戸田恵子×植木 豪|ラストライブから“BGコンビ”あらたな出発
Lounge
2015年3月12日

戸田恵子×植木 豪|ラストライブから“BGコンビ”あらたな出発

東京・六本木 スイートベイジル STB 139でのラストライブ

戸田恵子×植木 豪“BGコンビ”あらたな出発(1)

5月25日、東京・六本木のライブレストラン「スイートベイジルSTB 139」が営業を休止。15年の歴史に幕を下ろした。過去12回この場所でライブをおこなってきた戸田恵子さんは、“東京のホームグラウンド”へ餞(はなむけ)を贈るべく、一夜限りのラストライブを敢行。これに際し制作された植木 豪さんとのデザインユニット「BG BRAND(BG ブランド)」の新作について聞くとともに、ホームでの最後のステージを振り返る。

Photographs by JAMANDFIX
Text by FUJITA Mayu(OPENERS)

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新作テーマは“アメカジ” 広がりをみせるデザインの可能性

戸田恵子|植木 豪

「少し痩せましたか?」 そう聞くと、いつもの柔らかい笑顔で「やつれたのかも(笑)?」と冗談めかしてみせる植木さん。以前より表情が締まったように見えるのは、自身が演出を務めた舞台『WASABEATS』の公演を終えたあとも、Panicrew(パニクルー)のライブをはじめ、パフォーマンスに明け暮れる日々をこなしてきたからか。自身が“やつれた”と笑うその顔からは充実の色が見て取れる。「いま、すごい踊ってて、最悪なジャズダンスを! みんな笑ってくれます(笑)」。聞くと、現在はまた新たな舞台の稽古中だという。

普段はそれぞれの場所で活躍する女優の戸田恵子さんとダンサーの植木 豪さんによるデザインプロジェクト「BGブランド」。年に二度おこなわれる戸田さんのカジュアルライブと、エンターテイメントを通じてダウン症のある若者たちの自立支援をおこなう「ラブジャンクス」のために、2007年よりアパレルグッズの制作を続けている。今回発売された新作は、これからの季節にぴったりのカジュアルなTシャツ。ECサイト「rumors」にて販売中である。ここで“BGコンビ”にデザインのポイントについて聞いた。


――デザインのイメージは?

戸田 袖や襟ぐりが配色になっているボディ、“リンガータイプ”っていうんだけど、これを一度やってみたかったの。アメカジがいままた注目されているしね。今回はこのボディをベースに、豪くんにデザインをお願いしました。

植木 中央のグラフィックは“アメカジ”というキーワードからカレッジっぽい雰囲気にと思い、紋章をイメージしてデザインしました。これならカレッジでもポップになりすぎず、大人っぽく着れるかなって。これまで登場した「BGブランド」のアイコンモチーフをレイアウトしつつ、ロープやボーダーを組み合わせて夏らしいマリンテイストに仕上げました。色数も多く、ホワイトが効いているぶん、グレータイプのほうがよりマリンな印象かもね。

戸田恵子|植木 豪

戸田恵子|植木 豪

――同じデザインだけど、色によって表情が全然ちがいますね。

戸田 グレーとボルドーの組み合わせは最初から決めていたの。この配色、私のなかでアメカジのイメージなんだよね。ブラックのほうも、グラフィックのホワイトをはっきり発色させようか考えたけど、ちょっと野暮かなって。いっそブラック×ブラックでもいいぐらい。でも、それではあまりにわかりにくいから濃いグレーに。ダメージっぽく色を入れることでユーズドの空気感を意識しました。

植木 ブラックの方は今日の姉さんみたいにワントーンのコーディネイトでシンプルに着てもらいたいな(上方写真参照)。僕はもともと、姉さんからのリクエストをベースにデザインをはじめるんだけど、最近は周囲からアイデアを提案されたりするんですよ。「つぎはこんなのやってみたら?」ってね。僕らのアイテムをカタチにしてくれる工場の方たちも積極的に参加してくれたり、年々デザインの幅が広がっています。

戸田恵子|植木 豪

戸田恵子|植木 豪

――次回作の構想は?

