Aクラス 国内試乗|Mercedes-Benz
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2014年12月5日

Aクラス 国内試乗|Mercedes-Benz

Mercedes-Benz A 180 BlueEFFICIENCY|メルセデス・ベンツ A 180 ブルーエフィシェンシー

Aクラス 国内試乗記

日本の公道を新型「Aクラス」が走る日がやってきた。もはやおなじなのは名前だけではないか? といえるほどのイメージチェンジを果たし、強豪渦巻くCセグメントにメルセデス・ベンツが乗り込んできたのだ。スロベニアでの河村康彦氏渡辺敏史氏につづいて、国内導入モデル「A 180 BlueEFFICIENCY」のステアリングを握ったのは大谷達也氏だ。

Text by OTANI Tatsuya
Photographs by MOCHIZUKI Hirohiko

エヴァのキャラクターデザイナーとメルセデスのアニメ

なにせメルセデスがエヴァンゲリオンである。

新型「Aクラス」の発売に先立っておこなわれたキャンペーン「NEXT A-Class」ではアニメーションのショートムービーが制作されたが、そのキャラクターデザインを担当したのが「新世紀エヴァンゲリオン」を手がけた貞本義行氏だった。この作品には、エヴァンゲリオンにあまり関心がなかった私にも強く訴えかけてくる力があり、はじめて見たときには不覚にもホロッとするほどの佳作だった。

Mercedes-Benz A 180 BlueEFFICIENCY|メルセデス・ベンツ A 180 ブルーエフィシェンシー

"貞本義行氏によるキャラクター"

アニメーションの制作会社はProdaction I.G.

それはともかく、1886年に自動車を“発明”して以来、常に高級車の歴史とともに歩みつづけてきた「自動車メーカーの保守本流」であるメルセデス・ベンツが、自社製品のプロモーションに日本のアニメを使うとは想像もできなかったことである。

いや、そこまで極端でなくとも、彼らにそういう志向があることは以前から知られていた。

なぜなら、自動車の歴史のあまりにもど真ん中に位置していたために、ライバルにくらべるとユーザーの平均的な年齢層が高めで、その若返りが急務と指摘されていたからだ。もっとも、そういう意気込みは持っていても、それがなかなか実現できなかったこともまた事実。

そんなところへ、このアニメーションムービーがきたのだから、いくぶん驚くと同時に「やっぱりねえ」というおもいも捨てきれなかった。

ちなみに、この作品はメルセデス・ベンツ日本の発案で、ドイツ本社の承諾を得て制作されたものだが、あまりのデキの良さに日本以外の国でもプロモーション用に使われることが決まったそうだ。

Mercedes-Benz A 180 BlueEFFICIENCY|メルセデス・ベンツ A 180 ブルーエフィシェンシー

Aクラス 国内試乗記(2)

2本のキャラクターライン

メルセデスの若返りといえば、デザインもまったく同様といえる。

いまから1ヶ月ほど前に掲載したメルセデス・ベンツ テックデイ インテリジェント ドライブのリポートで紹介したとおり、2008年にゴードン・ワーグナーがメルセデスのデザイン担当役員に就任して以来、同社のスタイリングは完成度を一段と高め、急速な若返りをはかりつつある。

なかでも特徴的なのはモデルカテゴリーごとに特定のキャラクターラインを設定したことで、セダン系は上側の水平ラインと下側の上昇するラインの組みあわせ、スポーツモデル系は水平に長く伸びる上側のライン1本、コンパクトモデル系はやや後ろ下がりな上側のラインと途中から明確に上昇する下側のラインの2本で構成されることになった。

新型Aクラスのボディサイドに、先行して発売された新型「Bクラス」とよく似た2本のキャラクターラインが刻まれたのは、このためである。

Mercedes-Benz A 180 BlueEFFICIENCY|メルセデス・ベンツ A 180 ブルーエフィシェンシー

Mercedes-Benz A 180 BlueEFFICIENCY|メルセデス・ベンツ A 180 ブルーエフィシェンシー

エクステリアデザインでは、ひとつ「おや?」とおもうことがあった。

新型Aクラスを、真正面からほんの少しだけ外れた位置で眺めると、ハッチバックではなく3ボックスセダンのようにおもえることがあるのだ。後輪の後ろ側が微妙に膨らんでいて、これがあたかもトランクルームのように見えるのがその理由である。デザイナーが意図したものか、はたまた単なる偶然かはわからないが、なかなか面白い効果であることは間違いない。

Mercedes-Benz A 180 BlueEFFICIENCY|メルセデス・ベンツ A 180 ブルーエフィシェンシー

Aクラス 国内試乗記(3)

なぜ今、フツーのボディ構造に?

