ランボルギーニのスーパーSUV、ウルスに試乗|Lamborghini
Lamborghini Urus|ランボルギーニ ウルス
ランボルギーニのスーパーSUV、ウルスに試乗
「アヴェンタドール」「ウラカン」につづくランボルギーニ第3のモデルとして2017年12月に待望のデビューを果たし、今年より日本へのデリバリーが開始されたスーパーSUV「ウルス」。多くのプレミアムブランドがSUVをリリースしている昨今においても異彩を放つ同モデルに、モータージャーナリスト大谷達也氏が試乗した。
Text by OTANI Tatsuya Photographs by ARAKAWA Masayuki
3.6秒の0-100km/h加速と305km/hの最高速度を実現
「ウルスはランボルギーニ史上初のSUVである」
もしもそう書けば、ランボルギーニ・ファンからたくさんの苦情が届くだろう。「ランボルギーニはウルス以前にもSUVを作っていた」と……。
ことの起こりは、ランボルギーニ社内で軍事用ハイパフォーマンス オフローダーの開発が始まった1970年代終盤に遡る。「チーター」と名付けられたこのモデルは量産に至らなかったものの、ランボルギーニは1981年にその進化版である「LM001」を開発。これを民生用に仕立て直したのが「LM002」で、1986年から1992年にかけて合計300台が生産された。つまり、ウルスはLM002に続く「ランボルギーニ第二のSUV」である、というわけだ。
もっとも、30年近い歳月を隔てているLM002とウルスの間に技術的な意味での関連性はほぼない。あるのは、ランボルギーニの名と、オフロード走行が可能なハイパフォーマンスカーという点だけだろう。
現代に蘇ったスーパーSUVのウルスは、650psと860Nmを生み出すV8 4.0リッター ツインターボエンジンをフロントに搭載。8段ATとトルセン式センターデフを介して4輪を駆動する。前後の足回りはマルチリンク式をベースにしたエアサスペンションで、これにアクティブ スタビライザーと4輪操舵を組み合わせ、さまざまな路面で理想のトラクション性能とハンドリング特性を実現する。
ウルスはオンロード性能にも妥協をしなかった。空力的なデザインとともにアルミを多用した軽量ボディにより、3.6秒の0-100km/h加速と305km/hの最高速度を実現。スーパーSUVとして、いや正真正銘のスーパースポーツカーとしてふさわしいパフォーマンスを手に入れたのである。
Page 2.ロールの少なさにまず驚かされる
Lamborghini Urus|ランボルギーニ ウルス
ランボルギーニのスーパーSUV、ウルスに試乗 (2)
ロールの少なさにまず驚かされる
見るからにランボルギーニといった出で立ちのウルスだが、市街地を大人しく走らせるだけなら気負いは無用だ。タンブーロ(Tamburo。イタリア語でドラムの意味)ドライブセレクターで公道用のストラーダを選択すればエアサスペンションとダンパーは適度にしなやかな設定となり、荒れた路面でも不快なショックを伝えない。基本的にはソリッドな足回りだが、強靱なボディがタイヤからの入力をしっかりと受け止め、無駄な振動を抑え込んでしまうことが、不快な印象を与えない最大の理由だろう。
ランボルギーニ初のターボエンジンもエグゾーストノイズは控えめで決してうるさくない。しかも中低速域から十分なトルクを生み出してくれるうえにレスポンスも良好なので、加減速を小刻みに繰り返すシティドライビングでも、もどかしさとは無縁。むしろ、俊敏なハンドリングと引き締まった足回りのおかけで、全長が5.1メートル、全幅が2.0メートルもあることが信じられないくらい軽快によく走る。かつて日本製の某ファミリーカーに与えられた「街の遊撃手」という言葉を思い出してしまったくらい、その走りは俊敏だ。
