アウディS6、S7に試乗|Audi
CAR / IMPRESSION
2014年12月11日

アウディS6、S7に試乗|Audi

Audi S6 / S6 Avant / S7 Sportback|アウディ S6 / S6 アバント / S7スポーツバック

アウディS6、S7に試乗

ドイツプレミアムブランドはモデルバリエーションに高性能モデルを抱える。BMWならばM、メルセデス・ベンツならばAMGといった具合に。最大限のパフォーマンスを追求した、メーカー特製のチューニングカーともいえるそれらのモデルは、登場するたびに自動車好きの耳目を驚かすものだ。そんななか、アウディSモデルはハイパフォーマンスでありながら、快適性もおろそかにしていないという、他ブランドでは類をみないポジションに位置している。このSモデルの本質とはなにか。そして、SモデルをSモデルたらしめるべく、アウディが投入しているテクノロジーとはいかなるものか。大谷達也氏が解きあかす。

Text by OTANI Tatsuya

Audi Sモデルの独特なポジション

最高出力420psのV8ツインターボエンジンを積んだ新型アウディ「S6」、「S6アバント」がデビュー。あわせて、「A7スポーツバック」におなじエンジンを搭載した「S7スポーツバック」が誕生した。

ドイツ プレミアムブランドの“ミドルクラス スポーツモデル”といえば、メルセデス・ベンツの「E63 AMG」や「BMW M5」がすぐにおもい出される。ただし、E63 AMGは524ps(パフォーマンスパッケージ装着車は557ps)、M5は560psと、どちらも「S6」より格段にパワフルだ。

じゃあ、「S6」と「S7スポーツバック」では全然歯が立たないのか? たしかに、絶対的なパワーではE63 AMGやM5にかなわない。でも、この2台に対抗するアウディのスポーツモデルは本来“RS”。これと“S”では、明らかに位置づけがことなる。

Audi S7 SPortback|アウディ S7スポーツバック

Audi S6/S6 Avant|アウディ S6/S6 アヴァント

アウディの“RS”とメルセデス・ベンツの“AMG”、それにBMWの“M”は、どれもロードカーとして最高峰のパフォーマンスを有するモデル。だから、最近はかなりコンフォート性が向上したとはいえ、3つのシリーズは日常的な使い勝手を犠牲にしてでも高性能を追求する姿勢が貫かれており、その結果、サーキット走行だってこなせるポテンシャルを手に入れている。

いっぽう、アウディの“S”は、優れたパフォーマンスを維持しながらも、より快適性を重視したモデル。いや、もう少しはっきりいえば、スポーツ性から日常性にいくぶん重点をシフトさせたのが“S”といえる。

Audi S6 / S6 Avant / S7 Sportback|アウディ S6 / S6 アバント / S7スポーツバック

アウディS6、S7に試乗(2)

平穏かつ250km/h

実際、試乗車に乗り込み、エンジンを始動させても、400psオーバーのパワフルなエンジンであることを想像させるそぶりは一切見せない。後で述べる新機軸の効果により、バイブレーションは皆無に近いし、ノイズだってほとんど耳に届かない。「本当にこれがV8ツインターボを積んだスポーティモデルなの?」 そんな疑問を抱くほど、キャビンはいたって平穏かつ快適なのである。

走りはじめてもその印象は変わらない。A6やA7スポーツバックには用意されなかったアダプティブエアサスペンションが標準装備されることもあり、S6もS7スポーツバックも路面から伝わるショックはすべてまろやかに抑えられていて、ゴツゴツとした感触を与えない。A6やA7スポーツバックに比べればかなり足まわりは引き締められているはずだが、それでも4輪のサスペンションがしなやかにストロークする様子は、フルタイム4WDの「クワトロ」をつくりつづけ、安定したロードホールディングがいかに大切かを知り尽くしているアウディらしい。結果として、強引にボディをフラットに押さえ込むというよりは、ある程度の動きを柔軟に許す仕上がりとなっている。

Audi S7 SPortback|アウディ S7スポーツバック

ただし、普通の感覚でいえば、S6/S7スポーツバックは相当、速い。0-100km/h加速は4.6秒(S6セダン)もしくは4.7秒(S6アバント/S7スポーツバック)。他のドイツ製高性能モデルとおなじように、スピードリミッターにより最高速度は250km/hに規制されるが、今回の試乗中もアウトバーンで加速していったところ、ごく短時間で240km/hに到達した。たまたまそこで前がつかえたのでスロットルを緩めたが、その時点での加速感から、スピードリミッターさえなければ最高速度が250km/hを楽に越えることが想像できた。ひと昔前だったらスーパーカーと呼ばれるパフォーマンスだ。

Audi S6/S6 Avant/S7 SPortback|アウディ S6/S6 アヴァント/S7スポーツバック

Audi S6/S6 Avant/S7 SPortback|アウディ S6/S6 アヴァント/S7スポーツバック

それでいながら、新世代の4.0リッターV8ツインターボエンジンは、数々の最新テクノロジーを取り入れることで旧型を25パーセントもしのぐ省燃費性能を手に入れている。

