フェラーリプロサングエに北イタリアで試乗──快適性と多用途性を兼ね備えたオールラウンドスーパーカー|Ferrari
CAR / IMPRESSION
2023年4月5日

フェラーリプロサングエに北イタリアで試乗──快適性と多用途性を兼ね備えたオールラウンドスーパーカー|Ferrari

徹底的に磨き上げられたエアロダイナミクス

フェラーリ史上最も広いキャビンを誇る4ドアボディは、全長4,973mm、全幅2,028mm、そしてホイールベースは3,018mm。フェラーリ初の4シーター・4WDモデルとして人気を博したGTC4ルッソよりもひと回り大きい。
全高は、SUVタイプのモデルとしては圧倒的に低い1,589mmだが、それでも、GTC4ルッソよりも200mmも高い。
そんなこともあり、たとえフェラーリ自身が謳わなくても、やはりプロサングエは「フェラーリ初のSUV」なのだろう、と筆者も感じていた。
ところが今回、初めて同車のステアリングを握り、認識を新たにした。同じくV12エンジンをミッドフロントに搭載するフェラーリに「812スーパーファスト」があるが、まさにその流れを汲む、紛れもないスポーツカーだったからだ。
さて、試乗の拠点となるホテルのエントランスには、鮮やかなレッドとブルーのメタリックにペイントされたプロサングエが並べられ、ガラス張りのファサードが印象的なシックな佇まいのウィンターリゾートに、華やかな雰囲気を添えていた。
従来のフェラーリより明らかに車高が高く、全長も長いが、クーペのような流麗なフォルムとバランスのとれたプロポーションゆえ、実際のサイズよりかなりコンパクトに引き締まって見える。
「私たちはこのモデルをベルリネッタ(スポーツクーペ)のように仕立てようと考えました。リア・ミッドシップで彫刻のように造型された、流線型のダイナミックなベルリネッタです」
フェラーリのスタイリングセンターを率いるフラビオ・マンゾーニ氏は、試乗に先立ってプレスブリーフィングでそう語った。
確かに、ロングノーズ&セットバックしたコンパクトなキャビンが生み出すプロポーションや、アスリートの筋肉のようにしなやかに張り出したフェンダー回りなど、マラネッロ製ベルリネッタの一員であることを感じさせる、美しくもエモーショナルなスタイリングである。
一方、フロント回りには、新たなデザイン処理が取り入れられている。左右に伸びるライン状のデイタイム・ランニング・ライトの上部、ふくよかなフェンダーと一体化するように黒くくぼんだ部分が一見ヘッドライトのように見えるが、実はエアインテークなのである。
ちなみにヘッドライトは、デイタイム・ランニング・ライトより下部に、あたかもフォグランプのように控えめに埋め込まれている。
プロサングエのフロントには、かようにヘッドライトよりエアインテークがスタイリングの中心を占める斬新なデザインが施されており、それが4ドア・フル4シーターという従来のフェラーリにはないプロサングエのコンセプトを象徴しているかのようでもある。
ところで、ヘッドライト風のエアインテークから流れ込む気流は、フロントフェンダー後方に設置されたルーバーから排出さるのだが、その気流がホイールアーチ内の過剰な圧力を軽減することで、ドラッグ(空気抵抗)を低減させているのだそうだ。
「広いキャビンを確保するためのボディや、高い最低地上高など、プロサングエのプロジェクトはまったく新しい課題をエアロダイナミクス部門に突きつけました」
これはプロサングエのエアロダイナミクス プロジェクトマネージャー、ルーベンス・カラトーラ氏の言葉だが、実際、ドラッグ低減をはじめ、使い勝手や乗降性などプロサングエ特有の課題を克服すべく、何千回ものコンピューターシミュレーションや何百時間に及ぶ風洞実験を行い、エアロダイナミクスを磨き上げたという。
その成果のひとつともいえるのが、リアウィンドウにワイパーが存在しないことだろう。リアウィンドウ上部のスポイラーやウィンドウ自体のデザイン処理によりガラス表面に気流をつくることで、水滴を拭き飛ばすことができるのだ。
いわずもがな、ワイパーという付加物が存在しないことで、リアビューは抑揚のあるボディの造型がよりシンプルに際立っている。
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