戸田 やりたいことはたくさんある。“大人ロック”というコンセプトはブレずに、いろいろトライしていきたいな。いまはラブジャンクスのダンス発表会のためにリストバンドと、サプライズでキャップを作ってプレゼントしようと思っています。

植木 僕は先日の舞台でグッズを作りました。作った、というより作らされている感じですけどね(笑)。自分が座長を務めた舞台もそうだし、パニクルーのグッズもデザインしています。姉さん、つぎはストールなんかどう?

戸田 ストールなら1年中使えるし、いいかも。そういった小物もまた作りたいですね。

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東京・六本木 スイートベイジル STB 139でのラストライブ

戸田恵子×植木 豪“BGコンビ”あらたな出発(2)

“私のために歌ってほしい”パニクルーの名曲『バスケットボール』を披露

前回

ふたりにお会いしたのは2月のこと。その時も「スイートベイジルSTB 139」でおこなわれたカジュアルライブの話を聞きつつ、これに合わせて発表した「BG ブランド」の新作について語ってもらったのだ。それからわずか4カ月、いつもよりずいぶん短いスパンでの公演について問うと、戸田さんが“東京のホームグラウンド”と呼ぶ「スイートベイジルSTB 139」の休館、そのために一夜限りのラストライブをおこなったことを話してくれた。


――今回は急遽ライブをおこなうことになったのですか?

戸田 急遽ってほどではないけど、休館については1月のライブの時にはもう聞いていたのかな。あの場所に所縁のあるアーティストはたくさんいて、もちろん、みんながみんなラストライブをできるわけではない。そんななか有難いことにベイジルさんから声をかけていただいて、じゃあスケジュールが合えばぜひ、と。ただ私もスケジュールが決まっていたし、ベイジルさんもすでに他のアーティストたちが日程を抑えていたから、その間を縫って……というわけで平日の夜、一回だけの公演になりました。ちょっと無茶なところもあったけど、やることに意義があったから、よかったなって。

植木 

姉さん休館のこと知ってたんですか? 僕は知らなくて。下の者には情報が降りてこなかったから……(笑)。

戸田恵子|植木 豪

戸田恵子|植木 豪

――ラストライブを意識したセットリストに?

戸田 

なに下の者って(笑)。内容はいろいろ考えたけど、最後だから特別に、ということでなく、むしろいつも通りにできたらいいなと。これまでさまざまなジャンルを歌わせてもらってきたけど、全部あの場所に置いていきたいなと思って。だから、ジャズあり、演歌あり、J POPあり、もちろん自分のオリジナルも。そういうわけで、スタイルはとくに変えませんでした。ただ豪くんには最後ということで、パニクルーの曲のなかでもお気に入りの『BASKET BALL(バスケットボール)』を歌ってもらいました。

――ご自身の曲を歌われるのは珍しいですね。

植木 2002年の曲ですね。以前、姉さんがパニクルーのライブにゲスト出演したときは歌ってもらったんだよね。ただ、あの曲は掛け合いとかもあってひとりでは歌えないから、メンバーのYOHEYくんに来てもらってふたりで歌いました。Queen(クイーン)の『We Will Rock You』をサンプリングしているので初めての方でも聴きやすかったんじゃないかな。ダンスナンバーではないので、先にふたりでダンスして、それから歌に。

戸田恵子|植木 豪

戸田恵子|植木 豪

戸田 豪くんと出会った頃、それまでパニクルーがリリースした楽曲を持ってきてくれたんだけど、そのなかで最初にひっかかったのがこの曲。ほかにもいい曲はたくさんあるけど、とくにお気に入りだったし、歌詞の内容もぴったりだから、今回“私のために歌ってほしい”とリクエストしました(笑)。

植木 バスケをやられていた作曲家さんがグラウンドで過ごした仲間との日々や別れを書いた曲で、バスケってストリートなスポーツだし、僕らの雰囲気にあっているということでいただいたんです。それぞれの理由で別れてしまうけど、いつかまたここに戻ってこよう、という内容なんですけど、先日デビュー15周年を記念して“10年後のバスケットボール”をテーマに新曲『威風堂々~十年後のBASKET BALL~』をリリースしました。

――今回ゲストはいらしたんですか?

