ポルシェ 911 カレラ GTSにカリフォルニアで試乗|Porsche
CAR / IMPRESSION
2015年4月21日

ポルシェ 911 カレラ GTSにカリフォルニアで試乗|Porsche

Porsche 911 Carrera GTS|ポルシェ 911 カレラ GTS

ポルシェ 911 カレラ GTSにカリフォルニアで試乗

ポルシェ「911S」と「GT3」の狭間を埋める中間的なモデルとして登場した「GTS」。河村康彦氏がカリフォルニア郊外のワインディングとウィロースプリングス サーキットで試乗し、GTSの一番の価値はどこにあるのかを確かめた。

Text by KAWAMURA Yasuhiko

欲張りなリクエストに応える「GTS」

「GT3」では見た目も乗り味もコンペティティブに過ぎる――そんな欲張りなリクエストにピタリと応えてくれそうなモデルが追加設定された。2014年末のロサンゼルス モーターショーでヴェールを脱いだ、「911カレラGTS」がそれだ。

GT3に準じたフロントビューを筆頭に、スモーク処理を施したヘッドライト ベゼルやセンターロック式のホイールなどで、ベースとなるカレラ系よりも精悍でスポーティな雰囲気を醸し出すカレラGTSは、クーペとカブリオレ、RWDと4WD、2ペダルと3ペダル――と、さまざまな選択肢を掛け合わせるとおもいがけずのワイドなバリエーション。ただし、この中でトランスミッションについては、日本導入モデルは“PDK”を謳う7段DCTに限定され、MT仕様の導入は見送られている。

Porsche 911 Carrera GTS|ポルシェ 911 カレラ GTS

Porsche 911 Carrera 4 GTS Cabriolet

Porsche 911 Carrera GTS|ポルシェ 911 カレラ GTS

Porsche 911 Carrera GTS

最新のGT3がPDK専用のモデルとなったいま、「シャープなレスポンスが売り物のNAエンジン搭載モデルこそ、3つのペダルで操りたい」という要求も皆無ではないはず。しかも、テストドライブの結果では、これまではミッドシップモデルが採用する6段MTにわずかに見劣りした7段MTのシフトフィールが、大きく改善されていたことが確認できたのだ。

端的に言って、この“新7段MT”の日本未導入は、なんとも残念なニュース。場合によってはオプション扱いで、たとえPDK同様の価格となってしまうとしても、これはなんとしても日本のカタログにも載せて欲しい仕様であると声を上げたい。

もう一点、そんなGTSならではのトピックが、後輪駆動モデルも含めたすべてのモデルが、リアフェンダー周辺によりグラマラスな処理が施された“ワイドボディ”を採用すること。

そんなGTSが後輪駆動モデルか4WDモデルであるかは、走り去る姿で確認ができる。4WDモデルには、従来からカレラ4系のアイコンでもある、コンビネーションランプ間を走る“ライトバー”を採用。

いっぽうの後輪駆動モデルには、この部分に光沢ブラックの“トリムストラップ”が用いられるからだ。

Porsche 911 Carrera GTS|ポルシェ 911 カレラ GTS

Porsche 911 Carrera GTS & Carrera 4 GTS

Porsche 911 Carrera GTS|ポルシェ 911 カレラ GTS

ポルシェ 911 カレラ GTSにカリフォルニアで試乗(2)

スポーティに徹したインテリア

そんなGTSのインテリアは、ベースのカレラ シリーズに対して「より軽く、よりスポーティに」が徹底されたものへと仕上げられている。インテリア素材のベースに用いられるのは、ブラックのアルカンターラ。高級感が漂い、かつ軽量でもあるという特徴を備えるこの素材は、シートの中央部やステアリングホイールのリム、ドアハンドルなどに採用されている。

ちなみに、クーペモデルに限っては、リアシートのレスオプションも設定。この場合、車両重量はカレラSグレードに対してもより軽くなるという。

Porsche 911 Carrera GTS|ポルシェ 911 カレラ GTS

Porsche 911 Carrera GTS|ポルシェ 911 カレラ GTS

さらに、GTS専用のオプションとして“GTSインテリア パッケージ”も設定。これは、室内すべての加飾ステッチやタコメーターの文字盤、シートベルトのエッジ部分などに、レッドもしくはシルバー色を用いた2トーン処理を施すものだ。

