ポルシェAGエクステリアデザイナー 山下周一氏インタビュー|Porsche
Porsche|ポルシェ
ポルシェAGエクステリアデザイナー
山下周一氏インタビュー
ポルシェのDNAを引き継ぎながらデザインするという仕事
「進化と挑戦。未来のスポーツカーへのロードマップ」というテーマのもと、ジャパンプレミアされた「パナメーラ スポーツツーリスモ」。そのエクステリアデザインを担当したのは、日本人だった。そのポルシェA.G. エクステリアデザイナー、山下氏へインタビューを敢行した。
Photographs by ARAKAWA Masayuki & Porshce A.G.Interview & Text by HARA Akira
苦労したのはリア
東京モーターショー2017で日本初公開されたポルシェの「パナメーラ スポーツツーリスモ」。パナメーラ サルーンのリアシートと荷室を拡大したシューティングブレークバージョンで、ポルシェラグジュアリーの新しい提案だ。
このクルマのエクステリアデザインを担当したのは、実は日本人の山下周一氏だ。現在はポルシェのヴァイザッハ研究開発センターに在籍しており、今回の東京モーターショーのために帰国した。多数の報道陣が参加したプレスカンファレンスを終えた直後、久しぶりの日本をエンジョイしているという山下氏にお話を伺った。
――まずポルシェとはどんな会社なのでしょうか
メルセデス・ベンツとサーブで仕事をした後、2006年からポルシェでエクステリアデザインを担当しています。ポルシェは、何と言ってもデザインに対して経営陣の要求が非常に厳しい、という点がほかと違うところです。特にトップレベルの人間からデザイナーまでが一同に会する経営会議においては、ボディの細かなライン一つについても議論が行われ、そこでダメ出しされることもあるのです。
――山下氏がエクステリアデザインを担当し、東京モーターショーで日本初公開した新しいパナメーラ スポーツツーリスモのデザインについて教えてください
“誰がどこからみてもポルシェとわかる”“スポーツカーに見える”というポルシェのDNAを引き継ぎました。そのためフロント部は、「911」を想起させる中央のシャープなV字型ボンネットとその左右に盛り上がったフェンダー、WEC(世界耐久選手権)に出場するレーシングカー「919ハイブリッド」をイメージした4ポイントヘッドライトを採用しました。
今回非常に苦労したのはリアの部分で、拡大したインテリアスペース(5名乗車)をキープしつつ、スポーツカーのように後方に絞り込まれたラインとワイドなリアフェンダーを描き出すため、長い時間をかけて悩みました。また空力性能を高めながら流麗なルーフラインとするための解決策として、格納式のアクティブリアスポイラーを採用しました。このクルマが「ワゴン」ではなく「スポーツツーリスモ」であることを意識しているのですが、いかがでしょうか?
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ポルシェのDNAを引き継ぎながらデザインするという仕事 (2)
この先EV化してもポルシェはポルシェ
――「ポルシェ=911」というイメージがデザイナーに与える影響はあるのでしょうか
メリットでもあり、呪縛でもあります。ただ、911のDNAを絵にするのは楽しい仕事なのです。
――今後、EVなど新しいパワートレインが入ってくるが、それがポルシェデザインにどのように反映されることになるでしょうか
内燃機関は冷却のために大きな開口部が必要ですが、モーターならそこまで大きなものは不要です。電動化などにより、デザインの自由度は増すのです。とはいえ、「ミッションE」(ポルシェ Eスポーツのあり方を示すコンセプトカー)が良い例で、やはりどこからみてもポルシェであるというデザインが貫かれています。
――今回のモーターショーには、創業者のフェルディナンド・ポルシェ博士が「私が理想とする、小型軽量でエネルギー効率に優れたスポーツカー。こうしたクルマを探したが、どこにも見つからなかったので自分で造ることにした」として1948年にデビューした「356スピードスター」が置かれています。山下さんにとって356とは?
911の原点、というか、そのDNAのもう一つ前のもの。祖父というべきものでしょうか。コンパクトなスポーツカーは私にとっても理想です。昔「ミアータ」(マツダ ロードスター)に乗っていたことがあるのですが、パワーはなくてもコンパクトで操縦性がよく、大好きでした。
この後、モーターショー会場に展示されたパナメーラ スポーツツーリスモとともに記念撮影を行なったが、山下さんが自ら望んだ立ち位置はやっぱりリアサイド。苦労したリアのデザインに対して、特別の思い入れがあるのは当然だろう。