TOTOギャラリー・間|建築家・乾久美子「小さな風景からの学び」展
TOTOギャラリー・間|乾久美子+東京藝術大学 乾久美子研究室
200以上の市町村で取材した、1万8000枚の写真を分類
建築家・乾久美子「小さな風景からの学び」展 開催
建築家・乾久美子氏と、自身が教鞭を執る東京藝術大学・乾久美子研究室の学生によっておこなわれた都市リサーチの研究の成果を紹介する展覧会「小さな風景からの学び 」が、4月18日(金)~6月21日(土)まで、東京・南青山のTOTOギャラリー・間にて開催される。
Text by OKADA Kazuyuki(OPENERS)
「気になる」風景に共通する言葉とは
建築家・乾久美子氏は近年の活動として、建築家・伊東豊雄氏らとともに陸前高田の「みんなの家」(2012年)の設計に参画。第13回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展では、このプロジェクト建設のドキュメント「ここに、建築は、可能か」を出展。社会に向けた建築への取り組みが高く評価され、パヴィリオン賞(金獅子賞)を受賞した。
現在では、宮崎県延岡駅周辺の整備プロジェクトや、宮城県七ヶ浜町と岩手県釜石市における学校建築のプロジェクトなどが進行中だ。乾氏は、こうした人の集まる場所の「公共」のあり方を探る中で、日本の風景の多様性を再認識。人が自然に引きつけられる「場所の魅力」についてのリサーチを、始めるきっかけになったという。
「小さな風景からの学び」と題された本展では、乾氏のほか、研究室の学生や、乾久美子建築設計事務所のスタッフがおこなったリサーチ研究の成果を紹介。半年以上の時間をかけ、延べ45都道府県、約200を超える市区町村を取材。写真に納めた風景写真は、約1万8000枚にもおよぶという。会場ではその中から約2000枚の写真を類型学的に分類し、178ユニットの写真群として紹介する。
乾氏は、本展覧会のコンセプトについて次のように語る。「半年以上かけて、学生やスタッフと共に『小さな風景』を撮影することを繰り返してきました。気になる風景があればとにかく撮影し、毎週のように持ち寄り、分類し続けたのです。『気になる』などというといかにも適当な感じがしますが、人は、そうした言葉にならないぐらいの感情の動きで空間の魅力を判断しているのではないかと考えてみたのです。
最終的に大量の写真が集まりました。『気になる』という、撮影者の気持ちがよくわかる風景ばかりです。見るものを誘い込むような魅力にあふれ、擬人化したくなる表情の豊かさがあります。しかし、撮影されてきた対象物は大きくバラツキがあり、共通する『何か』は簡単には見えてきません。最終的に見つかったのは、『サービス』という言葉でした。生態学で使われるこの言葉を写真の中の風景の評価に適用すれば、そこから何かが学べるのではないかと考えました」
この企画展にあわせ、4月24日(木)東京・港区の建築会館ホールで、乾氏による講演会が開催される。こちらに参加できるのは、4月6日(日)までに申し込みした方の中から、抽選で選ばれた350名のみ。また、展覧会にあわせた書籍『小さな風景からの学び──さまざまなサービスの表情』も、4月17日(木)に発売予定だ。このリサーチがこれからの建築のあり方を考える、何かきっかけを与えてくれるのではないだろうか。
乾久美子+東京藝術大学 乾久美子研究室 展──小さな風景からの学び
little spaces Kumiko Inui + Tokyo University of the Arts Inui Lab
会期|2014年4月18日(金)~6月21日(土)
時間|11:00~18:00
休館日|日曜日・月曜日・祝日
入場料|無料
会場|TOTOギャラリー・間
東京都港区南青山1-24-3 TOTO乃木坂ビル3F
調査メンバー|東京藝術大学乾久美子研究室/乾久美子建築設計事務所
主催|TOTOギャラリー・間
企画|TOTOギャラリー・間 運営委員会
Tel. 03-3402-1010
www.toto.co.jp/gallerma/
乾久美子講演会「小さな風景からの学び」
日時|2014年4月24日(木)
17:30開場、18:30開演、20:30終演(予定)
会場|建築会館ホール
東京都港区芝5-26-20
定員|350名
参加費|無料
参加方法|申込期間内にウェブサイトより申し込み
www.toto.co.jp/gallerma/
申込期間|2014年2月24日(月)~4月6日(日)
抽選の上、2014年4月16日(水)までに結果を連絡
書籍『小さな風景からの学び──さまざまなサービスの表情』
乾久美子+東京藝術大学 乾久美子研究室
発売日|2014年4月17日(木)
B5判変型(175×252mm)、ソフトカバー240頁
発行|TOTO出版
Tel. 03-3402-7138
www.toto.co.jp/publishing/