新型レンジローバー スポーツに試乗|Range Rover
CAR / IMPRESSION
2015年1月5日

新型レンジローバー スポーツに試乗|Range Rover

Land Rover Range Rover Sport|ランドローバー レンジローバー スポーツ

新型レンジローバー スポーツに試乗

オールアルミニウムボディにはじまり、ダウンサイジングエンジン、そして進化したテレインレスポンスによってまったくあたらしいモデルとして生まれかわった新型「レンジローバー スポーツ」。2013年3月のニューヨーク オートショーでデビューを飾り、昨冬ついに日本へとやってきた。兄貴分の「レンジローバー」と、弟分「イヴォーク」の間に位置するこの新型レンジローバー スポーツは、果たしてどのようなキャラクターをもったクルマなのか。九島辰也氏がインプレッションをおこなった。

Text by KUSHIMA TatsuyaPhotographs by ARAKAWA Masayuki

伝統的なクラフトマンシップと最先端技術のフュージョン

「たとえば、優秀なシェフのいるレストランは食事の前から説明があります。素材はどうだとか、香りはどうだとか。それとおなじで、カタログの写真も重要な意味をもちます。シートひとつをとってみても、縫い目がしっかり仕立てられていることを伝えなくてはなりません──

新型「レンジローバー スポーツ」のカタログを見ながら、ランドローバーのインテリアデザインを担当するディビッド・サディントン氏の言葉を思いだした。昨年の東京モーターショーで新型レンジローバー スポーツについてうかがったさいのコメントだ。

彼の言いたいのはこういうことだ。新型レンジスポーツは精緻にデザインされ仕上がっている。そしてそれを上手にアピールするのも重要な仕事であると。

確かに“レンジローバー”というネーミングには魔力がある。英国の王室御用達ブランドとしても知られるそれは高貴な印象が強い。が、いっぽうでいつまでもクラシカルなイメージを伴う。つまり、カタログを筆頭とするコミュニケーションツールでは、伝統的なクラフトマンシップと最先端技術のフュージョンであることを知ってもらうのが重要なポイントとなるのだ。

ランドローバー デザインのスタジオディレクター、ディビッド・サディントン氏

Land Rover Range Rover Sport HSE

新型レンジローバースポーツにはすでに何度か乗っている。デビューは昨年のニューヨークモーターショーで、それと前後して海外では試乗を繰り返した。クローズドの飛行場で時速260キロまでの加速とそこからのフルブレーキングも体験した。これまで新型車の試乗会には何度も足を運んでいるが、それでもなかなか味わえない経験だ。

もちろん、そこには彼らの自信とこのクルマのキャラクターづけという大義がある。 レンジローバーでは成し得なかったスポーティな走りの体験を与えることで、兄弟モデルとの差別化を図ったのだ。新型ではそれが見事に実り、世界中のメディアから高い評価を得た。英国トップギア誌、アメリカのブルームバーグ・ドットコムをはじめ数かずのメディアで“SUV of the Year”に輝いている。

Range Rover Sport|レンジローバー スポーツ

新型レンジローバー スポーツに試乗 (2)

V6でもじゅうぶんすぎる。V8では圧倒的。

では、そのプロファイルだが、デザインは見事に兄弟車との関係性をにおわせる。兄レンジローバーの風格をもちながらも、弟「イヴォーク」のカジュアルでスポーティな要素も兼ねそなえた。リアピラーの角度やサイドキャラクターラインがそう感じさせる。角度によっては兄、また別の角度によっては弟にも見えなくもない。

その辺について冒頭のサディントン氏はこんなことを言っていた。「シンプルでエレガントというのが基本にあります。そこにはお客様の要望もありますが、クルマとしての機能性も重要なポイントとなります」と。

たしかに、このクルマは歴代モデルがそうであるように、直線をメインにしてつくられている。いくらエモーショナルに振ってもその辺はかわらない。そして、それがオーバーハングを短くし、前後のアングルを深くするデザインとマッチする。

エンジンは3リッターV6と5リッターV8がラインナップされる。どちらもヘッドはツインカムでスーパーチャージャーと組み合わせられる。つまり、自然吸気の5リッターV8の代わりがこのV6となる。パワーを維持しながらエンジンのダウンサイジング化がはかられたわけだ。最高出力は前者が340ps、後者が510psとなる。

