新型Sクラスに試乗|Mercedes-Benz
Mercedes-benz S Class|メルセデス・ベンツ Sクラス
Mercedes-AMG S 63 4MATIC|メルセデスAMG S 63 4マティック
見た目よりも中身が大きく変わった
新型Sクラスに試乗
2013年に登場したメルセデスの現行「Sクラス」がマイナーチェンジを迎えた。見た目こそ大きな変化は見られないものの、ダウンサイジングが進んだエンジンを始め多くのパーツが刷新されているという。フラッグシップシップたるに相応しく、最新の電子デバイスを用いたドライバーアシストやセーフティ機能を備えるSクラスに、小川フミオ氏が試乗して、その進化のほどを確かめた。
Text by OGAWA Fumio
ダウンサイジングしたV8エンジン
メルセデス・ベンツのフラッグシップ、「Sクラス」がビッグチェンジを受けた。2013年に発表された現行モデルとしては初の大きな変更になる。
Sクラスは1972年に初代が登場。当時はSクラスの「S」にあたるスーパー(Super)メルセデスともよばれた。
スーパーであるだけにSクラスには頂点の技術が詰まっている。昨今では最高の技術を先進的安全技術とか運転支援技術と解釈してしまうと、最新モデルが最も有利となる。
そんな状況はメルセデスの開発者の頭痛の種かもしれないが(本人たちは認めていない)2017年夏の変更で、Sクラスはトップモデルにふさわしい技術的内容を手に入れた。
通常フルモデルチェンジに対してモデルライフの途中で実施される変更はマイナーチェンジと呼ばれる。しかし今回のSクラスではマイナーでなくあえてビッグといいたいぐらい、大きな変更が実施された。
なにしろ6,500の部品を新しくしたとメルセデスではいう。なかでも注目はエンジンだ。クルマで最も重要な、人間でいえばハートにあたるような部分である。
今回のビッグチェンジで、新しいエンジンが多く用意された。それが大きなニュースである。ひとつはガソリンとディーゼルがある3リッターの直列6気筒エンジン。
ストレートシックスは日本に当面入ってこないので、話を日本で人気が高いというV型8気筒にしぼろう。従来の4.7リッター(S 550)に対して新型では4.0リッターとなった(欧州でのモデル名はS 560)。
排気量が下がっておそらく燃費効率もよくなっているいっぽう、パワーは335kW(455ps)から345kW(469ps)にあがっている(700Nmの最大トルクは不変)。
「もっとも燃費のいいV8エンジン」とメルセデスのエンジニアが胸をはるこのエンジンは気筒休止システムを備えている。最高出力と最大トルクはかなりのものだが、いっぽうで効率をしっかり追求している点で、最先端のエンジンといえるだろう。
燃費は100キロ走るのに8.5リッターの燃料消費率(欧州値)。単純に日本でおなじみの燃費表示に切り替えるとリッターあたり約11.8キロとなる。
新しい8気筒エンジンは期待を裏切らない。
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見た目よりも中身が大きく変わった
新型Sクラスに試乗 (2)
ふたつの異なった要素がほぼ完璧に両立
メルセデス・ベンツが2017年夏に試乗会を開いた新しいSクラス。新開発の3,982cc V8搭載のS 560はじつによく走る。
Sクラスの市場のなかでもとりわけ日本ではV8エンジンの人気は根強いそうだ。太い低回転域のトルクによる加速感と、低音域がたっぷりと混ざった排気音のファンが多いのだ。
S 560は期待を裏切らない(はずだ)。低回転域からのトルクは太く。2,000rpmまででほぼ満足できる走りを味わわせてくれる。
同時に乗り心地はよく、路面の凹凸はすべてサスペンション システムが上手に吸収して乗員が不快な思いをすることは皆無だ。
Sクラスはステレオカメラによって路面の状態をチェックし、エアサスペンションの硬さを調整するシステムをデビューのときから搭載していた。
新しいSクラスはカメラの性能を向上させ、いままでより速い速度域(時速180キロ)までこの機能が働くようになったそうだ。さらにカーブを通過するときの車体のロールをコントロールするシステムも採用された。
メルセデスではこれらの技術を衛星ナビゲーションと組み合わせ、カーブの通過時もよりフラットな姿勢を保つようにしている(ドイツを中心とした欧州での話)。
