“電動化”されたボルボXC60 B6 Rデザインに試乗|VOLVO
CAR / IMPRESSION
2020年11月30日

“電動化”されたボルボXC60 B6 Rデザインに試乗|VOLVO

VOLVO XC60 B6 AWD R-Design|ボルボXC60 B6 Rデザイン

“電動化”されたボルボXC60 B6 Rデザインに試乗

ボルボSUVのフラッグシップXC90と、コンパクトモデルXC40の間に位置するミドルサイズSUVのXC60。新しいパワートレーンである2リッター直4ガソリンターボエンジン+電動スーパーチャージャー+48Vマイルドハイブリッドシステムを搭載した新型XC60 B6 AWD Rデザインに試乗した。

Text & Photographs by HARA Akira

スーパーチャージャー電動化によりレスポンスの向上や実用燃費の改善を実現

新世代プラットフォームのSPA(スケーラブル・プロダクト・アーキテクチャー)を採用して日本デビューした2017年には、スタイリッシュな北欧デザインの内外装や安全機能が評価され、ドイツ御三家や日本の同クラスに属する人気SUVたちを抑えるかたちで「日本カー・オブ・ザ・イヤー2017-18」を獲得したXC60。ついでにいうと、2018年ワールド・カー・オブ・ザ・イヤーも同時に受賞している。
当初XC60のラインアップは、2リッター直4ガソリンターボのT5(254ps/350Nm)、T5+スーパーチャージャーのT6(320ps/400Nm)、T6+モーターのプラグインハイブリッドT8ツインエンジン(318ps400Nm)、2リッター直4ディーゼルターボのD4(190ps/400Nm)だった。
それらのパワートレーンは生産を効率化するための「アーキテクチャーの共有化」という観点から、直4、直5、V8などさまざまな形式を持つエンジンラインアップを直列4気筒に集約するという考えの下で設計した軽量・コンパクトなDrive-Eパワーユニットであった。
しかし同じ年、ボルボでは19年以降の新型車の「全電動化」を宣言しており、パワートレーンを順次刷新することになった。XC60においても内燃機関のみを搭載するT5、T6、D4はディスコンとなり、最新モデルでは2リッター直4ガソリンターボ+48VマイルドハイブリッドシステムのB5、B5+電動スーパーチャージャーのB6、T8はグレード名を改めたリチャージプラグインハイブリッドT8となって登場したというわけだ。
そして、試乗車のXC60 B6 AWD Rデザインのデータを見ると、搭載するD420T型2.0リッターガソリンターボエンジンは、最高出力300ps(220kW)/5,400rpm、最大トルク420Nm/2,100〜4,800Nmを発生。これにISGMと呼ばれるスターター兼発電機の48Vマイルドハイブリッドシステムが組み合わされ、加速時には10kW/3,000rpm、40Nm/2,250rpmを発生するエンジン直結のモーターとして低回転域のアシストを行う。
さらにB6では、現状のルーツ式スーパーチャージャーに変わり、48V化によって導入可能となった電動スーパーチャージャーを採用することで、レスポンス、ドライバビリティ、実用燃費の改善、ノイズ、振動、CO2排出量、エンジン重量の低減など、数々のメリットがもたらされているという。さらに今回の新型エンジンでは、ターボチャージャー、ピストン、シリンダー、同ヘッドとブロック、エンジンマウントなどにも、数々の改良が行われているのだ。
XC60 B6 AWD Rデザインのボディサイズは、全長4,690×全幅1,915×全高1,660mm、ホイールベースは2,865mmで、最低地上高は215mmを確保している。少し大きめの体躯はSUVとして使いやすいサイズ感で、ノーマルXC60ではクロームとなっているフロントグリルやルーフレール部分はブラックアウトで仕上げられ、上品なモデルが多いボルボの中では一際精悍なエクステリアを見せつけている。
18、19インチホイールを装着するB5に比べてB6のタイヤサイズは2インチ大きな255/40R21になっていて、これもそうして要因の一つになっている。インテリアも同様で、ブラックのNubuck/パーフォレーテッドファインナッパレザー製スポーツシートやメタルフィニッシュのアルミニウムパネルが、一味違うスポーティさを演出してくれている。

