POGGY’S FILTER|vol.14  Sneakersnstuff(SNS) エリック・ファーガリンドさん、ペーター・ヨンソンさん

左からペーター・ヨンソン氏、エリック・ファーガリンド氏、POGGY氏

FASHION / MEN
2020年2月29日

POGGY’S FILTER|vol.14 Sneakersnstuff(SNS) エリック・ファーガリンドさん、ペーター・ヨンソンさん

その国や土地の文化をミックスするSNSの店づくり

POGGY 僕が一番最初に衝撃を受けたスニーカーショップが、2001年に初めて行った、ニューヨークのAlife Rivington Club(エーライフ・リヴィントン・クラブ=ARC)で。さっき二人も言ってたけど、昔はスニーカーってスポーツ用品店のイメージだったのが、ARCでは木の什器を使って、高級な感じでスニーカーがディスプレイされていることにすごく驚いた。

ペーター ARCは世界で一番クールなお店だったね。

POGGY SNSも家具の上にスニーカーをディスプレイするというコンセプトでやっていますね。

エリック 最初にSNSを始めた時は、普通に壁に靴をディスプレイしていたんだ。2002年か2003年にストックホルムの同じストリートの、もう少し大きな場所に移転した後、レトロスニーカーのブームがあって。普通のスポーツ用品店でもルックス重視のスニーカーが売られるようになって、僕らとラインナップがさほど変わらなくなってしまった。何か他と違うことをしなければと気付いて、お店を家のようにしてみることにしたんだ。店内をリビングルームに見立てて、ソファやテーブルを置いて、そこにスニーカーをディスプレイした。靴は壁にディスプレイされているものという固定概念を崩したんだ。お客さんにとってはそのほうが商品を手に取りやすいし、リテーラーとしての視点から言っても、店の真ん中のテーブルに置くほうが理にかなっていた。それからもいろいろと変化していって、現在の姿になったんだ。今はロンドンのお店をオープンした時にジョインしてくれた、インテリアデザイナーのジェニーと一緒に内装を考えているよ。

POGGY ジェニーがチームに加わったことで、さらにどう変わりましたか?
エリック ロンドンで僕たちが苦戦を強いられたのは、新しいお店をいかに長い歴史があるように見せるかということだったんだ。ストックホルムでは30年間、お店をやっていたけど、ロンドンでは新しい存在だったからね。ジェニーはユニークな角度からSNSを表現してくれて、SNSを単なる店ではなく、人間のように扱ったんだ。

ペーター まるで、旅する人間のようにね。

エリック そう。僕とペーターのミックスのような人間。旅行好きで、アートもファッションも好き。オートクチュールやハイファッションを着るわけじゃないけど、心地良い音楽と美味しい食べ物が好きで。新しい土地に移転する時って、自分が住んでいるアパートやライフスタイル全体を持って行くことは出来ないけど、その代わりにハートに一番近い部分を持って行って、そこにその土地らしいものを加える。それが、それぞれの国で新しいお店を作るときにやっている、僕たちのアプローチのやり方なんだ。スウェーデンのデザインや伝統的なものに、その国や土地の文化をミックスする。スウェーデンっぽすぎるのもダメで、その土地っぽくあることが重要。東京なら東京らしさ、ニューヨークならニューヨークらしく。東京とニューヨークが僕たちに一番影響を与えてくれた街だから、恩返しじゃないけど、そこから一歩先に進んだものを提供したいと思っているよ。

POGGY 自分がSNSを初めて知ったのは、2014年にSNSがPUMA(プーマ)の「Suede」のコラボレーションモデルを手がけた時で。北欧のテキスタイルブランドの素材を使って、それを日本製のプーマでやってましたよね? その頃も面白い別注モデルはたくさんあったけど、そこに自分たちの文化を入れていくというのが他には無かったから、SNSがやったことは新鮮だし、素晴らしいなと思って。
ペーター あれは、とても楽しいプロジェクトだったよ。僕たちはずっと日本のプーマのファンで。「Suede」が誕生したのが1968年で、70年代後半にはユーゴスラビア製のモデルが誕生して。ユーゴスラビアが戦争中に、日本の誰かがその金型を買ったことで、日本でスウェードが作られるようになって。日本製の「Suede」は「Clyde」のようにワイドフィットなんだけど、アッパーは小さくて。僕らのスニーカーはそれをベースにしたんだ。テキスタイルをスウェーデンを代表するブランドの10-gruppen(ティオグルッペン)にデザインしてもらって。ティオグルッペンは1970年代から活動している人たちで、彼らのプロダクトはスウェーデンではアイコニックな存在なんだ。僕らのクリエイティブディレクターのヨハンが彼らの一人と知り合って。オリジナルの10人のデザイナーのうち、3人しかもう残っていなかったけど、彼らにこのプロジェクトのことや日本の工場の素晴らしさや特徴などを話して、3つのデザインパターンを作ってもらったんだ。