もちろん、そうは言ってもGTSの一番の価値は、そんなコスメティックの部分にあるというわけではない。カレラシリーズで最上級の走りのポテンシャルを身につけたモデルであるからこそ、そこにGTSの名が与えられているのだ。

ボディリアエンドの低い位置に搭載される3.8リッターのフラット6ユニットは、Sグレード用をベースにこれまではオプションキットとして用意されてきた複数のフラップを制御することで効率アップを図る、専用のインテークシステムを標準採用。430psという最高出力は、Sグレードに対して30psの上乗せ。いっぽう、440Nmの最大トルク値に変わりはないものの、その発生回転数が150rpmほど上にずれている点に、GTS用の心臓が「より高回転を好む」という傾向を読み取ることができる。

Porsche 911 Carrera GTS|ポルシェ 911 カレラ GTS

Porsche 911 Carrera GTS|ポルシェ 911 カレラ GTS

ポルシェ 911 カレラ GTSにカリフォルニアで試乗(3)

情感あふれるエンジンパフォーマンス

いっぽう、サスペンションの基本セッティングに関しては、Sグレードとの明確なちがいは報じられていない。ただし、後輪駆動モデルでは4WDモデル同様の“ワイドボディ”の採用に伴うリアトレッドの拡大がおこなわれたため、それを踏まえた再度のチューニングが施されているという。

ロサンゼルス近郊をベースに、サーキット走行のプログラムも含んで開催された国際試乗会では、そんなGTSの「SとGT3の狭間を埋める」というキャラクターが、なるほど鮮明に感じとれた。

Porsche 911 Carrera GTS|ポルシェ 911 カレラ GTS

Porsche 911 Carrera 4 GTS Cabriolet

Porsche 911 Carrera GTS|ポルシェ 911 カレラ GTS

Porsche 911 Carrera 4 GTS

テストドライブをおこなったのは、クーペとカブリオレの4WD PDK仕様に、クーペの後輪駆動モデルのPDK仕様とMT仕様など。そんないずれのモデルでもまず感じられたのは、そもそもパワフルそのものだったエンジンのパフォーマンスが、額面通りにさらに上乗せされているという印象だ。

さすがにGT3の、ほかに類を見ない飛びぬけたパワフルさと切れ味の鋭さと比べてしまうと、そこには明確な差が感じられる。いっぽうで、ベースであるSグレードと比較をすると、高回転域に向けての伸びの鋭さ、パワーの盛り上がり感は、こちらが明らかに上手だ。

Porsche 911 Carrera GTS|ポルシェ 911 カレラ GTS

Porsche 911 Carrera 4 GTS Cabriolet

スポーツ エグゾーストシステムを標準装備することによる巧みな“音の演出”も、そうしたエンジンの情感の豊かさをもちろん後押ししている。

中でも、ブレーキングをおこないつつのダウンシフト時に鼓膜を刺激する、軽くアフターバーンを交えたようなサウンドは、スポーツ派ドライバーにとっては堪らない歓びであるはずだ。

 

Porsche 911 Carrera GTS|ポルシェ 911 カレラ GTS

ポルシェ 911 カレラ GTSにカリフォルニアで試乗(4)

冴え渡るポルシェの商品戦略

ところで、先に紹介したようにさまざまなGTSに触れてみた結果、個人的にもっとも「らしいな」とおもえたのは、じつはクーペの後輪駆動モデルだった。

もちろん、4WDシャシーを備え、気が向けば路面を問わずにいつでもオープンエア モータリングが楽しめるカブリオレの贅沢さも捨てがたい。いっぽうで、そんな「もっともゴージャスなGTS」からすると、クーペの後輪駆動モデルはおよそ100kgも軽量。当然、専用チューニングが施されたパワフルな心臓を積んだ結果によるシャープな加速感はより冴え渡り、ボディの剛性感も遥かに上だ。

Porsche 911 Carrera GTS|ポルシェ 911 カレラ GTS

Porsche 911 Carrera GTS

Porsche 911 Carrera GTS|ポルシェ 911 カレラ GTS

Porsche 911 Carrera GTS

20インチのファットなシューズを履きこなし、自在でシャープなハンドリングの感覚を味わわせてくれる点では、「やはりこれが“1番のGTS”でしょう」と、心底そうおもわされてしまう。