競合とは一線を画す静かなスポーツランナー的な走りが楽しめる

前置きが長くなったが、早速箱根のワインディングに連れ出してみよう。エンジンのスタート方法はフラッグシップのXC90などと同じで、センターコンソールにある美しいダイヤルを捻るタイプのものだ。その下にあるドライブモード選択ダイヤルも、キラキラと光る回転式のもの。一方シフトノブは、ラグジュアリーモデルではおなじみになったオレフォス社のクリスタル製ではなく、Rデザインでは専用の本革巻きのものとなる。
ドライブモードは、まずはデフォルトのコンフォートでスタート。アクセルをそっと踏みつけると、1,940kgというかなり重めのボディがスイッと加速してくれるので、「あ、これがISGMと電動スーパーチャージャーの恩恵なのだな」と気がつく。そしてスーパーチャージャーの効果は3,000rpmまでというので、通常の走り方をしている限りは加速時に常に仕事をしていることになる。
芦ノ湖スカイラインの入り口でドライブモードをダイナミックに入れ替えると、ギアが1〜2段下がり、エンジンのピックアップが鋭くなる。ここでドイツやイタリア勢だと当然のようにエキゾーストが変更され、迫力ある排気音やアフターファイヤのような音が醸成されるのだが、ボルボではそうした“音”は社会的にそぐわない、との考えによるものか、4気筒エンジンの軽快なバイブレーションが遠くから聞こえてくるだけである。
また、コーナーの入り口では、パドルでシフトダウンして、と思ったが、左手の指は虚しく空をきるだけ。“エアパドルシフト”状態になってしまう。マニュアルシフトをするためには、シフトノブを一つ手前に押し下げ、左右に動かすことでシフトアップ・ダウンを行う方式だけになっている。
足回りは、ノーマルサス比+30%のバネレートを採用したフロント・コイル、リア・コンポジットリーフのスプリング、専用モノチューブショック、強化アンチロールバー、チューンド電動パワステなどで引き締められているので、コーナーをクリアするスピードも相当高いのだが、上記の理由もあって、これまでのスポーツモデルとは一線を画した静かなスポーツランナー的な走りが楽しめるのだ。
また、3,000rpm以下、30〜160km/hの範囲内で変速動作がされない場合は、4気筒のうち1番と4番のシリンダーが停止する気筒休止を行うので、高速道路などの巡航時にはWLTPモードで2.5%〜4%の燃費の改善が望めるのは嬉しいところだ。

最高速度180km/h制限の背後にあるボルボの思想

ボルボでは、こうしたスポーツモデルでも最高速度は180km/hに制限されており、付属する2本のキーのうち1本はさらなる制限速度が設定できるケアキーが導入されているという徹底ぶりだ。
実際に試してみると、ケアキーでクルマにエントリーしたあと、車載のモニター画面上でシステムからケアキーを選んで制限速度を選ぶだけ。意外と簡単に行えた。例えばクルマを共有する家族が、10代などで経験が浅かったり逆に高齢だったりした際にはこれを利用して貸し出せば、速度超過による事故の確率を減らすことができるという考え方だ。
クルマの性能を限定してしまうことについては、特にセールス面で疑問視する声も多数挙がってきたというのだが、「たとえ一部の顧客を失うとしても、最終的に人命を救うためには自動車メーカーの権利と義務をめぐる議論の先駆者であり続けるべき」とボルボは答えている。
そして、「この考え方は、77億人の地球上のすべて人にわかってもらう必要がなく、500万人ほどの人に理解してもらえば小さな会社であるボルボはきちんと存続できるはず」と広報さんは答えてくれた。
群雄割拠のSUV市場のなかでも、独自の北欧テイストを追求するボルボらしい考え方だ。Rデザインは799万円と少し高価だが、XC60の販売が好調なのは、こうした考え方に納得できるユーザーが増えている証拠なのだろう。
問い合わせ先

ボルボ・カスタマーセンター
Tel.0120-922-662(9:00-18:00)
https://www.volvocars.com/jp

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