グッドウッドで2台のスペシャルな911がデビュー|Porsche
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2017年8月4日

グッドウッドで2台のスペシャルな911がデビュー|Porsche

Porsche 911GT2RS|ポルシェ 911GT2RS
Porsche 911 Turbo Exclusive Series|ポルシェ 911ターボ エクスクルーシブ シリーズ

グッドウッドで2台のスペシャルな911がデビュー

イギリス南部グッドウッドで毎年6、7月頃に開催されている自動車の祭典「グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード」。今年はポルシェが2台のスペシャルな911をお披露目した。現地に足を運んだ小川フミオ氏が詳細をリポートする。

Text by OGAWA Fumio

最も速く最もパワフルな911

ポルシェは911ファンをやきもきさせるようなニューモデルを発売した。歴代最もパワフルな後輪駆動の「911GT2RS」と、特別な内外装をもちベース車両よりもパワーアップした「911ターボ エクスクルーシブシリーズ」だ。

2台が発表されたのは英国南部グッドウッド。2017年6月末の週末に開催された「グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード」のタイミングを利用して、ジャーナリストにお披露目されたのだ。

60年代にはレースもさかんに行われていたグッドウッド サーキット(ブルース・マクラーレンはテスト中にここで命を落とした)に設置された特別の舞台。そこにまず姿を現したのは、元F1ドライバーのマーク・ウェバーが操縦する911GT2RSだった。

Porsche 911GT2RS|ポルシェ 911GT2RS

Porsche 911GT2RS|ポルシェ 911GT2RS

「最も速く最もパワフルな公道走行可能な911」とポルシェがプレスリリースで謳う911GT2RSは、3.8リッターエンジン搭載が先代(3.6リッター)と大きく異なる点。

515kW(700ps)の最高出力と750Nmの最大トルクを発生する。先代のGT2に比してパワーで59kW(80ps)上がり、最大トルクは50Nm増している。

「どんなクルマかって? ビースト(野獣)ですよ」。ウェバーはそう言って集まったジャーナリストの笑いを誘った。しかし実際に後輪駆動の700馬力を制御できるのはどんな人間だろう。

ベースになっているのは、427kW(580ps)を発生する911ターボSの3.8リッターエンジンだ。さらなる性能向上のために、大型ターボチャージャーを搭載している。

パワフルなエンジンには効率的な冷却が不可欠とあって、当然ターボチャージャーにインタークーラーが備わる。さらにインタークーラーに水を噴射することで、過圧域での吸気温度をオーバーブースト可能な温度域へと下げる。

変速機はカスタマイズされたGT 7段ダブルクラッチトランスミッション(PDK)。専用開発のエグゾーストシステムを備えている。「きわめて軽量」とポルシェがするチタン製で、911ターボに使われるシステムよりも約7kg軽いという。

グッドウッドで聴いたサウンドは中音と低音が複雑にまざっており、ポルシェ好きにたまらない“ミュージック”であった。

燃料満タンでの車両重量が1,470kg。フロントフェンダー、ホイール ハウジング ベント、スポーツ デザイン ドアミラーのアウターシェル、リアサイド セクションのエア インテーク、およびリアエンドのパーツは、多くのインテリア コンポーネントと同様にカーボンファイバー強化プラスチック(CFRP)製だ。

Porsche 911GT2RS|ポルシェ 911GT2RS

エンジンフードも車両をできるだけ軽くするためにカーボンで作られている。さらにオプションの「ヴァイザッハ パッケージ」はルーフ、スタビライザー、前後アクスルのカップリングロッドがカーボン製となり、さらに約30kg軽量となる。

そのため911GT2RSは静止状態から100km/hまで2.8秒で加速するという。

Porsche 911GT2RS|ポルシェ 911GT2RS
Porsche 911 Turbo Exclusive Series|ポルシェ 911ターボ エクスクルーシブ シリーズ

グッドウッドで2台のスペシャルな911がデビュー (2)

エアコンも備わってどこにだって乗っていく気になれる

911GT2RSは「完璧なレーシングシャシー」を備えるとポルシェでは謳う。コーナリングをシャープにするリア アクスル ステアが組み込まれているのも特筆点だ。

専用に設定されたPSM(ポルシェ スタビリティマ ネージメント)と、最適なドライビング ダイナミクスをもたらすように調整されたスポーツモードが追加されている。

タイヤはウルトラ ハイ パフォーマンス(UHP)タイプ。フロントが265/35ZR20、リアが325/30ZR21。ポルシェ セラミック コンポジット ブレーキ(PCCB)が標準装備される。