その中核をなしているのは、フォルクスワーゲン アウディ グループが先鞭をつけたダウンサイジング コンセプトだ。排気量を縮小してフリクションロスを低減し、過給器と直噴技術により高効率と高出力を両立させたこの最新のエンジンテクノロジーがドイツを中心とする多くの自動車メーカーで採用されていることはご存知のとおり。しかも、いまやダウンサイジングコンセプトは一般的なファミリーカーだけでなくハイパフォーマンスカーにもぞくぞくと取り入れられるようになっている。

Audi S6 / S6 Avant / S7 Sportback|アウディ S6 / S6 アバント / S7スポーツバック

アウディS6、S7に試乗(3)

最先端のエンジン、ノイズ制御

アウディも今回のS6とS7スポーツバックでこのハイパフォーマンスカーへのダウンサイジング・コンセプトの適用というトレンドに追随した形だが、他メーカーとおなじ技術レベルではパイオニアとしての誇りが許さない。そこで、新エンジンではダウンサイジングコンセプトを一歩推し進めた“シリダーオンデマンド(気筒休止機構)”を組み込み、一層の省燃費化を実現した。

一見したところ無関係におもえるダウンサイジングコンセプトと気筒休止機構だが、大トルクを必要としないときに実質的なエンジン排気量を小さくしようとする考え方はまったくおなじ。ただし、ダウンサイジングコンセプトでは、過給器の利用により排気量を拡大する働きがあるのにたいし、気筒休止機構では不要なときに見かけ上の排気量を小さくするというちがいがある。

なにしろ、8気筒のうちの4気筒が止まるのだから、排気量が半分の2リッターになるのと実質的に変わらない。燃費の点ではまちがいなく有利だ。とはいえ、エンジンの静粛性もおなじように4気筒なみとなっては元も子もない。実際は、気筒休止モードに入っても8気筒分のピストンが動きつづけているのでバイブレーションに大きな変化はないが、それでも爆発回数が半減するため振動モードは微妙に変わる。

Audi S6/S6 Avant/S7 SPortback|アウディ S6/S6 アヴァント/S7スポーツバック

Audi S6/S6 Avant/S7 SPortback|アウディ S6/S6 アヴァント/S7スポーツバック

そこでアウディは、音と振動の両面からこの問題を封じ込める対策を施した。まず、“振動”はアクティブエンジンマウントといって、エンジンマウント自体が振動を発生し、エンジンのバイブレーションを打ち消す機能を搭載。音についても、天井に埋め込んだ4つのマイクでキャビン内のノイズを検知するとともに、これをキャンセルする“音”をオーディオ用スピーカーから出し、静粛性を確保するアクティブノイズコントロールを標準装備したのである。

ライバルに先駆けて「スポーティモデルでもコンフォートであるべき」とのコンセプトを打ち出した“S”。その最新作として登場した新型アウディS6とS7スポーツバックは、モンスター級のパフォーマンスとラグジュアリーサルーンなみの快適性を両立させていた。

ライバルはこれにどんな手を打つのか? 彼らの繰り出す次の一手が注目される。

新型アウディS6 / S6アヴァントならびにS7スポーツバックは今秋、日本に導入される見とおし。価格は1,200万円前後になると予想される。

spec

Audi S6|アウディS6
エンジン|V型8気筒DOHCツインターボ
排気量|3,993 cc
最高出力|309 kW (420ps) / 5,500-6,400 rpm
最大トルク|550 Nm / 1,400-5,200 rpm
全長×全幅×全高|4,931 × 1,874 × 1,440 mm
トレッド(前/後)|1,627 × 1,618 mm
車両重量|1,895 kg
トランスミッション|7段Sトロニック
駆動|4輪駆動
トランク容量|530 ℓ
燃費|9.6 ℓ/100 km(NEDC値)
CO2排出量|225 g/km
最高速度|250 km/h
0-100km/h加速|4.6秒
価格|72,900 ユーロ

Audi S6 Avant|アウディS6アバント
エンジン|V型8気筒DOHCツインターボ
排気量|3,993 cc
最高出力|309 kW (420ps) / 5,500-6,400 rpm
最大トルク|550 Nm / 1,400-5,200 rpm
全長×全幅×全高|4,934 × 1,874 × 1,446 mm
トレッド(前/後)|1,627 × 1,618 mm
車両重量|1,950 kg
トランスミッション|7段Sトロニック
駆動|4輪駆動
トランク容量|565-1,680 ℓ
燃費|9.7 ℓ/100 km(NEDC値)
CO2排出量|226 g/km
最高速度|250 km/h
0-100km/h加速|4.7秒
価格|75,250 ユーロ

Audi S7 Sportback|アウディS7スポーツバック
エンジン|V型8気筒DOHCツインターボ
排気量|3,993 cc
最高出力|309 kW (420ps) / 5,500-6,400 rpm
最大トルク|550 Nm / 1,400-5,200 rpm
全長×全幅×全高|4,980 × 1,911 × 1,408 mm
車両重量|1,945 kg
トランスミッション|7段Sトロニック
駆動|4輪駆動
トランク容量|535-1,390 ℓ
燃費|9.6 ℓ/100 km(NEDC値)
CO2排出量|225 g/km
最高速度|250 km/h
0-100km/h加速|4.7秒
価格|79,900 ユーロ

※すべてのスペックおよび価格は本国のものです。

           
Photo Gallery