戸田 ブラザー・トムさんが来てくれました。先日トムさんのアルバムに『恋におぼれて』というデュエット曲で参加させていただいたんです。だから次回のライブはぜひトムさんにと思っていたら、たまたまラストライブになってしまったという。この曲、作曲は久保田利伸さんなんですけど、とにかくセクシーな歌なんです……もう今世紀最大に(笑)。

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東京・六本木 スイートベイジル STB 139でのラストライブ

戸田恵子×植木 豪“BGコンビ”あらたな出発(3)

ゲストのブラザー・トムさんと『恋におぼれて』をデュエット

――どういう経緯でアルバムに参加することに?

戸田 トムさんにはNHK連続テレビ小説『純情きらり』で初めてお会いしたんですけど、同じシーンが頻繁にあるわけでもなく。その後ちょいちょいバラエティ番組でお会いするくらいで、連絡先も知らなかった。それでよく声をかけたなとも思うんですけど(笑)。トムさんいわく、普通の歌い手さんではなくセクシーなカテゴリを“表現できる”ひと、アクトレスとして。そういうひとを求めていた、と。それが私かどうかはわからないけど、バラエティ番組で久々ご一緒した際に「いた!」と思ったんだよって。後日サンプルを聴かせてもらったら、えらいセクシーな曲だなぁ……と(笑)。

戸田恵子|植木 豪

戸田恵子|植木 豪

――レコーディングはいかがでしたか?

戸田 別々に録って、あとで編集するのが普通なんだけど、トムさんが一発でいこうって。うまくいかないところがあっても気にしないでそのままいく、みたいな(笑)。とにかく雰囲気重視で、アドリブも全部その場で入れて。

植木 一発録り!? あり得ないですね(笑)。

戸田 そう(笑)。大人の楽しみ方というか、細かいことに目くじらを立てない。互いに顔を見ながら、表情や息遣いを意識して歌うというのは新鮮でした。

――今回のライブでは『恋におぼれて』を歌われたんですね?

戸田 トムさんは同じアルバムに収録されている『Big Blue Balloon』という曲をお一人で、そのあと『恋におぼれて』をデュエットしました。レコーディング同様、ステージもアドリブ満載。歌いだしで離れて、だんだん互いに近寄り、最後は私の腰を抱いて歌われていました(笑)。瞬間的にその場を楽しめるんですよね。性格的なこともあるだろうけど、ブレない芯があって、確かな実力があるから遊ぶことができるんだろうな。

――トムさんの印象は?

植木 僕は今回はじめてお会いしたんですけど、カブれて(笑)洋楽ばかり聴いて育った僕が、唯一歌っていたのがトムさんの曲でした。少しお話しただけでもわかりますよね、あの陽気な雰囲気(笑)。姉さんの言うような、山のように大きな存在感もね。

戸田恵子|植木 豪

戸田恵子|植木 豪

戸田恵子|植木 豪

戸田 ゲストで私のドレスの色を聞いてくださった方ははじめてでした。ジョークを交えて何気なくメールしてくださって。イケてるなと思いましたね(笑)。私のように急いで、ヘコんで、あくせく生きる人間からすると、トムさんのような……そういう意味では豪くんもそうだけど、動じない、影響されない感じというか、マイペースでスローな生き方に惹かれるんですよね。トムさんはライブでよく、“歌わなきゃいけない歌がある”ということを言うんだけど、残さなきゃいけないもの、伝えるべきテーマとか。そういう気持ちや生き方ってかっこいいし、仕事していて気持ちがいいよね。

――いつもより短いスパンでの公演となりましたが、年内ライブの予定は?

戸田 本来は秋ぐらいを予定していたんですけどね。年末には舞台があるから、年内はどうだろう? 東京での拠点はこれから探そうと思います。いくつか候補があるから、何度かトライしてみようかなと。その都度グッズも新作を作っていくので、楽しみにしていてください。

――ありがとうございました。

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