ベントレー ベンテイガ V8に試乗|Bentley
CAR / IMPRESSION
2018年4月25日

ベントレー ベンテイガ V8に試乗|Bentley

Bentley Bentayga V8|ベントレー ベンテイガ V8

ベントレー ベンテイガ V8に試乗

分かりやすい魅力が増した、ちょっとお買い得なベンテイガ

12気筒エンジンのSUVという希有な存在であるベントレー 「ベンテイガ」だが、「コンチネンタルGT」や「フライングスパー」と同様、このたびV8モデルが追加された。「カイエン ターボ」と同様の4リッター ツインターボユニットを搭載する同モデルははたしていかなるクルマに仕上げられているのか? オーストリアで開催された国際試乗会より、モータージャーナリストの西川淳氏がリポートする。

Text by NISHIKAWA Jun

W12モデルで頂点を極めたあと気軽に選べるグレードを設定するという戦略

歴史的にみて、12気筒のSUVなんていう怪物は何台もいなかった。古くはランボルギーニ「LM002」(カウンタック用V12)なんていうミリタリー風の4WDクロスカントリーモデルもあったけれど、それ以外では、フォルクスワーゲン「トゥアレグ」(W12)とアウディ「Q7」(V12ディーゼル)の2モデルくらいしか見当たらない。

ベントレー初のSUVとして、2015年に登場した「ベンテイガ」にはW12気筒エンジンが積まれており、だからこそ一躍、キング(クイーンか?) オブ SUVの座を射止めたと言っていい。

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もっとも、もうじきV12を積んだロールスロイス「カリナン」が登場する。12気筒ではないかもしれないけれど、アストン・マーティンもSUVを開発中で、ウワサではフェラーリも真剣に検討しているらしい。ハイエンドのラグジュアリーSUV市場は、これからますます、熱くなるというわけだ。

ベントレーとしては、ライバルたちが出揃う前に、ベンテイガをもっとアピールしておきたいところ。そこで、V8グレードの追加という話になる。

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W12モデルで頂点を極めたあとは、さらに多くの新規カスタマーを獲得すべく、何かと敷居の高い12気筒エンジン搭載車だけではなくて、もう少し気軽に選べるグレードも追加で設定する、というのが最近のベントレーの基本戦略だ。「コンチネンタルGT」や「フライングスパー」は、それで成功した。

ベンテイガの場合、その実用性が最も評価されるカテゴリーだけあって、まずは4リッターのV8ディーゼルエンジン搭載車を追加した(日本未導入)。そのあとに加わったのが、今回紹介する4リッターV8ガソリン車で、さらに今年中には3リッターV6+電気モーターのPHV(プラグイン ハイブリッド)モデルが導入される予定になっている。ベントレーが、SUVのベンテイガをブランドの主軸ラインナップに育てようといかに懸命であるかが、分かるというものだ。

Bentley Bentayga V8|ベントレー ベンテイガ V8

ベントレー ベンテイガ V8に試乗

分かりやすい魅力が増した、ちょっとお買い得なベンテイガ (2)

アウディグループの大型SUVや
サルーンに使われているパワートレーンと基本設計を共有

ハナシを今回の主役、ガソリンエンジンのベンテイガV8に戻そう。

エクステリアをぱっと見ただけでは、よほどのマニアでもない限り、W12モデルとの大きな違いを見つけることは難しいだろう。コンチネンタルGTがそうであったように、フロントマスクの大小グリルが、ブラックアウトされているのが最大の特徴だと言っていい。

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もっとも、ビスポークが基本の世界だから、W12モデルを選んだ顧客が、V8のようにグリルを黒くしてほしいといえば、できるはず。なので、現実的にはエンブレムを探して見分けるほかないだろう。ちなみに、ディーゼルV8もブラックグリルだ。

内外装のデザインはW12とほぼ同じだと思っていい。注目すべきは、当然ながら、目に見えない部分=パワートレーン、ということになる。

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アウディグループの大型SUVやサルーンに使われている、4リッターV8ツインターボ+ZF製8AT+4WDのパワートレーンと基本設計を共有した。誤解のないように言っておくと、全く同じものではない。

エンジンスペックだけをみればポルシェのカイエン ターボとほとんど変わらないが、当然、ベントレーのエンジニアが、変速のリファインや、最高速の設計、オフロードモードなど、ベンテイガ専用にキャリブレーションやチューニングを施している。

Bentley Bentayga V8|ベントレー ベンテイガ V8

ベントレー ベンテイガ V8に試乗

分かりやすい魅力が増した、ちょっとお買い得なベンテイガ (3)

スポーティなベンテイガという印象

ベンテイガV8の国際試乗会は、真冬のオーストリアで行なわれた。雪がふり、凍結する路面という悪コンディションのなかで、SUVとしてのベンテイガの実力を楽しもうという趣向である。

試乗会の起点となったスキーリゾートには、雪と氷で出来たテストトラックまで用意されていた。スノー&グラスモードを選び、インストラクターの指示に従って、凍った路面で4WD車に独特の4輪ドリフトを存分に味わった。

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筆者は過去にW12のベンテイガで、瓦礫のオフロードや砂漠、サーキットを楽しんでいる。これに雪と氷の道も加わった。ベンテイガさえあれば、無敵だ。もうどこへだって行けそうな気分……。愛車だったなら、というハナシだけれど。

ウィンタータイヤを履いていた。それゆえ、街中での乗り心地には、いくぶんか柔らかめのタッチを感じたものだが、速度にのってからのライドフィールは相変わらず重厚そのもので、W12との違いをさほど感じない。実際、重量差はエンジンまわりの50kg(単体で25kg)でしかなく、2.5トン前後の巨体にあって、そう変わらないということだろう。アシ回りのセッティングも変わっていない。

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とはいえ、ゼロ発進からの出足の鋭さと、ダイレクトかつ軽快に動くようになった前アシ、そして抑制は効いているけれども明らかに野太くハツラツとしたV8サウンド、といった明らかな違いもあり、それゆえ、スポーティなベンテイガという印象をもつ。

そういった、W12とは異なる印象が、ベンテイガの魅力を損なっているかというと、そうではない。むしろ、分かりやすい魅力が増した、ということもできる。

ちょっとだけお買い得なベンテイガ。V8エンジン搭載による個性が気にならないというのであれば、何も12気筒に乗る必要はないと思う。

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Bentley Bentayga V8|ベントレー ベンテイガ V8
ボディサイズ|全長 5,140 × 全幅 1,998 × 全高 1,742 mm
ホイールベース|2,995 mm
重量(EU)|2,395 kg(5シーター)
エンジン|4.0リッター V型8気筒 ツインターボ
最高出力| 404 kW(550 ps)/ 6,000 rpm
最大トルク|770 Nm / 1,960-4,500 rpm
トランスミッション|8段AT
駆動方式|4WD(前40:後60)
サスペンション 前|4リンク ダブルウィッシュボーン式エアサスペンション
サスペンション 後|トラペゾイダル マルチリンク式エアサスペンション
ブレーキ 前|400mm ベンチレーテッドディスク
ブレーキ 後|380mm ベンチレーテッドディスク
タイヤ|275/50R20
最小回転半径|6.2 メートル
トランク容量|484-1,774 リットル
0-100km/h加速|4.5 秒
最高速度|290 km/h
燃費(EU複合)|11.4 ℓ/100km(およそ8.8 km/ℓ)
CO2排出量|260 g/km
(燃費は型式認定申請中のため暫定値)

問い合わせ先

ベントレーコール

0120-97-7797

           
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