しかし、ウルスが本領を発揮するのは、やはり交通量の少ないワインディングロードでドライブセレクターのスポルトを選んだときだろう。そんな状況でまず驚かされるのが、ロールの少なさ。どれほどペースを上げてもボディはほとんど傾かず、どちらかといえば水平な姿勢を保ったまま深く沈み込んでいくような安定したスタンスを保つのだ。したがって着座位置の高いSUVでもまったく恐怖感を覚えないばかりか、タイヤとじっくり対話しながらのコーナリングが楽しめる。しかも、ステアリング特性はSUVにありがちのアンダーステアではなくほぼ完璧なニュートラルステアで、荷重移動とスロットルワークが完璧にあえば弱オーバーステアさえ引き出せそうな感触だった。
しかも、こういった状況でのエンジンの反応が素晴らしい。ターボエンジンゆえに中低速域のトルクが十分なことは前述したとおりだが、完璧なフラットトルクというよりは回転の上昇に伴ってトルク感を増す自然吸気に近いフィーリングで、なにかの拍子にトルクがウワッと沸き起こることもないからコントロールは容易。こうした特性も、ハードコーナリングを楽しむ際には強力な武器となってくれるだろう。
Page 3.ランボルギーニらしいスーパーSUV
Lamborghini Urus|ランボルギーニ ウルス
ランボルギーニのスーパーSUV、ウルスに試乗 (3)
ランボルギーニらしいスーパーSUV
ここまで聞いても、筋金入りのファンであれば「V8ターボでホンモノの“ランボミュージック”を奏でられるはずがない!」と主張するはず。たしかに、その点は認めなければいけない。
V12エンジンを積む「アヴェンタドール」、そしてV10エンジンを積む「ウラカン」が自然吸気のマルチシリンダーらしい高精度なメカニカルノイズと弾けるような排気音を響かせるのに対し、ウルスのサウンドはもう少しエレガントだ。
とりわけ印象的なのが、トップエンドまで引っ張ったときの流れるような音色。アヴェンタドールやウラカンがシリンダー内で起きる爆発のひとつひとつが聞き取れるくらい歯切れのいいエグゾーストノイズを聞かせるのと違って、ウルスはもっとスムーズな連続音を響かせるのだ。それでいて、マルチシリンダーの精緻な印象もしっかりと聞かせる。伝統的なランボルギーニサウンドとは異なるかもしれないが、これはこれで素晴らしい快音だと思う。
エクステリアはカウンタックに端を発するランボルギーニのワンフォルムデザインをSUVにアレンジしたもので、実に魅力的。インテリアはウラカンと共通のデザイン言語で仕上げられている。なお、リアシートはベンチタイプが標準で、試乗車のセパレートタイプはオプション。ちなみに後席のスペースは頭上こそ3cmほどの余裕しかなかったが、ひざ周りには30cm近い空間が残った(身長172cmが前後に並んで腰掛けた場合)。セパレートタイプシートの掛け心地を含め、長距離ドライブでも苦にならない居住性だ。
SUVならではの広々とした視界と室内空間、そしてスーパースポーツカーの特権というべきパフォーマンスを手に入れたウルスは、まさにランボルギーニらしいスーパーSUVといえる。
Lamborghini Urus|ランボルギーニ ウルス
ボディ|全長 5,112 × 全幅 2,016 × 全高 1,638 mm
ホイールベース|3,003 mm
トレッド 前/後|1,695 / 1,710 mm
車輛重量|2,200 kg
エンジン|3,996cc V型8気筒ツインスクロールツインターボ
最高出力| 478 kW(650 ps)/6,000 rpm
最大トルク|850 Nm/6,800 rpm
トランスミッション|8段AT
駆動方式|4WD
サスペンション 前/後|マルチリンク(アダプティブ エア)
タイヤ 前|285/45R21
タイヤ 後|315/40R21
ブレーキ 前|カーボンセラミックディスク φ440 × 40 mm
ブレーキ 後|カーボンセラミックディスク φ370 × 30 mm
最高速度|305 km/h
0-100km/h加速|3.6 秒
0-200km/h加速|12.8 秒
100-0km/h制動|33.7メートル
燃費(EC値)|12.7 ℓ/100 km(およそ7.9km/ℓ)
CO2排出量|290 g/km
最低地上高|150 - 248 mm
最小回転半径|5.9メートル
トランク容量|616 - 1,596 リッター
価格(消費税込み)|2,779万9,200円