“メルセデスらしい走り”を実現したGLAの魅力|Mercedes-Benz
Mercedes-Benz GLA 250|メルセデス・ベンツ GLA 250
Mercedes-Benz GLA 45 AMG|メルセデス・ベンツ GLA 45 AMG
スタイリッシュなコンパクトSUV
“メルセデスらしい走り”を実現したGLAの魅力
「Aクラス」「Bクラス」「CLAクラス」と、メルセデス・ベンツがあらたに攻勢を仕掛けたコンパクトカーの一群。そのファミリーの最後を飾る「GLAクラス」が、ついに公道へと現れた。Aクラスをベースとしながら、各所にSUV風の化粧をほどこしたこの新型は、どのようなキャラクターを持つクルマなのか。南スペインは地中海に面した港町、マラガで、河村康彦がドライブした。
Text by KAWAMURA Yasuhiko
“総仕上げ”としての意味も込められたニューモデル
初のコンパクトSUVであり、SUVラインナップの最後を飾るモデルでもある──昨年秋のフランクフルトショーでワールドプレミアがおこなわれ、この年頭に開催されたデトロイトショーではAMGバージョンが追加披露をされた「GLAクラス」を、メルセデスではこのように“自己紹介”する。
Aクラスが「スポーティなコンパクトハッチ」、Bクラスが「オールマイティなコンパクトモデル」、そしてCLAが「個性的デザインを備えた4ドアクーペ」……と、各コンパクトモデルをカテゴリー分けし、ほぼ同様の価格帯のなかで、ことなるコンセプトとセールスポイントをアピールすることでより多様な、そしてこれまでのメルセデス ラインナップではカバーをできなかった顧客層を取り込もうというのが、ニュージェネレーション コンパクトカーと自らが呼ぶ、こうしたモデル群で仕掛ける戦略であるはず。
そして、「スタイリッシュなコンパクトSUV」というキャラクターを前面に押し出すこのGLAは、その“総仕上げ”としての意味も込められたニューモデルというわけだ。
一見では、Aクラスをベースとしながら、各所にSUV風の化粧をほどこしたようにも受け取れるGLAクラスのアピアランス。しかし、実はそれが「ドアハンドルとドアミラーケースを除いては、すべてが専用に起こしたもの」と聞いて、その気合いの入りように驚いた。なるほど見比べれば、ドアのプレスラインやサイドウインドウの形状などが、Aクラスとは“似て非なるもの”だ。
日本への導入が予想され、今回スペインで開催された国際試乗会でもメイン車種としてテストドライブをした2リッターエンジンを7段DCTと組み合わせて搭載する「GLA 250 4マティック」のボディ3サイズは、4,417×1,804×1,494mm。
Aクラスに対して、主にリアのオーバーハングが延長されたことで全長は120mmほど長いものの、ホイールベースは同一値。数字上では全高が60mmほど大きく表されるものの、実はGLAの場合は「ルーフレールを含んで」の値となる。
いずれにしても、こうして全高が1.5メートルに満たない点については、日本特有のパレット式立体駐車場にも無理なく進入が可能で有り難い、といった“歓迎派”と、最低地上高が130mm強しかないこととともに「SUVらしさに欠ける」といった“反対派”の、2つの見方に分かれる可能性がありそうだ。
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スタイリッシュなコンパクトSUV
“メルセデスらしい走り”を実現したGLAの魅力 (2)
メルセデスらしいテイストの一端
南スペインは地中海に面した港町、マラガを起点とした国際試乗会に用意をされたGLA 250は、いずれも“4マティック”を謳う油圧多板カップリングを用いた4WD仕様。
実は、1.6リッターもしくは2.0リッターのターボ付き直噴ユニットという2種類のガソリンエンジンと、チューニングのことなる2.1リッターターボ付きディーゼルエンジンを搭載するGLAクラスは、それぞれのベーシックグレードにリーズナブルな価格をアピールする前輪駆動モデルを設定する。が、今回の試乗会では数台のディーゼルモデルを除き、大半が“4マティック”で統一された。イベントそのものの狙いもGLAというブランニューモデルに、いかにSUVとしてキャラクターを植えつけるかというポイントにあったにちがいない。
