『NO TRAVEL NO LIFE』VOL. 2
フォトグラファー 須田 誠 × 作家・自由人 高橋 歩
『NO TRAVEL NO LIFE』VOL. 2
旅のプロが語る旅術――
OPENERSもイチオシのフォトグラファー 須田 誠による写真集『NO TRAVEL NO LIFE』のリリース・パーティより、須田氏と、自身の世界一周旅行の体験にした「ワールド・ジャーニー」などで知られる、冒険家であり作家、そして自由人 高橋 歩氏によるトークショウの模様を、12回にわたってお伝えするオウプナーズ人間交差点の第2弾!
この2人に共通するキーワードは、まさに"旅"。いったい、どんなトークショウになるのか――。
文=金子英史(本誌)写真=Hiroko Suzuki
司会の西川たけし(以下司):そのときに、カメラを買おうと思ったキッカケは?
これで世界を撮るんだとか思ったんでしょうか。
須田 誠(以下M):ぜんぜん、なかったですね。
フォトグラファーになろうなんて、これっぽっちも思っていませんでした。
不思議な出会いというか、本当に
"必然"としか、いいようがないんです。
司:じゃあ、各国を回っている時にそのカメラの使い方を覚えたんですか?
M:そうです。
カメラをクビからさげている観光客をつかまえては、「このボタンは何?このダイヤルは何?絞りって何?」って聞きながら覚えていったんです。
途中で1回、現像してみたんですよ。
ずっとポジで撮ってたんですが、一眼レフだから凄くキレイに撮れているわけですよ。
それを見たら、
俺、けっこう写真イケるじゃん!
って思ったんです(笑)。
ちなみに、これは旅から日本に戻って来てからの話だけど、撮った写真をコンテストに出したんですよ。そうしたら佳作だったんだけど入賞しちゃったんですね。
で、
やっぱ、俺、写真イケるじゃん!!
って、さらにカンちがいしてちゃって(笑)。
それで、個展をやりはじめたんですよ。
最初は、キャビネ版の額に入れて5枚飾るくらいの小さいカフェでやっていたんですけど、だんだんといろんな人に見せたいと思いはじめて、で、やっぱり写真集も出したいなと思ったんです。
司:でも、最初はいろんな出版社をまわったけれど、断られつづけたんですよね?
M:そうなんです。
司:この『NO TRAVEL, NO LIFE』にいきつくまで、かなり長い期間だったんですよね?
M:95年に日本に戻ってからは、小さい写真展をいくつもやって、そのたびにフライヤーをつくって各出版社に送っていたわけですよ。あと、紹介してもらった芸能人とか作家さんにも送ったり。
でも、僕は無名だし、しかも小さい作品を5枚くらいしか飾ってないような写真展に、出版社の人とか芸能人が来るわけもないんですよ。
これが、
アラーキーとか篠山紀信だったら来るんでしょうけどね。
「須田 誠って誰じゃ!?」と(笑)。
そんなことを何回も繰り返しやっていたときに、ある友だちが旅の本を書いている"高橋 歩"という人がいることを教えてくれたんです。
僕は、そのとき、まだ彼を知らなかったんだけど、彼のホームページを見たら……歩くんは昔からトーク・イベントをやっているんですが、そのイベントで東京に来ることが書いてあったんですね。
これはドンピシャだから、「ぜひ、写真展に来てほしいです」ってメールを出したら、すぐにレスがかえって来たんで、こっちはかなりビックリですよ(笑)。
彼は、僕のホームページで写真を見てくれて、動物的感覚で「この写真はいい!」って思ってくれたらしく、「ぜひ、A-Worksで何かのカタチでからみましょう!」って。
もう、「2日後くらいには本を出版しましょう!」ぐらいの勢いのメールを返信してくれたわけですよ。
いままで9年間、どこの出版社も見向きもしてくれなかったのに、彼はたったの2日間で決めてくれたんです。
おそらく、それが歩くんのセンスなんでしょうね。
「東京にA-Worksの編集部があるから、その編集の人を行かせます」って返事をいただいて、そのときに来た人が、今回の本『NO TRAVEL, NO LIFE』の編集をやってくれた、いまの副社長の滝本洋平さんだったんです。
それは、恵比寿の東京都写真美術館のカフェで展示をやったときに来てくれたんですが、彼は写真を見て、「ぜひ、いっしょに作品をつくりましょう!」という話になったんですよ。
司:いろいろと過程があると思うんですが、その「出しましょう!」という話から約2年半かかったんですよね?
M:そうなんですよ。
最初、「これはすぐ出版できるかな」って思いましたけど、会社っていうのもあるし、タイミングっていうのもあるし。どういう方向性でいくのかとか、打ち合わせを何度も重ねて、それが積み重なって2年半もかかったという感じですね。
ただの旅本とか、写真集にだけにはしたくなかったんです。
その間に、歩くんの本の「パパ・BOOK」の撮りおろしとか、「WORLD JOURNEY」に写真を提供したりしていたんですよ。
司:この本『NO TRAVEL, NO LIFE』のなかで、いちばんこだわった点はありますか?
M:この本はこだわりだらけです。いっちゃえば、全部ですね。
しかも、今回はコンセプト的なメッセージを隠してあるんです。
メッセージを書かずに書いたというか。皆さんの想像力の部分をのこしてあるので、
心で読んでもらいたい本なんです。
僕が「こうだよ」っていったことをそのまま受け取るだけでもいいんだけど、自分で考えて、解釈して、好きなように読み解いてほしいんです。
司:ということは、1回読んでおしまいという本じゃないんですね?
M:そう!
いろんな所に仕掛けを隠してあるので、ぜひその仕掛けを見つけ出してほしいんです。
「あ!これか!!」って気付いたときに、ガーン! ってやられると思いますよ。
もちろん、どこにあるかは教えられないですけど。
司:じゃあ、どこで引っかかるかは、じっくりと何度も読まないと分からないわけですね?
M:それは、もう
みなさんしだいですよ。
写真も1枚でグッと来るものもあれば、2ページの見開きで来るものもあるし。
数ページ単位でメッセージがある部分もあれば、1冊でメッセージ伝えている部分もある。
だから、いまサッと読むんじゃなくて、1年か2年、もしくは5年後10年後に読んでもらって、そのときどきのメッセージを受け取ってもらえればいいなぁって思っています。
須田 誠プロフィール
34歳のとき、10年間のサラリーマン生活で築いた地位・安定・守りを全て捨て、呼ばれるように世界放浪の旅に出る。その旅の途中、安く売られていた一眼レフを手に入れ、旅人たちに使い方を聞きながら独学で写真を撮り始める。
写真は自分自身であり、旅そのものでもあり遊びの一環でもある。2004年夏、東京都写真美術館内のカフェにて写真展を開催し好評を博す。現在までに31カ国を旅し、人物を中心に撮影している旅人・フォトグラファー。
2007年4月19日『NO TRAVEL, NO LIFE』言葉&写真集でデビュー。
・TRAVEL FREAK
http://www.travelfreak.jp/
『NO TRAVEL, NO LIFE』
写真・文 須田 誠
発行・発売:A-Works
定価:1,680円(税込)
ISBN978-4-902256-08-6
On Sale!!
【オフィシャルサイト】
http://www.a-works.gr.jp/ntnl/