さんの説明はそういう意味では、自分の窓がカーテンがそよ風でふわっと揺れて風がはいってきたような感じといいますか……いまのは自分の勝手なイメージなんですけど(笑)。僕はそういうふうに感じるんです。もう、読み物として読んでるのかもしれないですね。そもそもブログってなんだか“やらしい”じゃないですか、ある意味。だから僕も必要最小限のことしか書かなくなっちゃって、そうなると最近はTwitter(ツィッター)ですよね。でも、ツイッターもいまでは氾濫しすぎていて、もうインフォメーション以外つぶやかないってことになってしまうんですけど、そういう意味で谷さんのブログはすごく読んでいてお手本になるなと思っていて、やはりそこまでさらりと書けないなと。皆さんもぜひ一度谷さんのブログを見てみてください。

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パリ郊外の一軒家をイメージしたインテリアショップ

『オルネ ド フォイユ』オーナー谷 あきらさんを迎えて(後編)

ちょっと傷があっても、ペンキが剥がれていても、それは“味”

松浦 谷さんはシェビーなもの、ちょっと風合いのあるものたちの一番のよさってなんだと思いますか?

 たとえば従来のアンティーク家具ですと、“傷跡も残さずきれいに直しました、100年前のそのままの姿にもどしましたよ”って、一般的にはそれを価値とする見方が多いと思うんですが、僕には優等生すぎておもしろ味がないかなって思えるんですよ。たとえばちょっと傷があっても、ペンキが剥がれていても、それは“味”であって、決して優等生ではない、ちょっとはみ出した感じを“味がある”と言うんじゃないかなって。そのほうが僕としてはすごくしっくりくるから、ごく自然に買い集めるようになっていったんです。

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インテリアショップ『boiserie(ボワズリー)』

松浦 自分の想いがこもったものたちをセレクトして、実際に仕事として成立されているわけですが、好きだからこそビジネスのなかでやったいくことがむずかしいってことってあると思うんです。谷さんにもそういったことはありますか?

 オープン前の話なんですが、僕のなかでは古いものとあたらしいものを組み合わせることは普通のことだったんですが、それをスタッフなりほかの方に説明するのが非常に苦労したといいますか、なかなか理解を得れなかったんですね。僕の頭のなかではできているんですけど、それを建物もない、商品が実際に並んでいるわけでもない、そんな状況で説明していかなきゃならないわけで、やはりオープン時にはいろいろありました。でもお店がオープンして、そのうち雑誌で紹介していただくようになって、徐々に周りも理解してくれるようになりました。いまでこそ自分の好きにやれるようになりましたけど、ここまで来るのはなかなか大変でしたね。

実験工房兼ショップ『アンスピラシオン』とは?

松浦 そうして6年かかって構想をかたちにして、いまではサテライト的な秘密基地もお持ちで。『オルネ ド フォイユ』のほかに『ボワズリー』というお店と『アンスピラシオン』という実験工房兼ショップを運営されているんですよね。

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インテリアショップ『inspiration(アンスピラシオン)』

 そうなんです。『オルネ ド フォイユ』ってもう、ある程度世界観ができていて、お客さんのなかにも“『オルネ ド フォイユ』だったらこんな感じ”というイメージが確立されていると思うんです。でも、日々お店を運営していくなかで僕のなかに、こういうの試してみたいとか、ちょっとこれ冒険的だけどやってみてもいいかなって想いが募ってきまして。そんなふうに浮かんできたアイデアたちの実験の場としてオープンしたのが『アンスピラシオン』というお店です。

たとえば古いものとあたらしいもの、そういった相反するものを一緒に並べてみたりですとか、お店の内装を直線的なものと曲線的なものをあえてミックスして構成してみたりですとか。そこで見えてきたものを『オルネ ド フォイユ』なり『ボワズリー』に反映できたらな、という場所です。

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『オルネ ド フォイユ』オーナー谷 あきらさんを迎えて(後編)

