アウディの新たなるコンパクトSUV、Q2に試乗|Audi
Audi Q2|アウディ Q2
アウディの新たなるコンパクトSUV、Q2に試乗
面白いスタイリングとしっかりした質感が魅力
アウディが初めてプレミアムコンパクトSUV市場に投入する「Q2」。スイスはチューリッヒで開催された同モデルの国際試乗会から、小川フミオ氏がリポートする。
Text by OGAWA FumioPhotographs by AUDI AG
アメリカンフットボールの選手をイメージしたデザイン
アウディからプレミアムコンパクトセグメント初のSUVを謳うアウディ「Q2」が発表された。「若い人にどんどん乗ってもらいたいと思って作りました」。ドイツはインゴルシュタットのアウディAGの開発担当者の言葉だ。なにより意外だったのは、スイス・チューリッヒの空港のひとすみに設けられた会場がグラフィティで彩られていたことである。
アウディQ2の最大の魅力の1つは、確かに若々しく見えるスタイリングにある。新しい意匠のグリルにクロームで加飾されたエアダムが組み合わされている。4.19メートルの全長に対して1.51メートルの全高を持つボディが、やや上背の高いSUV的プロポーションとなっている。
「スタイリングで意識したのは力強さです。イメージとしてはアメリカンフットボールの選手です。ショルダーパッドでいからせた肩にヘルメットをかぶった頭がのっかっている。そんなことを思い描きながらデザインを決めていきました」。Q2の製品開発マネージメントを担当するイェンズ・コジナ氏はそう説明してくれた。
側面をみると、ショルダーと専門用語で呼ばれるサイドウィンドウ下のボディパネルが大きくえぐられている。2015年にショーで「2018年発売」とお披露目された新世代の電気自動車のコンセプト、アウディ「eトロン クワトロ コンセプト」を思いださせるものだ。Q2からアウディデザインが新しい時代に入ったということだろうか。試乗会場でデザイナーは否定も肯定もしなかったが。
日本には1リッターモデルから導入されるようだ。
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予想以上によく走る
アウディQ2の日本導入は2017年が予定されている。導入が決定しているのは1リッターエンジンの1.0TFSIという。7段デュアルクラッチの変速機を持った前輪駆動モデルだ。少し遅れて、1.4リッター4気筒エンジンにやはり7段デュアルクラッチの前輪駆動モデル、1.4TFSIが加わるようだ。
アウディQ2 1.0TFSIに搭載されるのは、999ccの3気筒ユニット。シリンダーやブロックなど基本は日本に導入されているフォルクスワーゲン「up!」と同じだが、Q2ではターボ化されている。最高出力は85kW(116ps)、最大トルクは200Nm。先にも触れたとおり、日本仕様は7段のツインクラッチ式変速機が組み合わされる予定だ。今回のチューリッヒ近郊での試乗にはあいにくその変速機が間に合わず、6段マニュアル変速機での試乗となった。
Q2 1.0TFSIは予想以上によく走るクルマだった。今回のチューリッヒでの試乗会に同行した日本人ジャーナリストのなかにはパワーが足りないんじゃないかという人もいたが、僕としては十分に楽しめた。
まずギアのフィールが気持ちよいことが1つ。ゲートはいい感じに近接しておりトラベルも短い。節度ある感触で腕を大きく動かさずにギアチェンジできるのだ。クラッチもトラベルが大きくないため、シフトダウンにもすぐ慣れる。日本には入ってこないのであまりここで印象を深掘りするわけにもいかないが、2速と3速もギア比がそれほど離れておらず運転が楽しいモデルだった。
山道を走るときもノーズの軽さゆえ、操舵感がよい。たいてい2速。ストレートが現れると加速しつつ3速にシフトアップという運転になったが、それで十分1.4リッターモデルについていけるのだ。シフトダウンも短いギアのトラベルと、やはりそれほど深くないクラッチペダルによって素早く決められる。
足まわりはしなやかで、高速での乗り心地もよい。実質的なトルクは3,000rpmを超えてから出てくる感じだが、1.2トンの車体には十分と感じられる。高速では6速で2,000rpmも回っていればすいすいと気持ちよく流れに乗って走れる。
遅れて出てくる7段のツインクラッチ搭載モデルはどのようになるだろうか。ギアが1枚増えることでよりトルクバンドがしっかり使える設定になることも予想される。個人的にはさらにドライブモードが選べるアウディダイナミックセレクトが搭載されれば鬼に金棒だろうと思う。
1.4リッター版は驚くほどパワフルだった。
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1.0TFSIとは別物に思えるほどの1.4TFSI
アウディQ2 1.4TFSIは、Q2のラインナップにあって中間的なモデルだ。下は先に書いた1.0TFSIで上には2.0TFSIが設定されている。しかしこのサイズのモデルにとって、このエンジンサイズで必要十分どころか十分すぎるほどの力強さを感じるほどだった。
MQBというエンジン横置きプラットフォームで、アウディ「A3」の3ドアと同じ長さのホイールベースを持つQ2。1,394cc 4気筒エンジンは、110kW(150ps)の最高出力と250Nmの最大トルクを発生する。かつCOD(シリンダーオンデマンド)型エンジンで、高速巡航など負荷の少ない状況ではカムが切り替わり2気筒のバルブが開かなくなって休止するシステムが採用されている。
こちらも日本導入のさいは前輪駆動になるようだ。1.4TFSIは速い。とりわけ1.0TFSIから乗り替えると別物に思えるほどだ。最大トルクが1,500rpmから出る設定だけあって、少ないアクセルペダルの踏み方に対してももりもりと力が出る感じだ。中間加速も鋭い。
いっぽうステアリングホイールは適度な重さがあって、低速域ではやや重いかなと思うものの、速度を上げてワインディングロードをとばすときなど軽薄感がなくて操舵感覚はじつによい。足回りはやや硬めの設定で、そのせいもあるのだろうが、力強く走っていくのは特徴的だった。
Q2は若い人に乗せたいというのが今回のアウディのマーケティング戦略のようだが、それに合うのは1.0TFSI。しかしそうは言ってもドイツ車の重厚感も欲しいという人には1.4TFSIがぴったりきそうだ。インテリアも差し色で明るい色があったり(赤のロワーダッシュパネルとか)、LED照明が雰囲気を出したりとスタイリングは面白いが、それでもアウディ車ならではのしっかりした質感の適度な重厚さがなによりの特徴である。グラフィティ風のロゴとか、広告ではユースマーケットを強調しているが、それならup!ぐらいまで振り切ったデザインも面白かったかもしれない。
日本には2017年導入予定で、ベーシックモデルの価格は300万円前後にしたいとアウディジャパンでは考えているようだ。若者といわず、躍動感あるスタイリングに惹かれたら中高年でも満足できるはずだ。アウディQ2は平均点がかなり高い、ドライブの楽しさを感じさせてくれるクルマなのだ。