ここで簡単にそのエンジンフィールをご紹介すると、もはやV6でじゅうぶんというのが素直な感想。上に大きいエンジンがあるぶんV8とくらべたくなるが、通常使いから少々スポーティな走りの範疇まで不満なく出力を発揮してくれる。アクセルの踏みしろにリニアに反応するアクセレーションはすばらしいし、高速域の安定感も突っ込みどころはない。そのときのハンドリングも軽快だし、追従する足さばきに不安を覚えることはなかった。

感覚的にはふたまわりくらい小さいサイズを動かしているようだ。しかも、背の高さすらネガティブに感じないほどである。

オートバイオグラフィ ダイナミックに搭載されるV8スーパーチャージド エンジン

それじゃV8はというと、こいつは別モノ。唸るような排気音からドーンという爆発的な加速までV6モデルとはことなる走りとなる。むかしV10を積んだアメリカ製ピックアップに試乗したことがあるが、加速感だけいえばそれにちかい。ずっと向こうの電柱がすぐそこに迫ってくるから気をつけよう。

ただ、それでも足がガチガチでないのが、さすがレンジローバーファミリー。エアサスが硬すぎず柔らかすぎない乗り心地を実現してくれる。個人的にさまざまなブランドのエアサスを乗りくらべているが、総じて英国車のそれは気持ちがいい。下が硬く上が柔らかいといった不自然さはない。

Range Rover Sport|レンジローバー スポーツ

新型レンジローバー スポーツに試乗 (3)

カタログからもあふれるつくり手のおもい

ところでいい忘れたが、新型はフレームからオールアルミ製となった。つまり、レンジローバーとある部分共有する──というか、お金のかかった骨格を得た。これまで「ディスカバリー」とフレームを共有していたこととくらべれば、これはかなりの飛躍。これで正真正銘の兄弟車になったともいえる。

そんな要素がこれまで記してきた走りにつながっているのは言わずもがな。その意味からも、見かけ以上に中身の進化は激しい。電子デバイスも多岐にわたるものが搭載されている。

それはそうと、前出のサディントン氏はこんなことも言っていた。「新型レンジローバースポーツは静止画でも動いて見えるようにデザインされた」と。

なるほどよくできている。この原稿を書くために手に取ったカタログだが、そこにはつくり手のいろいろな思惑があることをかんじた。どうです、みなさんもぜひ、このクルマのカタログをご覧になってはいかがですか?

ランドローバー インテリアデザイン担当 ディビッド・サディントン氏

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Land Rover Range Rover Sport HSE
ランドローバーレンジローバー スポーツ HSE

ボディサイズ|全長 4,855 × 全幅 1,985 × 全高 1,800 mm
ホイールベース|2,920 mm
トレッド 前/後|1,695 / 1,690 mm
重量|2,250 kg
エンジン|2,994 cc V型6気筒 スーパーチャージド
ボア×ストローク|84.5 × 89.0 mm
圧縮比|10.5
最高出力|340 ps(250 kW)/6,500
最大トルク|450 Nm(45.9 kgm)/3,500
最低地上高|210 mm
最小回転半径|6.1 メートル
トランスミッション|8段オートマチック
駆動方式|4WD
サスペンション 前/後|ダブルウィッシュボーン(エアサスペンション)/マルチリンク(エアサスペンション)
ブレーキ 前/後|ベンチレーテッドディスク
タイヤ|255/55R20
燃費(JC08モード)|8.4 km/ℓ
価格|903万円

Land Rover Range Rover Sport Autobiography Dynamic
ランドローバー レンジローバー スポーツ オートバイオグラフィ ダイナミック

ボディサイズ|全長 4,850 × 全幅 1,983 × 全高 1,780 mm
ホイールベース|2,923 mm
トレッド 前/後|1,690 / 1,685 mm
重量|2,410 kg
エンジン|4,999 cc V型8気筒 スーパーチャージド
ボア×ストローク|92.5 × 93.0 mm
圧縮比|9.5
最高出力|510 ps(375 kW)/6,500
最大トルク|625 Nm(63.8 kgm)/2,500
最低地上高|210 mm
最小回転半径|6.1 メートル
トランスミッション|副変速機付8段オートマチック
駆動方式|4WD
サスペンション 前/後|ダブルウィッシュボーン(エアサスペンション)/マルチリンク(エアサスペンション)
ブレーキ 前/後|ベンチレーテッドディスク
タイヤ|275/45R21
燃費(JC08モード)|7.3 km/ℓ
価格|1,260万円

ランドローバーコール
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