音で伝える電動アーバン クーペ「フラクタル」|Peugeot
Peugeot Fractal|プジョー フラクタル
音で伝える電動アーバン クーペ「フラクタル」
プジョーはフランクフルトモータショーにおいて、従来の視覚や触覚にくわえ、聴覚でドライバーに情報を伝える機構を組み込んだコンセプトモデル「フラクタル」を発表する。
Text by HORIGUCHI Yoshihiro(OPENERS)
エレクトリック アーバン クーペ
フランクフルトモーターショーにおいて、プジョーが発表するのが「フラクタル」。全長3.81×全幅1.77メートル、重量1,000kgちょうどのコンパクトなボディに、フロントとリア車軸上にそれぞれモーターを配した電気自動車のコンセプトモデルだ。低重心化と前後重量配分を考えてセンタートンネルに40kWhのリチウムイオン電池を格納しており、最長で450kmもの航続距離をもつ。プジョーではこのクルマを、過密する都市交通に適した“エレクトリック アーバン クーペ”と紹介する。
モーターは前後ともに75kW(102ps)を発生し、合計で最高出力150kW(204ps)を発揮。前後モーターをそれぞれ別に回転させることができるので、たとえば全開加速時には後輪モーターのみを駆動し、100km/hを超えたあたりから徐々に前輪モーターを駆動させてゆくなど、前後の荷重配分からトラクションをつねに最適にたもち、車両の安定性と最良の電費を得ることができる。
さらに高効率をめざし、足まわりにはバリアブル グラウンド クリアランス機能の付いたエア サスペンションを採用。車高をセンターコンソールの画面上で設定できるこの機能は、たとえば高速道路では最低の7cmに設定することで空気抵抗を減らし電費を向上させ、速度が低く路面の凹凸や駐車場の出入り口など障害物の多い街中では最高の11cmまで設定ができる。
ボディデザインは、2012年に発表された「オニキス」からつづく、後半がブラックのスポーティなツートーン。この色の境目は、前開きドアのヒンジ部分にあたる。ルーフは取り外し可能で、クーペにもカブリオレにも変身可能。リアの帯状に設置されたLEDは、停止中は充電状態を示す青いインジケーターとして、走行中は赤いテールランプとして機能する。
Peugeot Fractal|プジョー フラクタル
音で伝える電動アーバン クーペのコンセプト (2)
ドライビングに聴覚を
プジョー フラクタルのコンセプトは、たんにスポーティなコミューターEVとしてではなく、最新の「208」や「308」から採用されたi-Cockpitを発展させ、未来の運転席のかたちを模索することにある。そのために盛り込まれたのが、これまでの視覚、触覚に追加して聴覚を情報としてドライバーに提供しようというもの。
聴覚でのインフォメーションを実現するデバイスとして搭載されたのが、PSAプジョーシトロエンの研究部門StelLabとフランスのスピーカーブランドFOCAL社が共同で開発した「9.1.2」サラウンドオーディオ。13個のスピーカーで9.1チャンネル オーディオとし、さらに世界初と謳うタクタイル スピーカーを2個搭載していることから、この名前が付けられている。
具体的には、フロントに3つの中高音スピーカーと2個のツィーター、そして2つのウーファーにサブウーファーを設置。リアには、2個の中音スピーカー、2つのツィーターとウーファー。いずれも、FACAL社によるリネン繊維をもちいた音の再現性が高いスピーカーが採用される。
そして、シートに内蔵されるのが2チャンネルのタクタイル スピーカー。“触覚の”を意味するタクタイルという名前どおり、低音は空気を伝達するよりも物質を通じたほうが伝わるという性質を利用し、乗員はスピーカーからの音を自らの身体通じて聴くことになる。
この最新サウンドデバイスによって、ドライバーは聴覚も周囲の情報収集に役立てることが可能となる。一例として挙げられているのがナビゲーションでの活用。ある交差点を曲がるべきシチュエーションにおいて、まだ離れている地点では正面の遠くから案内の音声が流れ、交差点に向かうにつれて音声は近づきつつ更に曲がるべき方向から聞こえる。そして、交差点にはいる頃には至近距離の曲がるべき方向から指示がでる、という。
走行中も静かすぎて歩行者や自転車等が気づかないというEV特有の問題にたいして、車外へ特別なサウンドを出す機能にもこだわり、加速中、減速中、そしてクルージング中とことなる3種類の走行音を使いわける。
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音で伝える電動アーバン クーペのコンセプト (3)
スマートウォッチとも連携
音響にこだわったフラクタルのインテリアは、講堂やレコーディングスタジオに施される吸音壁のからインスピレーションを得たもので、まるでコンサートホールのような3Dテキスタイルのホワイトレザーを基調とする。そこにブラックオークのインストルメンタルパネルやドアパネルに、オーディオのコネクター部分をイメージしたというカッパーのクロームをあしらっている。
インストルメンタルパネルには12.3インチのHDデジタルディスプレイを採用。表示内容はドライバーの好みに応じてカスタマイズできるようになっている。その上に45度をカバーするポリカーボネイト製のヘッドアップディスプレイがあり、ホログラフィックでインフォメーションを表示することで前方から視線を逸らすことなくドライバーは情報を得られるようになっている。
センターコンソールに設置された7.7インチのAMOLEDタッチスクリーンディスプレイから、車両設定やオーディオコントロールなどをおこなうことができる。また小径のステアリングには、スポークの左右、ちょうど親指のくる部分のスライドパットを備え、ここからもコントロールが可能。
また、フラクタルはサムスン製のスマートウォッチとも連携。バッテリー状態や充電時間、室内温度、そして駐車した車両の位置などを知ることができる。さらに、スマートウォッチ自体をキーとして利用し、車両に乗り込むとオーナーがプリセットした好みの設定にクーラーやオーディオを自動的に調整する機能も用意されている。
街乗りのためのコンパクトEVに、聴覚をドライビングに活かすというあたらしい発想のi-Cockpitを搭載した、プジョーの近未来的なコンセプトカー「フラクタル」は、フランクフルトモーターショーで一般公開される。