ジュネーブ現地リポート|Lamborghini
Lamborghini Veneno|ランボルギーニ ヴェネーノ
ランボルギーニのなかのランボルギーニ
ジュネーブモーターショー2013の前夜にワールドプレミアのフラッシュを浴びたランボルギーニの究極モデル「ヴェネーノ」。この世に3台のみが存在する、特別なランボルギーニを、現地から大谷達也氏がリポート。
Text by OTANI Tatsuya
Event Photographs by MOCHIZUKI Hirohiko
もうひとりの英雄
積年の宿敵であるフェラーリがあたらしいフラッグシップモデルを発表し、“新興勢力”のマクラーレンも「P1」のプロダクションモデルを公開した今年のジュネーブショーで、スーパーカー界のもうひとりのヒーローであるランボルギーニが何も手を打たないというわけにはいかなかった。
まして2013年はランボルギーニにとって創業50周年にあたる重要な年。そこで彼らが世に問うたのが、ここに紹介するヴェネーノだった。
それにしても、このエクステリアデザインは強烈だ。
よくよく見れば、ラフェラーリやP1とおなじように、ル・マン レーサーとよく似たデザインコンセプトを取り入れているものの、ヴェネーノはそれをさらに突き詰めた感が強い。たとえば、エンジンカウルに設けられた幾重ものルーバーはアヴェンタドールのデザインを発展させたものだろうが、あそこまで直線的なデザインに果たしてどれほどの空力的アドバンテージがあるかは疑問。
フロントセクションに目を向けても、ヘッドライトからチンスポイラー部までそのまま視線を下ろしていくと、パイプを半分に切ったような盛り上がりが見えるが、あれはそもそもF1でフロントタイヤ周りの乱流を打ち消すために誕生したもの。
立派なフロントカウルのあるヴェネーノには本来不要なはずで、ひょっとするとフロントブレーキの冷却に使われているのかもしれないが、レーシングイメージを際立たせるためのギミックと言われても仕方なかろう。
それでもなお、ヴェネーノには独自の世界観があり、造形としての面白さがある。デザイン上の統一感、全体のプロポーションだって悪くない。自動車の未来に夢を抱かせてくれるという意味でも大きな意義がある。だから、個人的に好みかどうかと問われたら、残念ながら「好みじゃない」と答えるしかないが、デザインとしての完成度はかなり高い。かなり腕の立つデザイナーの仕事だろう。
いっぽう、メカニズム的にはアヴェンタドールのものをほぼそのまま流用しているとの見方が一般的。エンジンはアヴェンタドールの50ps増しに相当する750ps、ボディやサスペンションにカーボンを幅広く採用してアヴェンタドールより125kgも軽い車重1,450kgを達成したというが、同社の50周年を祝う記念モデルとしてはややインパクトに欠けていると言わざるを得ない。うがった見方をすれば、メカニズムに新規性が少ないのでデザインにこだわったといえないこともない。
そうした様々な話題以上に驚かされたのが、このヴェネーノ、価格は300万ユーロ(約3億7000万円)。しかも、世界中でたった3台しか作られないにもかかわらず、その3台がすでに完売しているという。まあ、以前からあった商法とはいえ、今後スーパーカーメーカーにとってはこの手の「限定モデル・ビジネス」がますます盛んになっていくのかもしれない。