ちなみに、そんなクーペの後輪駆動モデルの中には、20mmのローダウン シャシーにくわえ、フロントのスポイラーリップやより外側へと張り出したリアスポイラーの採用でダウンフォースを強化した“PASMスポーツシャシー”を装着したテスト車の用意もあった。

クーペゆえボディの剛性感が高く、振動はたちどころに減衰されてしまうので不快感はさほどではないものの、それでも正直なところ、街乗りシーンでは少々かたい感じは否めない。が、よりクルマとの一体イメージの強いハンドリング感覚など、ソリッドなテイストが溢れるその乗り味は、人によっては「これこそがGTSならでは」と受け取るかもしれない。

PDKの採用でいかに2ペダルドライビングが実現したからとはいえ、やはりGT3はあくまでも「特別な911」だ。

そんな“体育会系モデル”の雰囲気も巧みに取り入れ、カレラをベースにさまざまなスパイスを用いてよりスポーティに仕上げられたGTSは、このところ冴え渡るポルシェの商品戦略による、ひとつの頂点と言っても良いのかもしれない。

Porsche 911 Carrera GTS|ポルシェ 911 カレラ GTS

Porsche 911 Carrera GTS Cabriolet & Coupe

080507_eac_spec
Porsche 911 Carrera GTS Coupe|ポルシェ 911 カレラ GTS クーペ
ボディサイズ|全長 4,509 × 全幅 1,852 × 全高 1,295 mm
ホイールベース|2,450 mm
トレッド 前/後|1,538 / 1,560 mm
重量|1,445 kg
エンジン|3,800 cc 水平対向6気筒
最高出力| 316 kW(430 ps)/ 7,500 rpm
最大トルク|440 Nm / 5,750 rpm
トランスミッション|7段オートマチック(7PDK)
駆動方式|RWD
タイヤ 前/後|245/35ZR20 / 305/30ZR20
最高速度|304 km/h
0-100km/h加速|4.0 秒
燃費|8.7 ℓ/100km
価格|1,702 万円

Porsche 911 Carrera 4 GTS Coupé|ポルシェ 911 カレラ 4 GTS クーペ
ボディサイズ|全長 4,509 × 全幅 1,852 × 全高 1,296 mm
ホイールベース|2,450 mm
トレッド 前/後|1,538 / 1,560 mm
重量|1,490 kg
エンジン|3,800 cc 水平対向6気筒
最高出力| 316 kW(430 ps)/ 7,500 rpm
最大トルク|440 Nm / 5,750 rpm
トランスミッション|7段オートマチック(7PDK)
駆動方式|4WD
タイヤ 前/後|245/35ZR20 / 305/30ZR20
最高速度|302 km/h
0-100km/h加速|4.0 秒
燃費|9.1 ℓ/100km
価格|1,827 万円

Porsche 911 Carrera GTS Cabriolet|ポルシェ 911 カレラ GTS カブリオレ
ボディサイズ|全長 4,500 × 全幅 1,870 × 全高 1,295 mm
ホイールベース|2,450 mm
トレッド 前/後|1,538 / 1,560 mm
重量|1,515 kg
エンジン|3,800 cc 水平対向6気筒
最高出力| 316 kW(430 ps)/ 7,500 rpm
最大トルク|440 Nm / 5,750 rpm
トランスミッション|7段オートマチック(7PDK)
駆動方式|RWD
タイヤ 前/後|245/35ZR20 / 305/30ZR20
最高速度|302 km/h
0-100km/h加速|4.2 秒
燃費|8.9 ℓ/100km
価格|1,923万円

Porsche 911 Carrera 4 GTS Cabriolet|ポルシェ 911 カレラ 4 GTS カブリオレ
ボディサイズ|全長 4,509 × 全幅 1,852 × 全高 1,294 mm
ホイールベース|2,450 mm
トレッド 前/後|1,538 / 1,560 mm
重量|1,560 kg
エンジン|3,800 cc 水平対向6気筒
最高出力| 316 kW(430 ps)/ 7,500 rpm
最大トルク|440 Nm / 5,750 rpm
トランスミッション|7段オートマチック(7PDK)
駆動方式|4WD
タイヤ 前/後|245/35ZR20 / 305/30ZR20
最高速度|301 km/h
0-100km/h加速|4.2 秒
燃費|9.2 ℓ/100km
価格|2,017 万円

ポルシェ カスタマーケアセンター

0120-846-911

(9:00-18:00、年中無休)

           
Photo Gallery