PORSCHE 911 turbo(後編)|最新ターボが辿り着いた境地とは
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2015年3月5日

PORSCHE 911 turbo(後編)|最新ターボが辿り着いた境地とは

PORSCHE 911 turbo|ポルシェ 911 ターボ(後編)

最新ターボが辿り着いた境地とは

初代が1974年に登場して以来、ポルシェのフラグシップモデルとして君臨しつづけている911ターボ。その最新モデルが発表された。

文=渡辺敏史写真=ポルシェジャパン

ピュアスポーツカーとしては究極の快適性

新型911ターボ、一般道での試乗で際立つのはその快適性にある。とくに音、振動の要素は前型に対して劇的ともいえる進化を遂げており、常識的なスピードで流すかぎりは普通のカレラと比べてもまったく乗り心地に見劣りはない。911のライド感はもはやスポーツセダンに近いほど洗練されており、日常のアシとしての適性は、ピュアスポーツカーとしてはもはや究極というところまで達している。

このなめらかな身のこなしには、変速によるショックの少ないPDKの完璧な調律ぶりも一助している。そして燃費は街中から高速と、普段乗りのシーンを概ね織り込んだドライブで6~12km/lのあたりを示していた。その優れたCO2排出量が証明される数字といえるだろう。

そしてサーキットに場所を移すと、まず驚かされるのはそのタフさである。ほぼ30度という気温のなかで全開に次ぐ全開を繰り返し、十数周と連続してコースをまわってもエンジン、ブレーキともにタレる気配はまったくない。熱量と速度域の高いターボにありながら、ここまで安定して性能を維持しつづけるあたりはさすがポルシェのプロダクトである。

大袈裟でなく、新型911ターボのパワーは血の気が失せて気が遠くなるほどだ。世界最速級の瞬発力はコーナーとコーナーとのあいだを一気に切り取るかのようで、ドライバーに息つく暇も与えない。しかし冷静さをとりもどして観察すれば、その途方もないパワーがごく低回転域からしっかりとリニアに立ち上がっていることがわかる。そして7000rpm手前に設定されたレッドゾーンまで、その盛り上がりはあくまで直線的かつ冷静で、過剰な演出はない。

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911ならではのドライビングキャラクター

操縦性は終始弱アンダーという感じで、舵角の大きなところでも四駆の癖による曲がらなさを感じるシーンは少なかった。このあたりのドライブトレーンの洗練度はもはや不満のないところに達しているといっていいだろう。さらに高速域、それも180km/hくらいの速度で突っ込んでいくような高速コーナーでは重いテールが外に張り出していくような911特有の挙動がしっかり抑えられ、かつ狙ったラインにピタリと車体が寄り添う自然な旋回が印象的だ。これは前述の PTV、そしてアクティブエンジンマウントが物理的に挙動を安定させ、それがドライバーに違和感を感じさせない程度に程よく作動していることを裏付けている。

この途方もない速さ、そして強烈なコーナリングフォースを前にすると、片手と片足を絶えず動かしながらMTを操作するという気持ちは芽生えない。そして実際のタイムも確実にPDKが上回るはずだ。GT-Rの例をみてもおわかりだろう。もはやこのアルティメイトクラスは世界的に2ペダルのATであることが最良になりつつある。

ただし新型ターボはそうであっても、適切な荷重移動をかけてコーナーにアプローチしたり、図抜けた脱出加速を味わったりという911ならではのドライビングキャラクターはしっかり残されていた。特殊な、特殊が故に愛されてきた911というクルマを究極なまでに速く走らせるべく、障害要素だけをことごとく取り除き綺麗に濾過した、それが新エンジンとPDKを得た新型911ターボの辿り着いた境地だ。アナログライクなドライビングでスピードを極めるならGT3を選べばいい。おなじ911でありながら、その両車はとんでもなくレベルの高い棲み分けができている。

ポルシェジャパン
http://www.porsche.com/japan/

BRAND HISTORY
ドイツを代表するスポーツカーブランドとして世界中の腕利きから圧倒的な支持を得ているのがPORSCHE(ポルシェ)である。はじまりは1931年。20代の頃から自動車エンジニアとして頭角をあらわした奇才・フェルディナンド・ポルシェは、ダイムラー社の技術部長を経験したあと、ドイツのシュトゥットガルトに「ポルシェ設計事務所」を設立して独立。以後、自動車メーカーからさまざまなクルマの開発を託されることになる。なかでも有名なのが、ドイツの「国民車」としてモータリゼーションに大きく貢献した「フォルクスワーゲン・ビートル」だ。

自動車メーカーとして、自らの名を初めて冠したのは、1948年に登場した「356」であった。それからポルシェは「911」「924」「928」といったスポーツカーを世に送り出すとともに、モータースポーツに力を注ぐ。たとえば、世界でもっとも苛酷なレースといわれるルマン24時間で16回の優勝を手に入れたほか、F1でもエンジンサプライヤーとして3度のシリーズ優勝に貢献するなど、輝かしい戦績を収めたのだった。その技術力と走りへのこだわりがいまなお彼らの製品に息づいているのはいうまでもない。

現在は、デビューから45年が経ったいまでもスポーツカーのトップランナーとして高い評価を得る「911」をはじめ、オープンスポーツの「ボクスター」、ボクスターのクーペ版の「ケイマン」、そして、プレミアムスポーツSUVの「カイエン」と、ラインナップすべてが高い人気を誇る。

           
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