ポルシェ 911をつくる男たち─開発者ブリーフインタビュー|Porsche
CAR / FEATURES
2015年4月28日

ポルシェ 911をつくる男たち─開発者ブリーフインタビュー|Porsche

Porsche 911|ポルシェ 911
開発者ブリーフインタビュー

911をつくる男たち(1)

脅威的な進化を遂げた新型911は、半世紀にもおよぶ歴史によって形成された、オーセンティックな遺伝子を引き継ぎながら、もっとも先進なクルマを作ろうという野心をもち、911を愛しつづけた男たちがいたからこそ誕生した。スタイリング、シャシー、メカニズム、そして開発マネージャー、それぞれの責任者にショートインタビューをおこない、新型911で目指したもの、達成したものについて聞いた。

文=島下泰久

エクステリアデザイン責任者
Matthias Kulla|マティアス・クーラ 

スタイリングにおいてなにより大事にしたのは、911のようなオーセンティックなクルマが、同時にどれほど現代的でもあり得るかということを証明することでした。あたらしい911は、いま路上を走っているクルマのなかでもっとも先進的なクルマですが、その内側には、ずっと継承されてきた911の遺伝子が継承されています。新型911は、外観でもそれを表現しようとしたわけです。

それを実現できたのにはたくさんの理由があります。まずはデザイナーチームが、その野心的な目標を成し遂げようという気持ちでひとつになれたこと。ふたつ目として、技術的なパッケージの面でもおなじ目標を共有できたことも大きいですね。新型911はホイールベースが長くなり、タイヤサイズも最大20インチまで拡大されました。これによってむかしのプラットフォームに捕われることなくあたらしいデザインをすることができたのです。

さらに、十分な時間をかけることができたこともポイントです。私たちデザイナーは今回、歴代911のプロポーションをすべて精査して、そのあとにデザインに入りました。過去のイメージを壊さないためではなく、むしろ、そうやって限界を追求したんです。

ポルシェ 911をつくる男たち─開発者ブリーフインタビュー|Porsche|02マティアス・クーラ

Porsche 911|ポルシェ 911
開発者ブリーフインタビュー

911をつくる男たち(2)

シャシー開発責任者
Ulrich Morbitzer|ウルリッヒ・モルビッツァー

一番大事なのはパフォーマンスの面でライバルより抜きん出ていることですが、そこはポルシェですから、同時に快適性や楽しさ、燃費をふくめた優れた日常性がなければいけません。いままでもポルシェは、その両面で限界値を高めてきましたが、今回はあたらしい電子制御の採用などによって、その両面を一気に飛躍させることができました。

もちろん、リアエンジンであることは大前提です。私は25年間、ポルシェに乗りつづけてきましたが、911としてはそれしか考えられない。911の駆動方式に「F」の字が入ることはあり得ないんです(笑)。

トラクション性能の面で、911に勝るクルマはありません。エンジンも下からトルクがあって、かつ上までまわります。それからステアリングの正確さですね。限界に近づくと、たとえば「あ、左前輪がグリップを失いそうだ」と解る。そういうステアリング感はほかにはありません。また、際立った中立感もポイントです。

最初に電動パワーステアリングを使うと聞いたときには「大丈夫かな」と心配でしたが、結果としてすばらしいものができました。油圧式ではできなかったフィーリングが生み出せていると思います。

ポルシェ 911をつくる男たち─開発者ブリーフインタビュー|Porsche|04

ウルリッヒ・モルビッツァー

Porsche 911|ポルシェ 911
開発者ブリーフインタビュー

911をつくる男たち(3)

メカニズム開発責任者
Michael Rösler|ミハエル・レスラー

911とは、優れたダイナミック性能をもつクルマであることはもちろん、それと同時に日常で、たとえばビジネスエクスプレスとしても使うことができる高い快適性をもったクルマでもあります。私が担当したエレクトリカルの分野では、あたらしい機能を数多く導入しました。とりわけ後者の日常性という面において、環境性能を高めるべくDレンジ走行時のアクセルオフでクラッチを切り、惰性で走行することで燃費を稼ぐコースティング機能や、アイドリングストップ機能などを投入したのも、それに当たります。そのさいに重要なポイントとしたのは、これらのあたらしい機能が、911の魅力であるダイナミック性能を損なうことがないようにということでした。結果として、それはかなり高い次元で達成できたのではないかと思っています。

私はエレクトリカルのエンジニアですが、じつは子どものころから911というクルマの大ファンでした。ですから、このプロジェクトにかかわれることには興奮しましたし、ほかの開発メンバーとも良いチームワークをもって仕事を進めることができたと思っています

ポルシェ 911をつくる男たち─開発者ブリーフインタビュー|Porsche|06

ミハエル・レスラー

Porsche 911|ポルシェ 911
開発者ブリーフインタビュー

911をつくる男たち(4)

911開発プロジェクト責任者

Michael Schätzle|ミハエル・シェッツレ

911が911であるためには、すべての分野において、どこは変えてはならないか、あるいはどこを変えなければいけないのか、変えられる可能性があるのかということを、非常に注意深く確認していきました。たとえば、ドライバーズシートに座ったときには、いままでとおなじだと感じられることを大事にしています。つまり室内に入った途端「911に乗った」と感じられるようにするということですね。

電動パワーステアリングも、少なくとも従来のものより良いといえるものにならないかぎりは採用するつもりはありませんでした。何度もテストを繰り返して、「これならまちがいなく従来のシステムを凌駕している」というものができたことで、やっと導入を決定できたのです。

スロットルレスポンスは変わらず鋭く、ステアリングフィールは変わらず饒舌で、そしてエンジンは典型的な911らしいサウンドを奏でる。極端な話、それでエンジンがリアに積まれていれば、そのクルマは911になります。ホイールベースが伸びて、クルマの安定性はより一層高まりましたし、そのほかにもさまざまな面で進化をしていますが、その基本は変わっていないんですよ。

ポルシェ 911をつくる男たち─開発者ブリーフインタビュー|Porsche|08

ミハエル・シェッツレ

           
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