日本に上陸したレンジローバー イヴォーク コンバーチブルに試乗|Range Rover
Land Rover Range Rover Evoque Convertible|ランドローバー レンジローバー イヴォーク コンバーチブル
日本に上陸したレンジローバー イヴォーク コンバーチブルに試乗
気分を楽しくさせてくれるクルマ
2012年のジュネーブモーターショーでコンセプトカーとして発表された「レンジローバー イヴォーク コンバーチブル」。2015年には本国で正式デビューを果たし、約1年をの時を経て日本に上陸した同モデルにさっそく試乗した。
Text by OGAWA FumioPhotographs by ARAKAWA Masayuki
いまだかつてなかったSUV
フルオープンのレンジローバー「イヴォーク コンバーチブル」が、2016年9月に日本で受注開始された。スタイリッシュなSUVとして唯一無二の存在感を誇っていたイヴォークに、さらにもう一つ、明確なキャラクターが印象的なモデルが加わったことになる。
レンジローバー イヴォークは2008年に発表されたモデル。4WDの高級リムジンとも言われるレンジローバーとは一線を画し、全長4.3メートルのコンパクトなボディを持っている。街乗りにもストレスなく使える実用性が評価されているのだ。いっぽうでスタイリングが大きな魅力である。小さくまとめられた(ように見える)グラスハウスが20インチのリムを持つ大径ホイールを持つボディと組み合わされたプロファイルは発表から8年たった今でも美しさを失っていない。(モデルによっては17~19インチリムもある)
今回追加されたイヴォーク コンバーチブルは、スタイリッシュなSUVというラインナップを補完する役割が大きい。こちらのオシャレっぷりも特筆ものだからだ。フルオープンにすると美しい内装も外観の一部になる。こんな演出効果を持つSUVはいまだかつてなかっただろう。いっぽうで幌を上げたときのスタイルもよい。クーペ的でありながら、さらにコンバーチブル独特のかっこよさがあるのだ。このモデルをまとめあげたチームの手腕はたいしたものだ。
エンジンは2リッター4気筒ターボで、「イヴォーク(4ドア)」や「イヴォーク クーペ」と共通だ。悪路などのためのウルトラ ロー ファースト ギアを組み込んだ9段オートマチック変速機と、オンデマンド型4WDシステムを備えている。4WDシステムは低負荷時は前輪駆動であり、路面の状況などにより電子制御で4WD化する。後輪に適切なトルク配分をするのに要する時間は0.3秒だという。
シャシーはオープン化によって剛性確保のために補強が入っているが、基本的にはメタルトップモデルと共用。2,660mmのホイールベースも同一だ。組み合わされるサスペンションシステムは前後独立懸架方式で、フロントがマクファーソン ストラット、リアがマルチリンクである。
イヴォーク コンバーチブルのボディサイズはクーペに近い。全長で30mm延長され、全高で50mm高くなっているだけだ。4人の大人がちゃんと乗れるパッケージングが確保されている。重量はフロアなどの補強や、4つのモーターをはじめとする幌開閉のメカニズムを組み込んでいる分増加しており2,020kg。イヴォーク(4ドア)より230kg重い。
イヴォーク コンバーチブルは、では、ファッショナブルなスタイルがセリングポイントのニッチねらいのプロダクトなのか。実際はまったくそんなことはない。走りも堪能できるのだ。
Land Rover Range Rover Evoque Convertible|ランドローバー レンジローバー イヴォーク コンバーチブル
日本に上陸したレンジローバー イヴォーク コンバーチブに試乗
気分を楽しくさせてくれるクルマ(2)
意外なほどきびきびと走る
イヴォーク コンバーチブルのエンジンは1,998cc 4気筒ターボ。最高出力は177kW(240ps)/5,500rpm、最大トルクは340Nm/1,750rpm。ほかのイヴォーク モデルと共通だ。そうなるとイヴォーク(4ドア)に対して230kgの重量増はネガティブな影響をもたらすのではないか。加えてそもそもフルオープン化でボディ剛性は低下していないのかという懸念もでてくるかもしれない。
はたしてイヴォーク コンバチーブルに乗ると、重量増にまつわるさまざまな懸念は取り越し苦労だったことが分かる。つまりごく低回転域から最大トルクを発生するエンジンの恩恵と、ボディコントロールの技術が見事に手と手をとりあって、素晴らしい操縦性を実現しているのである。
エンジンのキャラクターはごく低回転域から太いトルクを出す設定だ。1,500rpmあたりでもりもりという感じでトルクが盛り上がってくるのを感じ、2,000rpmで日本の法定速度に達してしまう。まるでディーゼルエンジンのようだが回転マナーのスムーズさはガソリンのよさがちゃんとある。
サスペンションシステムはロールを効果的に抑えてくれている。加えてステアリングホイールの微妙な切れ角に対しての車体の反応は予想以上に鋭い。ゆえに意外なほどきびきびと走らせることができるのだ。