メルセデス車でいつも感心するのはふたつの異なった要素がほぼ完璧に両立していることだ。乗り心地はいいのに、カーブでの身のこなしは抜群。正確なステアリングと安定した車体の動きで、速度やカーブの大きさにほとんど関係なく自信をもってドライブが出来る。
S 560は9段オートマチック変速機を与えられた。ふだんは高めのギアで燃費をかせぐが、カーブなどで有効なトルクバンドを維持するためのギア選択はみごとだ。出口に向けて加速するときの力強さには感心させられる。
同時に乗ったのはメルセデスAMGのS 63 4MATICである。こちらも4リッターV8エンジンをあらたに搭載。従来の5.5リッターV8の代わりなので、ダウンサイジング化が進んでいるのだ。
いっぽうで最高出力は従来の5.6リッターの430kW(585ps)より上がって450kW(612ps)に。900Nmの最大トルクは不変。実際に超ド級のパワーだ。
とにかく速い。ロングボディだと全長5.3メートルにおよぶ車体でも、まるで小型スポーツセダンのように振り回せる。1971年からメルセデスの大型セダンでレースをしてきたAMGのノウハウがたっぷり詰まっているのだ。
小ぶりでグリップの感触のよいステアリングホイールを握り、ホールド性のよいシートにからだをあずけてアクセルペダルを踏むと、車両は猛然とダッシュする。そのときの剛性感は頂点のSクラスならではというかんじだ。
Mercedes-benz S Class|メルセデス・ベンツ Sクラス
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見た目よりも中身が大きく変わった
新型Sクラスに試乗 (3)
快適装備を統合してコントロール
新しいメルセデス・ベンツSクラスは先進的安全性もトップクラスといえる。ステレオカメラとレーダーを使い、先方の車両のみならず横方向からの車両やひととの積極も可能なかぎり回避する。
おもしろかったのは、試乗会場でのデモストレーションだ。横方向から車両を模したダミーが飛び出してきた際、ぎりぎりでブレーキング。
それで衝突が回避でき、しかも前方が空いていたら車両はすかさず加速に移るのだ。あるいはステアリングホイール操作にコンピューターが介入することもある。
衝突を操舵で回避して、そのあとふたたび加速。ようするにそこでモタモタせず、つねに前進。日本だととりあえず完全停止させそうだけれど、メルセデスは先に進む。考えかたの違いを感じたのだ。
ドイツでは衛星ナビと運転支援システムを連動させている。コーナーにさしかかると減速し、サスペンションの硬さを調整してロール角をコントロール。ハイビームにしていてもコーナーの手前で光量をしぼったりする。
メルセデスの技術者がもうひとつさかんにデモストレーションをしたのは、オート パーキング システムだ。縦列駐車と車庫入れはボタン一つでできる。
欧州ではパーキングスペースに頭から突っ込むのがよく見る駐車の仕方だと思うが、日本で一般的なバックしながらの駐車も必要があるのだろうか。欧州人は(ふだんやらないだけに)不得意なので嬉しいかもしれない。
室内空間の快適性は、じつは新しいSクラスの大きな特徴とされている「エナジャイジング コンフォート コントロール」と名づけられた新システムは、ひとことでいうと、快適装備を統合してコントロールするもの。
空調、アロマ、音楽、照明、シートのヒーターやクーラーや、さらにシート内藏のバイブレーターなどSクラスに備わった快適装備は多い。それを6つのキーワードで動かすのだ。
たとえば「バイタリティ」を選択すると、ドライバーに元気を与えるとメルセデスが考える車内環境に10分間だけ変わる。
音源のなかからBPMの速い曲が選択され、車内照明のアンビエントライトが(たしか)赤色系に。逆に「リラックス」ではゆったりと。
試乗だと忙しくて、こういうことはじっくり味わえないのが残念だ。とりわけSクラスではオプションのファーストクラスパッケージをはじめ後席の環境がさまざまに選べるのだけれど、それはオーナーになれる日までの楽しみにとっておこう。そんな日は絶対にこないかもしれないけれど。
メルセデスコール
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