ジュネーブ現地リポート|McLaren
McLaren P1|マクラーレン P1
マクラーレン P1 ついにアンヴェール
これまでもたびたびお伝えしてきた、マクラーレンのスーパーカー「P1」が、ついにジュネーブモーターショー2013の舞台でアンヴェールされた。現地の大谷達也氏のリポートが到着!
Text by OTANI Tatsuya
Event Photographs by MOCHIZUKI Hirohiko
最高出力916馬力のスーパーカー
昨年のパリサロンでコンセプトカーが発表されたマクラーレン「P1」の量産モデルがジュネーヴショーでお目見えした。マクラーレンのロードカーとしては、現在「MP4-12C」と「MP4-12C スパイダー」が販売されているが、P1はそれにつづくシリーズ第3弾となる。
いま、MP4-12CとP1がひとつのシリーズと見なせるように記したのは、主要コンポーネンツの多くを共用しているためだが、すでに紹介されているとおり、P1のパフォーマンスはMP4-12Cを遙かに上まわる。
たとえば、先ごろアップデートを受けた2013年モデルのMP4-12Cの最高出力は625psなのにたいしてP1は916ps。最高速度はMP4-12Cの333km/hにたいして350km/hでリミッターが作動(!)。そして静止状態から300km/hまでの発進加速はMP4-12Cの26.5秒をなんと17秒でこなしてしまう。
基本はおなじ3.8リッターV8ツインターボエンジンのパフォーマンスが、どうしてここまでことなるかといえば、P1にはF1のKERSに由来するIPASと呼ばれる一種のハイブリッドシステムが用いられているからだ。
したがって、916psのパワーは持続的に発生できるわけではないが、それにしても、リアの2輪だけでこのとてつもないパワーを受け止めるには無理がある。
キーはダウンフォース
そこでマクラーレンは数々の工夫をこらして916psで2輪駆動のスーパースポーツカーを成立させようとした。
そのひとつが、ロードカーとしては異例に大きなダウンフォースである。なんと、257km/hで走行しているときに合計で600kgのダウンフォースが発生し、タイヤのグリップ力向上に役立てているのだ。
通常、ダウンフォースがない場合、コーナリング中の最大横Gは1G程度までしか到達できないが、P1ではこれを2Gまで引き上げることに成功した。その最大の理由が、この巨大なダウンフォースにあることは間違いないだろう。
さらに、P1はレースアクティブ・シャシー・コントロール(RCC)という名の新機軸を採用。これは油圧によって車高とサスペンションのスプリングレートを変化させるもので、レースモードを選ぶとスプリングレートは300パーセント増しとなり、車高も50mm低下する。こうすることで、日常的な使い勝手や快適性を損なうことなく、サーキットではレーシングカー並みのパフォーマンスを発揮することが可能となったのだ。
MP4-12Cより贅沢なカーボンモノコック
なお、P1のモノコックは基本的にMP4-12Cとおなじモールドによるカーボンファイバー・コンポジット製だが、P1ではこれとおなじモノコックに、モールド製法よりはるかに手間のかかるプリプレグによるオートクレーヴ製法でつくられたロールケージ部分を組み合わせ、コクピットはより強固に守られている。
駆動系は基本的にMP4-12Cのものを流用。ブレーキはマクラーレンF1チームのテクニカルパートナーである曙ブレーキが手がけたカーボンセラミックブレーキを装着しているが、これは制動力がただ強力なだけでなく、ディスク表面を鏡面仕上げとすることで見た目の美しさにもこだわっている。
今後のマクラーレンを予感させるエモーショナルなデザイン
ポール・ステファンソン率いるマクラーレンのデザインチームが仕上げたエクステリアは、美しくて均整がとれていながらも「どこか退屈」と指摘されることが少なくなかったMP4-12Cとは対照的で、無駄がないなかにもエモーショナルなデザインに仕上げられている。