ボディの剛性感も高く、どんな道でも、またストレートだろうがカーブだろうが、ステアリングがブレるようなことはない。びしっとしている。オープンで走ったほうがよりボディの重心高が下がりスポーティな印象が強くなるような気もするのだけれど、ソフトトップを開けていようが閉めていようが、軽快なフットワークの印象は変わらない。
当初からの開発計画にこのコンバーチブルモデルも予定されていたというだけあって、まことにしっかりした作りなのだ。オフロードを走るために自動的に変速やサスペンションの減衰力を調整するテレインレスポンスなどの装備も搭載されている。
内外装でも注目すべきよさがある。
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日本に上陸したレンジローバー イヴォーク コンバーチブに試乗
気分を楽しくさせてくれるクルマ (3)
ほかに類がない運転感覚が魅力
イヴォーク コンバーチブルは爽快なモデルだ。ひとつには48km/hまでなら21秒で開閉できる電動ホロをオープン状態にしての走行時。サイドウィンドウも全部下げての“正しい”状態で走った際でも、前席乗員は風の巻き込みの影響をほとんど受けない。ウィンドシールドの高さは比較的低めで、しかも角度も大きく倒されていないと思うが、それでも風の流れは上手にコントロールされている。
SUVだけに着座位置は高め。そんな視点のオープン ドライビングを経験したのは個人的にはかつてのメルセデス「Gクラス カブリオレ」とランドローバー「ディフェンダー」、それにジープ「ラングラー」ぐらいだ。どれもクロスカントリー型4WDだったため、スポーティクーペのような走りを味わわせてくれるイヴォーク コンバーチブルは一線を画している。他に類がない運転感覚はこのクルマの魅力だ。
乗り心地もけっして悪くなく、2トンをやや超えるボディの重さがうまく作用している。落ち着いているというよりしなやかという感じの乗り味で高級感すらある。イヴォーク コンバーチブルはニッチ(すきま)マーケットを狙ったキワモノではない。予想以上に全方位的によく出来ている。僕はかなり感心してしまった。
イヴォークは(レンジローバーにならって)外装と内装ともにカラースキーム、つまり色づかいがまことに魅力的なモデルだ。洗練された微妙な色合いの外装色が用意されていることに加え、おりに触れてルーフとボディの色を変えたカラーコンビネーションを持つ特別仕様車が登場する。これらがとてもぜいたくな雰囲気を与えてくれていた。
すべてのピラーをブラックアウトしたフローティングタイプのルーフというスタイリングのコンセプトが上屋(キャビン)の存在をあまり強く意識させず軽快感を生んでいた。それになじんでいたせいもあるのだろう。僕はコンバーチブルにまったく違和感を感じなかった。
厚いクッションを持つソフトトップの色は(おそらく)ブラックのみ。レッドやブルーなど最近のコンバーチブルは幌の色で変化をつけるモデルもあるけれど、個人的には黒色のソフトトップはより好ましい。“クルマはオープンであるべき”という英国の伝統的な考え方を受け継いでいるように思えるからだ。モダンなスタイルのイヴォークに、古典的なクルマの美学が結びついているのは、例えるなら新素材で作った伝統的なテールコートのような魅力というべきか。ライフスタイルを新しく変えていく試みは、伝統と革新のバランスの上に成り立つということが、イヴォーク コンバーチブルからよく理解できる。
内装の素材やカラーの組み合わせの豊富さはイヴォークの特長であるとは書いたとおりだ。コンバーチブルではオープンにすれば、内装ですら外装の一部とすることができる。ダッシュボード、それにシート自体のカラーコンビネーションは豊富で、華やかなコンビネーションもあれば、シックなものもある。美しい内装を“見せびらかせる”クルマはそうそうないので、これを楽しまない手はないと思う。
さまざまな先進的安全装備も備わる。車線逸脱防止のための警告装置、先行車自動追従アダプティブ クルーズ コントロール、ステアリングホイール連動型アダプティブLEDヘッドランプ、死角にいる隣の車線の車両の存在を教えるブラインド スポット モニター、縦列駐車や並列駐車のためのアドバンスト パーク アシスト、バーズ アイ ビューを使ったサラウンド カメラ システムといった具合だ。
気分を楽しくさせてくれるクルマである。
Land Rover Range Rover Evoque Convertible
ランドローバー レンジローバー イヴォーク コンバーチブル
ボディサイズ|全長 4,385 × 全幅 1,900 × 全高 1,650 mm
ホイールベース|2,660 mm
トレッド前/後|1,625 / 1,630 mm
車両重量|2,020 kg
エンジン|1,998cc 直列4気筒ターボチャージャー付き
最高出力|177 kW(240 ps)/5,500 rpm
最大トルク|340 Nm(34.7 kgm)/1,750 rpm
トランスミッション|9段AT
駆動方式|4WD
最高速度|209 km/h
0-100km/h加速|8.6 秒
JC08モード燃費|9.6 km/ℓ
最低値上高|210mm
最小回転半径|5.5メートル
価格|765万円
ランドローバーコール
0120-18-5568(9:00-18:00、土日祝日を除く)
http://www.landrover.co.jp/