370psを発生する3リッター直列6気筒エンジン

モデルチェンジを機に「1シリーズ」から「2シリーズ」へと名称を変えたBMWのコンパクトクーペ。昨年2月に日本にも上陸した同モデルをベースに、BMW M社が手がけたスポーツモデル「M2 クーペ」がついに追加される。

現在の2シリーズ クーペには、すでに同社がエンジニアリングをほどこしたトップグレード「M235i」があり国内でも販売されているが、Mの名を冠する他シリーズのラインナップ「M3セダン／M4クーペ」「M5セダン」「M6クーペ」と同様に、今回の「M2」こそが、サーキットを主眼に本格スポーツ走行を極めた真打ちということになる。

搭載するのは、最高出力272kW（370ps）/6,500rpm、最大トルク465Nm/1,400-5,560rpmを発生する3リッター直列6気筒エンジン。オーバーブースト機能で一時的にプラス35Nmの500Nmを得ることもできる。ピストンなど一部パーツを兄貴分にあたるM3セダンやM4クーペから貰い受けたユニットは、ツインスクロールターボ、高精度インジェクション、ダブルVANOS、バルブトロニックを採用する、Mツインパワーターボテクノロジー搭載の最新のもの。

さらに、サーキットでの激しい加減速や強い横Gでもエンジンの性能を落とさないため、オイルサンプのカバー形状に工夫をこらし、エクストラの吸入口を設けるなど対策がほどこされる。

トランスミッションは、ブリッピング機能のついた6段MT、もしくは7段デュアルクラッチのM DCTを用意。M DCTには、オーバーステア時に体勢を立て直すためにクラッチを瞬間的に切断したり、トルコンATのようなクリープをつくりだす機能をもった「ドライブロジック」が与えられる。さらに、低速走行時にホイールスピンを許す、スモーキーバーンアウトも搭載している。

0-100km/加速性能は、ローンチコントロール付のM DCTで4.3秒、6段MTは4.5秒。最高速度は250km/hでリミッター動作するが、Mドライバーズパッケージを装着すると、制限は270km/hに引き上げられる。

これだけのスポーツ走行に特化したエンジンをもちながら、オートスタートストップやブレーキエネルギー回収システムなどを標準採用することで、6MTの燃費は8.5ℓ/100km（およそ11.8km/ℓ）、M DCTでは7.9ℓ/100km（12.7km/ℓ）を誇る。

サスペンションはM3／M4譲り

リアアクスルには、マルチプレートLSDを電子制御することでトラクションとスタビリティをつねに最適化する「アクティブ Mディファレンシャル」を搭載。ダイナミックスタビリティコントロール（DSC）がステアリングの切れ角、アクセル開度、ブレーキ力、エンジントルク、タイヤの回転速度、ヨー（コーナリング時に車両が横に回転しようとする力）などを総合的に判断して、左右のトルク配分を0-100パーセントのあいだで変更する。走行中に片輪がトラクションを失う兆候がみられると、即座に配分バランスを計算し、モーターを駆動して最大2,500Nmものちからで150ms以内にロック制御をおこない、車両の安定性をたもつ。

サスペンションは、M3セダンやM4クーペ譲りの、軽量かつ高い剛性をもつアルミ製。また足もとは、Mダブルスポークデザインの19インチアルミホイールに、前245/35ZR19、後265/35R19のミシュラン パイロット スーパースポーツ タイヤを履く。ブレーキは、フロントφ380mm、リアφ370mmのMコンパウンド ベンチレーテッド ディスクが奢られる。

ほかのMモデル同様、M2クーペはサーキット専用車両ではない。歩行者検知機能付の衝突回避・被害軽減ブレーキやレーン ディパーチャー ウォーニング（車線逸脱警告システム）をふくんだドライビング アシスタンス機能をはじめ、リアビューカメラなどをオプションで用意する。また、Connected Driveを通じて多数のアプリケーションを利用することもでき、たとえばGoProアプリではサーキット走行における、速度、横G、縦G、エンジン回転数、ギア、ステアリング角度、アクセル開度、燃費を記録してあとで時系列に再生し、運転の解析に役立てることができる。

先代の1シリーズ クーペにも、「M135i」とはべつに、過去のミッドシップスポーツカーとの混同を避けて“M1”ではなく「1シリーズ Mクーペ」と名付けられたモデルが本国には存在していたものの、残念ながら日本への導入は見送られていた。今回のM2クーペはその直接の後継モデルとなるが、いまや数少ないコンパクトFRスポーツクーペの上陸を期待したい。

BMW M2 Coupe｜ビーエムダブリュー M2 クーペ
ボディサイズ｜全長 4,468 × 全幅 1,854 × 全高1,410 mm
ホイールベース｜2,693 mm
トレッド前/後｜1,579 / 1,601 mm
重量｜（6MT）1,495 kg、（M DCT）1,520 kg
エンジン｜2,979cc 直列6気筒DOHC ターボ
最高出力｜272 kW（370 ps）/6,500rpm
最大トルク｜465 Nm/1,400-5,560 rpm
（オーバーブースト時）｜500 Nm/1,450-4,750 rpm
トランスミッション｜6段MT、7段デュアルクラッチ（M DCT）
駆動方式｜FR
ブレーキ前｜φ380mm コンパウンド ベンチレーテッド ディスク
ブレーキ後｜φ370mm コンパウンド ベンチレーテッド ディスク
サスペンション 前｜ダブル ジョイント スプリング ストラット
サスペンション 後｜5リンク
タイヤ 前/後｜245/35R19 ／ 265/35R19
0-100km/h加速｜（6MT）4.5 秒、（M DCT）4.3 秒
最高速度｜250 km/h（Mドライバーズパッケージ装着時は270km/h）
最低地上高｜123 mm
トランク容量｜390 ℓ
燃費（ECE）｜（6MT）8.5 ℓ/100km（およそ11.8km/ℓ）、（M DCT）7.9 ℓ/100km（およそ12.7km/ℓ）
CO2排出量｜（6MT）199 g/km、（M DCT）185 g/km