そんなGLA 250のテスト車が装着していたのは、235/45サイズのタイヤに19インチホイールというシューズ。標準サイズとしてカタログに載るのは215/60の17インチだから、そこでは一挙に2サイズのインチアップが図られていたことになる。
もちろん、それは相応のコストも必要なリファイン。だが、その効果はバツグンだった。“大径ホイール”を履いた事による足元のたくましさが、クルマ全体をいかにも「SUVらしく見せる」大きな立役者となっていた。これが標準の17インチだったら、きっとその印象はもっとずっと線が細く、弱いものに見えたことだろう。
ある面、「まずは見た目こそが勝負」というGLAの場合、この19インチのシューズはマストアイテムではないかとさえおもえたもの。ちなみに、後にテストトライブをおこなったAMGバージョンも、こちらは標準の19インチからさらに大径の20インチシューズへと変更済み。こうして、どのモデルもがより大径のオプションホイールを履かされていたのは、開発陣がSUVらしさを演じるのにいかに有効かを知っているという、揺るがぬ証左といっても差し支えないはずだ。
いっぽうで、果たしてそうしたリファインが純粋に“走り”の面でプラスの効果を生み出していたか否かは、定かではない。が、「19インチのランフラットタイヤでは、はなから期待薄だな……」と当初予想されたフットワークのテイストが、良い意味でそうした危惧を裏切り、むしろA/BクラスやCLAクラスなど、これまでテストドライブをおこなった経験のある兄弟モデルの上質さを味わわせてくれたのは事実だ。
あるいは、そこでは兄弟のなかでデビューがもっとも遅いという時間差が、足回りのセッティングを熟成させるために役立ったという可能性も否定はできない。
いずれにしても、今回乗ったGLA 250が、これまでどのメルセデスのコンパクトモデルに乗っても感じさせられた、走りはじめた瞬間からのヒョコヒョコとしたせわしない挙動から、ようやくにして一歩抜け出していたことは間違いない。それでも、Cクラス以上のFRレイアウトの持ち主が誇る圧倒的なフラット感には及ばないものの、個人的にはこれまでの経験のなかではじめて、FFレイアウトベースのモデルに「メルセデスらしいテイストの一端」を感じ取ることができたのだ。
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“メルセデスらしい走り”を実現したGLAの魅力 (3)
スポーツ派ドライバーの心をおもわずくすぐるもの
0-100km/h加速タイムが7.1秒と発表されるGLA 250でも、加速力は十分に高い。が、乗り換えた瞬間にそれとは別次元の圧倒的な力強さを味わわせてくれるのが、こちらはなんと4.8秒という飛び切りのタイムを発表する、やはり日本導入が有力視される「GLA 45 AMG」だ。
テストドライブをおこなったのは、ルーフエンドに派手なウイングスポイラーを装着し、内外装の随所に真っ赤な挿し色をくわえるなど、さらなるドレスアップを図った上でよりハードな“AMGパフォーマンス サスペンション”を採用した「エディション1」と呼ばれる仕様。“4気筒量販ユニット中最強”を謳うエンジンが発する最高360psのパワーは、「A 45 AMG」や「CLA 45 AMG」と同様に“AMGスピードシフト”を謳う7段DCTを介した後で、4輪へと分散されて路面を蹴ることになる。
おなじ2リッターでありながらもGLA 250用ユニットより圧縮比が下げられているため、その分ターボブーストの効きづらい領域での力強さは見劣りをするが、実際にはそうした印象はほとんど抱くことのないままに、2,300rpm付近から上でアクセルペダルを深く踏み込めば、そこでの速さはまさに“独壇場”だ。
そんなGLA 45 AMGの動力性能でもうひとつゴキゲンなのは、やや“着色気味”ではあるもののやはりそのサウンド。特に、スポーツ、もしくはマニュアルモードを選択した際の、アクセルOFF時の「パラパラ」というアフターバーン的な演出は、スポーツ派ドライバーの心をおもわずくすぐるもの。
古くからサウンドづくりにはことのほか熱心なAMGを名乗るモデルにとって、例え4気筒エンジンの持ち主であろうとも特徴あるスポーティな音色は、無くてはならないものにちがいない。
