妥協せず、大量生産もしない

これまでに発見された世界最大のダイヤモンドの名前を冠された「カリナン」は、究極のオフローダーとして、また、オンロードにおいてもロールス・ロイスの名にふさわしい乗り心地と走りを提供しているという。

「SUV市場に進出するに際しても、価格面で妥協したり、また平凡なラグジュアリーを提供したりして、大量生産するつもりは一切ありせん。新しいSUVのベンチマークとなるのがカリナンです」と定義づけるのは、同社アジア太平洋リージョナルディレクターのポール・ハリス氏だ。

ロールス・ロイスのラインナップの中では、これまでと変わらずフラッグシップは「ファントム」で続いて「ゴースト」、また、「印象的で刺激的な自由な時間を楽しませてくれる「ドーン」と「レイス」」とは別の「感情の琴線に触れる第3のラインとしてカリナンがあります」と述べる。

ユーザー層についてハリス氏は、「ほかよりも目立ちたく、若く多忙で活動的で社会的な人で、アウトドアを愛する。家族を大切にし、現代的な生活を送りつつ、フットワークは軽くスポーツ好きな人です」という。

オン・オフの両方で魔法のじゅうたんを実現

ロールス・ロイスが目指す“魔法のじゅうたんのような乗り心地”をカリナンはオンロード、オフロードともに実現しているという。重要なカギとなったのがファントムから採用された“アーキテクチャー オブ ラグジュアリー”だ。この新型軽量アーキテクチャーと最新型自動レベリング式エアサスペンションを採用することで可能としたのだ。

これは、既存のエアサスペンションに、オフロード走行における路面からの衝撃を緩和する大型エアストラットを追加。また、車体と車輪の動きのデータとカメラによる視覚情報を毎秒数百万回のデータ処理を行いサスペンションの制御を行っている。そして、ロールスロイス初の四輪駆動が採用された。

エンジンはロールスロイス製V型12気筒6,750ccで、最高出力571ps、最大トルク850Nmを発生。最大トルクは1,600回転から供給されるので、低回転から十分な加速を得ることができる。

トランスミッションは8段サテライトATを採用。GPSを使ってギアボックスが前方の道路状況を読み最適なシフトポジションを選ぶという。

デザインの特徴はDバック

デザインについて、カリナン商品企画マネージャーのジョン・シアーズ氏は、お客様からの声として、「存在感があり、なおかつレイスやドーンと違い、もう少し男性的なデザインが望まれていました」と述べる。その結果、スピリット オブ エクスタシィはこれまでのロールス・ロイス中で最も高い位置に存在している。

カリナンの最も特徴的なデザインは、SUVでありながら3ボックスデザインを採用したことだ。Dバックと呼ばれるそれは、戦前のロールスロイスによく見られた、車外にスーツケースなどを背負わせた様子からインスパイアされたもので、リアウインドウ下端から後ろ側にさらに膨らみを持たせている。シアーズ氏は、「グランドツアラー時代のオマージュとして、これを現代的な解釈としています。それによってユニークなサイドプロポーションとなっているのです」と説明した。

ドアはロールス・ロイスの4ドアの定番となるコーチドアを採用。「これがなければロールス・ロイスではないでしょう」とシアーズ氏はいう。

パワフルなエクステリアとは対照的にインテリアは非常にラグジュアリーで成熟性のある雰囲気を醸し出している。リアシートではベンチタイプのラウンジシートとセパレートタイプのインディビジュアルシートの2種類がある。ラウンジシートはよりファミリー向けで、トランクやリアドアポケットの操作ボタンを押すことで、自動で折り畳みが可能だ。

一方インディビジュアルシートは、ガラス製パーテーションにより座席とリアコンパートメントを分割。これにより遮音性を高めるだけでなく、ラゲージからの熱気や冷気が車内に入ることを防ぎ、快適な室内環境を保つ効果ももたらしている。

若く新しいユーザーが増えた結果

現在ロールス・ロイスのユーザーはどんどん若返っているという。そういうユーザーの要望からカリナンは誕生した。

「若くて新しいお客様の世代は、ロールス・ロイスに対してラグジュアリーにプラスしてSUVの多目的で実用的なところを求めています。そういうお客様は家族がいたり、いろいろな所へ出かけたりするので、機能にプラスしてもともとロールスロイスが持っているラグジュアリー感のあるクルマが欲しい、という要望に応えるかたちで出来上がったのです」と説明。

そういった声は長らくあったことを踏まえ、「本物のロールス・ロイス、つまりオンロードカーとしてそのカテゴリーをリードし、オフロードでもお客様の期待に応えるクルマでなければいけないので、時間をかけてじっくりと作り上げました」と述べ、2015年のSUV開発発表以来時間がかかったことを明かした。