Porsche 911GT2RS|ポルシェ 911GT2RS

Porsche 911GT2RS|ポルシェ 911GT2RS

「どんなクルマだか私の印象をお話ししましょう」。会場に姿を見せたポルシェのチーフテスター、ワルター・レエル氏が印象を語った。

「ひとことでいうと、オールマイティです。先ごろイベントで、「935」(70年代に911ターボをベースに開発されたレーシングモデル)を操縦しましたが、運転が難しくて冷や汗をかきました(場内笑)。しかし911GT2RSはエアコンも備わってどこにだって乗っていく気になれます」

911GT2RSの室内は、レッド アルカンターラ、ブラック レザー、およびカーボン模様仕上げのインテリアパーツで構成される。カーボン模様仕上げのフルバケットシートの背後にはロールケージが組まれている。

同時にもう1台のスペシャルが発表された。911ターボS エクスクルーシブ シリーズだ。

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Porsche 911 Turbo Exclusive Series|ポルシェ 911ターボ エクスクルーシブ シリーズ

グッドウッドで2台のスペシャルな911がデビュー (3)

手作業で精緻に仕上げられる911ターボS

グッドウッドで発表された「911 ターボS エクスクルーシブ」シリーズは「これまでで最もパワフルかつユニークな911ターボS」とポルシェのプレスリリースで謳われるモデルだ。

「911ターボS」より27psアップした607ps(466kW)を備え、911GT2RSとは異なりフルタイム4WDシステムが採用されている。

最大の特徴は、標準の911ターボSと異なりツッフェンハウゼンのポルシェ本社で新たなスタートを切ったポルシェ エクスクルーシブ マヌファクトゥールにおいて「手作業で精緻に仕上げられます」(ポルシェ)という点だ。

ボンネット、ルーフ、サイドスカート、リアのラムエアスクープはカーボン製コンポーネンツ。さらにターボエアロキット、専用デザインのリアエプロン、2組のブラック塗装ステンレススチール製ツインテールパイプなど、外観上の特徴も数多い。

Porsche 911 Turbo Exclusive Series|ポルシェ 911ターボ エクスクルーシブ シリーズ

Porsche 911 Turbo Exclusive Series|ポルシェ 911ターボ エクスクルーシブ シリーズ

500台限定で製造されるうち、ボディ色は6色。当初はイメージカラーのゴールデン イエロー メタリックをはじめ、アゲート グレイ メタリック、それにキャララ ホワイト メタリックが用意される。

ボンネット、ルーフ、サイドスカート、ラムエアスクープはカーボンファイバーでできており、ターボ エアロキット、専用のリア エプロン、2組のブラック塗装ステンレススチール製ツイン テールパイプによるエグゾースト システムなどを特徴とする。

もうひとつ外観で大きく目を惹くのはブラックカラー塗装のセンターロック20インチホイールだ。ゴールデン イエロー メタリックで塗装された上にグロス ブラックを載せ、最後に最新のレーザー テクノロジーを駆使してリムの部分のみグロス ブラックを削りとってゴールデン イエロー メタリックを露出させるという技法である。

エレガントさが強調されるインテリアは、2層のパンチングレザー張りのスポーツシートが目を惹く。ステッチとヘッドレストレイントの刺繍ロゴ(Turbo S)はゴールデンイエロー。アルカンターラのルーフライニングにも同色でダブルストライプが施されている凝り方だ。

Porsche 911 Turbo Exclusive Series|ポルシェ 911ターボ エクスクルーシブ シリーズ

Porsche 911 Turbo Exclusive Series|ポルシェ 911ターボ エクスクルーシブ シリーズ

ポルシェ エクスクルーシブ マヌファクトゥールは長いあいだポルシェ車の特別注文に応じてきた部署がベースになっている。

今後は「スモールシリーズ」と銘打って今回の911 ターボS エクスクルーシブ シリーズや、911GT2RSのある種ぜいたくな内外装のような仕様をもつ車両や、個別の注文に応じていくという。

同時にポルシェデザインから自社ムーブメントを用いたエクスクルーシブ クロノグラフがオーナーにのみ販売される。

チタンのケースを使い、裏面はシースルー仕様でホイールをイメージした自動巻用のローターを見ることができる。精密に再現されたポルシェのクレストが印象的だ。ボタン操作ひとつでつねに0に戻って計時を始めるフライバック機構も備えているドライバー向けのスポーツウォッチだ。

911GT2RSの日本導入予定はこの後でアナウンスされる模様。911ターボSエクスクルーシブシリーズは日本向けに6台限定(うち右ハンドル4台)で2017年7月10日より受注が開始されいる。価格は3,334万円だ。腕時計は正式な価格がアナウンスされていないが、取材先で確認したときは9,950ユーロ(1ユーロ=130円として約130万円)ということだった。

           
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