なぜかGLA 250よりも軽めのセッティングのステアリングは、その正確さが「さすがはメルセデス」という印象だ。前述のように、“特別”なサスペンションを採用することもあり、そのフットワークテイストはさすがにハード。だが、それでもむしろこれまで乗って来たAクラスやCLAクラスの各モデルよりも不快感が少なく感じられたのは、そんなハードさのなかでもピッチング挙動が封じ込まれているからという理由が大きそうにおもえた。
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“メルセデスらしい走り”を実現したGLAの魅力 (4)
よりカジュアルで身の丈に合ったモデル
GLAというモデルにとって、「SUV」という記号はあくまでも商品戦略上のひとつのツールであるはず。30mmアップというサスペンション仕様もオプションアイテムとして用意はされるものの、そもそも基本となる最低地上高が130mm程度では、先般の東京の“大雪”程度でも難儀をしそうだし、とても本格的なオフロード走行などは不可能なのは明らかだ。
他方で、そうした割り切りの結果、乗降性はAクラスと比較をしても遜色をかんじさせないし、日本市場に向けては前述のように立体駐車場問題も解決済み。さらに、オーバーハングの拡大で後席使用時のラゲッジスペース容量がAクラスよりも100リットル以上大きいとなれば、その実用性の高さもむしろAクラス以上という評価すら成り立つのがGLAというモデルだ。
すでに、A/BクラスやCLAは世界の市場で大ヒットを飛ばしているという。そして、GLAはまちがいなくその勢いを加速させる存在となるはずだ。
かくして、メルセデスが企てるニュージェネレーション コンパクトカー戦略はなるほど、かつてのメルセデスを支えてきた「最善か無か」という理想主義とはまた、まったくことなる次元での、よりカジュアルで身の丈に合ったモデルを求める顧客層というあらたなる鉱脈を、見事に掘り当てたのかも知れない。
Mercedes-Benz GLA 250 4マチック|メルセデス・ベンツ GLA 250 4MATIC
ボディサイズ|全長 4,417 × 全幅 1,804 × 全高 1,494 mm
トレッド 前/後|1,569 / 1,560 mm
重量|1,455 kg
エンジン│1,991cc 直列4気筒 DOHC 直噴エンジン
最高出力│155 kW(211 ps)/ 5,500 rpm
最大トルク│350 Nm / 1,200-4,000 rpm
トランスミッション│7段AT(7G-DCT)
駆動|4WD
サスペンション(前/後)|マクファーソン / マルチリンク
ブレーキ前/後│ベンチレーテッドディスク
タイヤ(前/後)|215/60 R 17 96
燃費(NEDC)│6.5リッター/100km(15.4 km/ℓ)
CO2排出量|151 g/km
0-100km/h加速|7.1 秒
最高速度|230 km/h
価格|37.496,90ユーロ(約530万円)
Mercedes-Benz GLA 45 AMG|メルセデス・ベンツ GLA 45 AMG
ボディサイズ|全長 4,417 × 全幅 1,804 × 全高 1,494 mm
トレッド 前/後|1,569 / 1,560 mm
重量|1,585 kg
エンジン│1,991cc 直列4気筒 DOHC 直噴エンジン
ボア×ストローク|83.0 × 92.0 mm
最高出力│265 kW(360 ps)/6,000 rpm
最大トルク│450 Nm/2,250-5,000 rpm
トランスミッション│7段AT(AMGスピードシフトDCT 7段スポーツ トランスミッション)
駆動|4WD
サスペンション(前/後)|マクファーソン / 4リンク
ブレーキ前/後│ベンチレーテッドディスク / ベンチレーテッドディスク
タイヤ(前/後)|235/45R19
燃費(NEDC)│7.5リッター/100km(13.3 km/ℓ)
CO2排出量|175 g/km
0-100km/h加速|4.8 秒
最高速度|250km/h(リミッター制御)
価格|55,870.50ユーロ(約790万円)/エディション1:63,248.50ユーロ(約893万円)