名前も中身も一新──トヨタの新型コンパクトモデル「ヤリス」に試乗|TOYOTA
CAR / IMPRESSION
2020年5月8日

名前も中身も一新──トヨタの新型コンパクトモデル「ヤリス」に試乗|TOYOTA

Toyota YARIS Z|トヨタ ヤリスZ

トヨタの新型コンパクトモデル「ヤリス」に試乗

フルモデルチェンジしたトヨタのコンパクトモデル「ヴィッツ」改め「ヤリス」。中身とともに名前もグローバルモデルと統一されての登場だ。販売開始から約1ヵ月で3万7,000台を受注(計画では月販7,800台)したというから、幸先の良いスターを切ったと言って良いだろう。試乗したのは、ハイブリッドと1.5リッターガソリンの2モデル。都内から千葉県富津への往復150kmのルートで、それぞれの魅力をチェックした。

Text by HARA Akira

パワフルなハイブリッドモデル

まずは、ハイブリッドの最量販モデルと目される「グレードG」(本体価格213万円)から。エクステリアは、ブラックルーフ×コーラルクリスタルシャインのツートーンボディで、丸くてコンパクトなボディながらプレミアム感も演出されていてなかなか良い感じだ。
ボディは、低重心と高剛性を徹底するためのトヨタの新しいプラットフォームTNGAの小型車向け「GA-B」を採用。サイズは全長3,940×全幅1,695×全高1,500mm、車重は1,060kgとなる。
室内は、はっきりいって前席優先のしつらえだ。横置きで幅の狭い3気筒エンジンを積んだことで広くなった足元のペダルと、小径ハンドル(約37cm)の配置が適切で、ドライバーは好みのポジションが取りやすい。手動で位置を記憶してくれる運転席イージーリターン機能も便利だ。
グッとえぐられたようなデザインのドアグリップ部分や、双眼鏡のようなデザインのメーターパネルなど、オリジナリティを重視した形状を採用した各部を見ると、広さだけを追求したコンパクトカーではないという設計者の意気込みが伝わってくる。
一方の後席は、ウインドウの面積が狭く、前席との距離が近いので閉塞感が伴うが、実際に座ってみると前席下に足先を滑り込ませるスペースが確保されているので、見た目ほど窮屈でなかったのは意外な発見だった。
搭載するパワートレーンは、最高出力67kW(91ps)/5,500rpm、最大トルク120Nm/3,800〜4,800rpmを発生する「M15A-FXE」型1.5リッター直列3気筒ガソリンエンジンと、59kW(80ps)/141Nmを発生するモーターを組み合わせた、電気式無段変速機付きのハイブリッドシステム。
先代モデルに比べて3割ほど増したパワーと軽量化されたボディ、バッテリーのリチウムイオン化など(合計先代比で約40kg軽い)のおかげで、一般道でも高速道路でも、思っていた通りとても速い。

サスペンションは硬めの設定で、段差などではコツコツと振動を伝えてくるのだが、頭まで伝わってこないので視線は一定したまま。疲れないセッティングといえる。若い頃からドイツ車に憧れを持っていたベテランドライバーなどには、かえって好ましい、と思われるかもしれない。
高速道路では、ステアリングポスト右側のツーボタンで起動するACCを使ってみた。LTA(レーントレーシングアシスト)が作動し、車線の中央をきちんと維持しながら走ってくれるので、使える状況では積極的に使用してやれば、ロングツーリングでのドライバーの負担が減るだろう。

ただし、機械式パーキングブレーキを採用したことで、追従機能が30km/h以下ではキャンセルされてしまうので、渋滞時に使えないのはちょっと残念だった。
メーターの平均燃費は31.5km/ℓを表示(WLTPモード燃費は35.8km/ℓ)。実際に給油したのは4.88リッターだったので、30.7km/ℓ!が満タン法での記録となる。36ℓの燃料タンクで計算すると、航続距離は1,000kmを超える。車体は小さくても、GTカーの素質をもったクルマだと断言したい。

スポーティなガソリンモデル

もう1台の1.5リッターガソリンエンジン搭載モデルは最上級グレードの「Z」(本体価格192万6,000円)。ブラックルーフにシアンメタリック(鮮やかなブルー)のツートーンボディという若々しいエクステリアを持つモデルだ。
フロントに横置きされるエンジンは、最高出力88kW(120ps)/6,600rpm、最大トルク145Nm/4,800〜5,200rpmを発生する「M15A-FKS」型1.5リッター直列3気筒ダイナミックフォースエンジン。燃費と高出力を両立させるため、直噴システム、ロングストローク化、ギア駆動式バランスシャフトなどを採用した1気筒当たり500ccの最新モジュールエンジンで、発進用ギアを備えた「Direct Shift-CVT」でフロント2輪を駆動する。
1,020kgと車重が軽いので、とにかく出足がいい。そして、歯車式の発進用ギアによって、車速が高まるまでエンジン音と加速感がリンクしていて、いわゆる“ラバーバンドフィール”と呼ばれるCVT特有のネガな部分が上手に消されている点が素直にうれしい。
巡航速度になると、2,000rpm以下というなるべく低い回転域を保つようになるが、再加速時には3気筒らしい音と振動とともに、望んだスピードにすぐに達する。これは、きちんと仕事をしているな、と好印象を与えてくれるCVTだ。運転中は、見やすいカラーヘッドアップディスプレイ(オプション)まで装備されていて、ドライバーの満足度は高い。
サスペンションは、試乗車が、標準(185/60R15)より1サイズアップした185/55R16という高性能タイヤを履いていたせいもあり、ハイブリッドモデルより路面の状態をストレートに伝えてくる。ただしボディの剛性感が高く、サスペンションがきちんと動いているので、ショックは一発で収まる。

一方、交差点の右左折時やコーナリング時には、ハイブリッドより軽い鼻先がスイスイと向きを変えてくれるので、ちょっとしたスポーツカーを操っているような感覚まで味わえる。
パドルシフトがあれば、ワインディングも100%満喫できるパフォーマンスがありそうで、そうした走りを最大限に望むユーザーには、別に6段MTモデルが用意されている。燃費は18.2km/ℓ(WLTCモード燃費は21.6km/ℓ)を記録した。

駐車支援機能を試す

ハイブリッドモデルには、オプション(7万7,000円)の高度駐車支援システム「アドバンストパーク(パノラミックビューモニター付き)」が搭載されていたので、広くて空いた駐車場を見つけて試してみた。
操作は簡単で、スタートはコンソールのパークスイッチを押すだけ。するとモニター画面に上空から見た駐車スペースが映し出され、入りたいところを選択する。あとは指示に従ってシフトをDとRに入れ替えるだけで、クルマ任せのステアリン操作で枠内に滑り込んでくれた。グルグルと結構な速さで回るステアリングホイールの回転トルクは強く、それを止めようとするにはかなりの力で握ってやる必要がある。
完了までの時間を測ると、通常の並列駐車で40秒、縦列駐車で60 秒ほど。縦列の際は、一度枠内に入ったのちに、少し道路寄りに位置をずらすように停め直す動きを見せてくれたのには感心した。
コンパクトモデルながら、ハイブリッドはGTカー的、ガソリンはスポーツカー的というように、パワートレーンによって異なる性格を持った新型ヤリス。カラーやオプション装備など選択肢がたくさんあって、ピタリとハマるものを見つけ出すのがとても楽しそうなクルマだと思った。
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