日本に上陸した新型メルセデス・ベンツEクラスに試乗|Mercedes-Benz
Mercedes Benz E Class|メルセデス・ベンツ Eクラス
日本に上陸した新型メルセデス・ベンツEクラスに試乗
メルセデスならではの走りと革新的技術の融合
最新技術による運転支援システムを多数搭載してデビューした新型Eクラス。新たなる時代に飛躍することを目指して開発された同モデルに、さっそく日本の路上で試乗した。
Text by OGAWA FumioPhotographs by ARAKAWA Masayuki
完全自動運転につながることを目指した安全運転支援システム
自動運転への道のりを駆ける、と謳うメルセデス・ベンツの新型「Eクラス」。2016年7月に日本の路上を走り出した。同等のセグメントに属していた1947年の「170V」から数えて10代目という。最大の特徴として謳われるのが、完全自動運転につながることを目指した安全運転支援システムの最新技術を搭載していることだ。しかしもちろんそれだけではない。新型E 200 アバンギャルド(スポーツ)に乗ると、クルマとして驚くほどよい走りを堪能させてくれるのである。
エンジン バリエーションは出力ちがいを含めると4つを数える新型Eクラス。先行して発売されたのは新型「E 200 アバンギャルド」である。135kW(184ps)の最高出力を持つ2リッター4気筒エンジンに9段オートマチック変速機を組み合わせた後輪駆動だ。ラインナップのなかでは最もベーシックなモデルであるが、バリエーションは豊富。やや固められた足回りなどスポーティなキャラクターをもった「E 200アバンギャルド スポーツ」や、フルタイム4WDシステム搭載の「E 200 4MATIC アバンギャルド」も用意される。今回試乗したのはE 200 アバンギャルド スポーツ(727万円)である。
E 200 アバンギャルド スポーツの特徴は、マルチビームLEDヘッドランプ、進化したアダプティブ ハイビーム アシスト プラス、フロントブレーキのドリルド ベンチレーテッドディスク、19インチ アルミホイール、フロントスポイラーと側面とリアのスカートからなるAMGスタイリングパッケージなどだ。やや深く見えるエアダムの形状もE 200 アバンギャルドとの相違点。Eクラスが備えるさまざまなキャラクターのうちスポーティな面をより強調した仕様といえる。
ホイールベースが従来より65mmも延びたボディは全長4,930mmと堂々たるサイズである。ただしキャビンとボディ、さらにボディとタイヤの位置関係などプロポーションの見直しと、抑揚がつけられた面構成によって意外なほど引き締まった印象だ。スタイリングイメージは「Sクラス」や「Cクラス」と近く“かたまり感”のある力強い印象をもつものである。
走りはとてもすばらしいものだった。
Mercedes Benz E Class|メルセデス・ベンツ Eクラス
日本に上陸した新型メルセデス・ベンツEクラスに試乗
メルセデスならではの走りと革新的技術の融合 (2)
6気筒に負けていない4気筒エンジン
メルセデス・ベンツ E 200 アバンギャルドのよさは、端的にいうとメルセデスならではの魅力をきちんと持っていることだ。それに尽きるといってもよい。挙動変化が丁寧にコントールされたハンドリングと、急激なピークをもたない太いトルクバンドによる安心感のある走り。メルセデス車にほぼ共通して感じられるキャラクターは、いつ接しても見事な出来だと感心させられるが、新型Eクラスもこの美点を継承している。
300Nmの最大トルクを1,200rpmから発生しはじめる2リッターユニットは、低回転域での力強さが印象的だ。そして中間加速もよく、2,000rpmあたりから踏み込んだときの加速感もパワフル。音は静かで振動は低く、それでいてスムーズに上の回転まで吹け上がっていく。とても高級感がある。振動などで直列6気筒には勝てないといわれる4気筒だが、ここまで丁寧に仕上げられていると、けっして負けてはいない。最近の4気筒メルセデスの出来のよさに、新型Eクラスでもあらためて印象づけられた。
高速道路での直進安定性は抜群。ステアリングとサスペンションの連繋プレイといえばいいのか、わだちがあっても干渉はいっさい受けない。9時15分に両手を固定した状態で、安心しきった気分でドライブできる。油圧を使った可変ダンピングシステムである「アジリティコントロール」サスペンションは通常走行時にはしなやかな乗り心地をもたらし、いっぽうハードコーナリング時は瞬時に減衰力を高めるといった具合に、走行状況に応じて最適な足回りの設定を行うシステムだ。これもおそらく貢献しているだろう。
E 200 アバンギャルド スポーツにはパドルシフトも備わるが、トルクバンドを有効に使える9段ギアボックスのおかげで、中間加速のダッシュ力は抜群。しかも「ダイナミックセレクト」でスポーツモード(あるいはスポーツプラスモード)を選べば、Dレンジにいれっぱなしでもスポーツのサブネームに期待できるとおりの走りが堪能できるのである。