“自分とちがうことをしてるひとをうらやんだりしたけど
やっぱり僕は僕だから”──「ミルク」/槇原敬之

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松浦 この番組のキャッチフレーズにもありますが、“ふと聴いた音楽があなたの人生を大きく変えてしまうかもしれない”──それは僕自身がふと聴いた音楽、それがジャズだったわけですが、その曲がこの世界に入るきっかけをつくってくれました。最後に、谷さんのなかにも、いままでの人生のなかで自分に大きな影響をあたえてくれた音楽があれば教えてください。

 僕がすごく影響を受けたのは、槇原敬之さんの曲が多いですね。そのなかでもとくに「ミルク」って曲が好きで、おそらく20年近く聴いてるんじゃないかな。

松浦 どんなときにその曲に出会ったんですか?

 日本にいるころから耳にはしていたんですが、そこまで詞が頭のなかに入ってこなかったんです。その後パリに引っ越したんですが、当時は友達も少ないし、まだ言葉も思うようにしゃべれなかったりで、寂しい想いをした期間がすごく長かったんです。そのとき日本語の詞が頭のなかにすごく入ってきたんですね。僕はフランスに着いた次の日から仕事をするような生活をしていましたが、周りのみんなは学生ばかりで、楽しそうに学校に行って、まぁお金も余裕があったのかいろいろ買い物したりしていた。そういう子たちのなかにいる僕にはすごく寂しい想いがありました。そんな時期に聴いていた「ミルク」のなかに、“ほかのひとと比べてもしょうがない”みたいな内容の詞があったんです。それで“自分は自分だから”と励まされたというか、元気づけられたんですよね。もう一曲は、レイ・ハラカミさんの「終わりの季節」ですね。こういう電子音楽もそうですが、僕はいろんなジャンルの曲が好きなんです。変なものもいろいろ……たとえば聖飢魔IIですとか(笑)。

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松浦 それは驚きですね(笑)。「終わりの季節」も意外でしたが。

 「終わりの季節」はインターネットラジオではじめて聴いたんですが、衝撃を受けたというか、びっくりしたというか。それからは、たとえばあたらしいお店をはじめるですとか、企画を立てなきゃいけないとか、なにかインスピレーションが必要なときによく聴いています。頭のなかが活性化するというか、テンションが上がるというか。そういった曲ですね。

僕なりのセレクトであたらしい世界観を作りだしたい

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松浦 今後チャレンジしてみたいことはなにかありますか?

 いつもなにかあたらしいことはしていたいとは思っております。予定では、秋ごろにもう少しお店を広げたいなと。広げるなかにはいままで扱ってなかったようなアイテムもあらたに展開していこうかなと思っています。それは決して“優等生”というわけではない、ちょっとハズしたところで、僕なりのセレクトであたらしい世界観を作りだしたいなと思っております。

松浦 とても楽しみにしております、頑張ってください。先週につづき、『オルネ ド フォイユ』オーナー 谷 あきらさんに来ていただきました。ありがとうございました。

「インテリアショップ『オルネ ド フォイユ』オーナー 谷 あきらさんを迎えて」前編はこちら

Orne de Feuilles|オルネ ド フォイユ

Orne de Feuilles|オルネ ド フォイユ
東京都渋谷区渋谷2-3-3
営業時間|11:00~19:30
月曜定休(祝日の場合は営業)
Tel. 03-3499-0140
http://www.ornedefeuilles.com/index.html

inspiration|アンスピラシオン

inspiration|アンスピラシオン
東京都目黒区中央町1-21-9永嶋ビル1F
営業時間|金土日および祝日の11:00~19:00
Tel. 03-3716-4061
http://www.ornedefeuilles.com/inspiration

boiserie|ボワズリー

boiserie|ボワズリー
東京都目黒区鷹番1-9-9 MGハイツ1F
営業時間|金土日および祝日の12:00~19:00
Tel. 03-3716-1126
http://www.ornedefeuilles.com/boiserie

松浦俊夫『TOKYO MOON』

毎週日曜日24:00~24:30 ON AIR
Inter FM 76.1MHz

『TOKYO MOON』へのメッセージはこちらまで
moon@interfm.jp

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