エリック その時が、ちょうどSNSの15周年でもあって。僕らはスニーカーの世界ではすでに化石だと思っていたけど、70年代から活動している彼らに比べたらまだまだ。彼らみたいに、ファッション業界で長く活躍している人たちへのオマージュでもあったんだ。

ペーター 年上の人は尊敬しなければならないからね。

エリック 本当に、あれは美しいプロジェクトだったと思うよ。

POGGY あと、SNSはオンラインショップの立ち上げも早かったね。

ペーター インターネットが生まれる前からやってたよ。

一同 (笑)
ペーター 最初はインターネットの掲示板からスタートして、50人ぐらいの小さいコミュニティだった。台湾、ニューヨーク、いろんな国のスニーカー好きと知り合ったよ。彼らとは20年ぐらい交流しているけど、実際に会ったことのない人たちもいる。

エリック ウェブサイトを持つメリットは、買ってくれる人に実際に会わなくても靴を売れるということだと思ってた。スポーツショップで働いていたスニーカー好きの僕らが、見た目重視のアイテムを売るSNSをオープンして。それでオンラインサイトも始めて、まだ20歳そこらの子どもだった僕らは、これで世界中の人たちに見つけてもらえるって思ったんだ。

ペーター 「安上がりじゃん!」って思ってたよね。店舗も要らないし、写真を撮ってアップすればいいだけだって。実際は全然そうじゃなかったけどね。

エリック 僕もペーターもプログラミングを知らなかったからね(笑)。逆にウェブサイトを作るために、お金がかかってしまった。未だに作り方なんて分かってないよ。

ペーター 今はたくさんの人たちが僕たちと仕事をしてくれているからね。僕たちより遥かに頭が良い人たちとね。
エリック 僕もペーターもリテール(小売り)出身で、SNSの最初の10年間はそれがそのまま反映されていたように思う。ストックホルムの裏通りに店をオープンして、最初の11年間はウェブサイトよりも実店舗のほうが売り上げが良かった。2011年ごろになって、ようやくちゃんとウェブサイトを運営しようってなって。3Dレンダリングのシューズとか、いろんな実験もしたけど、オンラインにおいては進歩的であることは、必ずしも最善策ではないということが分かったんだ。でも、僕らは常に変革することに興味があって。新規の顧客を獲得するために、どう変えていくか? どうしたら差別化を図れるか? 新しい冒険や、どんなクレイジーなことをしようか?って。だから今回、東京に来て、カフェをオープンすることにした。どうやるかは分からないけど、とりあえずやってみようって。

POGGY 最後に「SNS TOKYO」のコンセプトを教えてください。

ペーター 3つの建物から出来ていて、ショップが2つにカフェが一つ。カフェのコンセプトはノルディックで、僕らのスウェーデン人らしさを表現したんだ。カフェの隣の建物は手作り感のある、トラディショナルでクラフト感のある内装にした。『七人の侍』や『ゴジラ』といった日本の映画もモチーフとして取り入れたりして、日本の伝統的でアイコニックな要素をスウェーデン風に解釈したんだ。もう一つの建物は近未来的なイメージで、3Dプリンターを駆使したりしている。日本の漫画からもヒントを得ているよ。

エリック 僕らなりの日本の解釈だね。日本には美しいお寺がたくさんあったり、豊かな伝統やヘリテージがある。かと思えば、ロボットレストランみたいなお店もある。未来と伝統が織り交ぜられた日本をスウェーデン風に表現したんだ。

※カフェは3月末オープン予定
SNEAKERSNSTUFF TOKYO (SNS TOKYO)
住所|東京都渋谷区代官山町13−1 ログロード代官山 2号棟、3号棟、4号棟
営業時間|11:00-20:00(無休)
TEL|03-6868-8801
URL|www.sneakersnstuff.com
INSTAGRAM|@Sneakersnstuff.tokyo, @sneakersnstuff
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