シートは「立体的な造型の縫製を可能にした」と来日したメルセデス・ベンツ本社のインテリアデザイン担当者が胸を張るもので、バケットタイプの彫刻的な造型の表面でパラレルステッチが複雑なカーブを描いている。ホールド性は高いうえにクッションは硬めだけれど、どこかが痛くなることは(おそらく)ない。風切り音や路面からのノイズも低く抑えられた静粛性の高い室内はじつに快適だ。
後席のレッグルームも広く、3メートル近いホイールベースを存分に生かした立派なリムジンである。トランクルームは540リッターという容量が謳われている。実際に深くて複数のゴルフバッグが余裕で入る。このクルマに食指を動かす(多くの)人はゴルフ趣味を持っていそうだからニーズにきちんと応えてくれるわけだ。
完全自動運転を目指すという目標を掲げるだけあって、自動レーンチェンジシステムなどの新技術にも驚かされた。
Mercedes Benz E Class|メルセデス・ベンツ Eクラス
日本に上陸した新型メルセデス・ベンツEクラスに試乗
メルセデスならではの走りと革新的技術の融合 (3)
驚きの「アクティブ レーン チェンジング アシスト」
新型メルセデス・ベンツEクラスが日本で発表されたのは2016年7月の赤坂・迎賓館だった。そのときは車線のない路面での手放しでの先行車追従走行がお披露目された。「快適性や安全性を大幅に高める数多くの世界初の革新技術が導入」されたことを現地法人であるメルセデス・ベンツ日本では高らかに謳っていたのが印象に残っている。
これは試乗記なので装備の列挙は避けるが、実際の体験をもとにした装備について記しておこう。自動での停止および発進機能も持つ先行車追従型「ディスタンスパイロット ディストロニック」と、機能強化が謳われる「ステアリング パイロット」にまず感心させられた。ステアリングホイールから手を離していられる時間がかなり延長され、路面の白線が薄い部分でもクルマはスムーズにカーブを曲がっていく。
「アクティブ レーン チェンジング アシスト」はステアリングホイールから手を離しながらウィンカーレバーだけ操作すれば、クルマが自動で右の車線、あるいは左の車線へ移るシステムである。後続を含め周囲の車両をつねに認識しているから可能になっている。十分なスペースがあるとすーっと車両が自動で動いていくのには驚きを禁じ得ない。少しムリをしなければ車線変更できないような状況ではシステムは反応しない。いっぽう黄色線上でも車線変更してしまう。乗員の安全確保のための安全性が優先されつつ、最終的な責任は運転者が負うのが現時点での安全運転支援システムの考えといえる。
安全運転支援システムの一部ともいえる新しい装備は、12.3インチのTFT大型ディスプレイ。これを2面備えている。ドライバー正面のディスプレイでは虚像による速度計や回転計、それに車両周囲の状況や警告などを表示。隣りに設けられたもう1つのモニターでは大きな画面でのナビゲーション地図をはじめインフォテイメントの情報を見ることができる。先行車との距離など車両周囲の情報による支援システムと、インターネットなどを通じてのコネクティビティ、2つの重要なシステムが新しいかたちで採り入れられているのが興味ぶかかった。
ステアリングホイールを握ったまま親指でスワイプ機能を使いながらインフォテイメントシステムの全機能を操作できるタッチコントロールが搭載されたのも新型Eクラスの特徴だ。使ってみると慣れが必要のようだけれど、自動車の操作の新しい方向性として興味深い。さまざまな方向性をもつ自動車のいまを体現するような新型Eクラス。乗ってみる価値はありそうだ。
Mercedes-Benz E 200 Avantgrade sport
メルセデス・ベンツ E 200 アバンギャルド スポーツ
ボディサイズ|全長4,950 × 全幅1,850 × 全高1,455 mm
ホイールベース|2,940 mm
トレッド 前/後|1,600 / 1,590 mm
重量|1,700kg
エンジン|1,991 cc直列4気筒DOHCターボチャージャー付
ボア×ストローク|83.0 × 92.0 mm
最高出力|135 kW (184 ps)/5,500 rpm
最大トルク|300 Nm (30.6 kgm)/1,200 - 4,000 rpm
トランスミッション|9段AT
駆動方式|FR
ブレーキ 前/後|ベンチレーテッドディスク
タイヤ 前/後|245/40R19 / 275/35R19
最小回転半径|5.4 メートル
最低地上高|130 mm
トランク容量|540 リッター
ハンドル|右
燃費(JC08モード)|14.7 km/ℓ
価格|727万円
メルセデスコール
0120-190-610