新型Aクラスのもうひとつの“若返りポイント”は全高が160mmも低くなったこと。

これは初代と2代目に採用されていたフロアのサンドイッチ構造をあらためることで可能になった。

もともとサンドイッチ構造は、EVや燃料電池車などで必要となるスペースを確保するためにボディの全長にわたってフロアを二段構えとしたものだが、コンベンショナルなパワートレーンでは床下にここまで大きなスペースは必要なく、このためせっかくのトールボーイスタイルが室内スペースにあまり生かされないという事態を招いていた。

Mercedes-Benz A-Class|メルセデス・ベンツ Aクラス

今回、新型Aクラスは広々とした居住空間を確保したまま全高を抑えることに成功したが、EVや燃料電池車の普及がいよいよ間近に迫ってきたこの時期に、敢えて「フツーのボディ構造」に戻したことは不可解といえなくもない。

もっとも、メルセデスはEV化を諦めたわけではなく、フロアの後方部分のみに手をくわえるだけで必要なコンポーネンツを搭載できるよう「サンドイッチ構造を進化させた」と説明する。もしもそうだとすれば、これは理想的な解決方法といえるだろう。

ボディのスリーサイズでいえば、旧型にくらべて全長が400mm以上長くなったこともトピックのひとつ。こうして新型Aクラスは背が低くて長い「スポーティなプロポーション」を手に入れることができた。ここでも新型Aクラスの若返りははかられたのである。

Mercedes-Benz A 180 BlueEFFICIENCY|メルセデス・ベンツ A 180 ブルーエフィシェンシー

Mercedes-Benz A 180 BlueEFFICIENCY|メルセデス・ベンツ A 180 ブルーエフィシェンシー

インテリアデザインも若々しい。

エアコンの吹き出し口にシルバーのリングをあしらったほか、メーター類の文字盤をシルバーに、そしてグレードによってはダッシュボードをカーボン調の素材で覆うことにより、スポーティなイメージを強調。クォリティ感はAクラスのほうが高いものの、“走り屋イメージ”を前面に押し出したデザインは、まるでアルファロメオのようでもある。

Mercedes-Benz A 180 BlueEFFICIENCY|メルセデス・ベンツ A 180 ブルーエフィシェンシー

Aクラス 国内試乗記(4)

メルセデスのDNA

走りはじめても、ダンピングが効いてどっしりとした乗り心地はスポーツモデルを彷彿とするもので、これまでメルセデスが歩んできたコンフォート路線とはひと味ことなっている。

1.6リッター直噴ターボエンジンは低速域から力強いほか、スロットルを踏み込めば6,000rpmまで素直にトルクが立ち上がっていく。さらに、レスポンスのいいデュアル・クラッチ式7段ATがこの印象に拍車を掛ける。そのいっぽうでエンジンの騒音やロードノイズは十分に静かで、メルセデスの名に恥じない。

ただし、ハンドリングそのものは際だってスポーティという印象は抱かなかった。かつてのメルセデスに比べればコーナリング時の舵角はずいぶん小さくなっているし、ロールが抑えられているので、ステアリングを切りはじめてから実際にターンインするまでの時間は確実に短くなっているが、だからといって、このクラスの代表的なスポーティモデルのようにクィックでスポーティとは言い切れない。むしろどっしりと落ち着いていて安心感の強いハンドリングである。

Mercedes-Benz A 180 BlueEFFICIENCY|メルセデス・ベンツ A 180 ブルーエフィシェンシー

Mercedes-Benz A 180 BlueEFFICIENCY Sports|メルセデス・ベンツ A 180 ブルーエフィシェンシー スポーツ

しかし、これは決して悪いという意味ではなく、逆に神経質すぎない分、リラックスしたドライビングが可能とも表現できる。この傾向は、標準モデルよりダンパーを一段と締め上げた「A180 スポーツ」でも大きくは変わらなかった。

もっとも、取材当日の試乗会場周辺は一部雪に覆われていて本格的にコーナリングを試すチャンスには恵まれなかったので、もしも別の機会にワインディングロードを攻めることができれば、印象はちがってくるかもしれない。

また、新型Aクラスによりスポーティな味わいを求める向きには、少し遅れて「A250 Sport」が発売されるので、こちらを待つという手もある。

若々しいイメージを手に入れながらも、メルセデス本来のバリューを失わなかった新型Aクラスは、先進の安全装備を盛り込みながら価格は284万円からとお手頃な設定になっている。

競争の激化が予想されるCセグメント市場において、新型Aクラスはこれまで以上に大きな存在感を放つことになるだろう。

spec

Mercedes-Benz A 180 BlueEFFICIENCY|メルセデス・ベンツ A 180 ブルーエフィシェンシー
ボディサイズ|全長4,290×全幅1,780×全高1,435mm
ホイールベース|2,700 mm
トレッド 前/後|1,545 / 1,545 mm
最低地上高|110 mm
トランク容量(VDA値)|341-1,157 リットル
重量|1,430 kg (パノラミックスライディングルーフ設定時 1,460 kg)
エンジン|1,595cc 直列4気筒 直噴DOHC ターボ
最高出力| 90kW(122ps)/ 5,000 rpm
最大トルク|200Nm(20.4kgm)/ 1,250-4,000 rpm
トランスミッション|7段オートマチック(7G-DCT)
駆動方式|FF
タイヤ|225/45R17(ナイトパッケージ設定時 225/40R18)
燃費(JC08モード)|15.9 km/ℓ
価格|284万円

Mercedes-Benz A 180 BlueEFFICIENCY Sports|
メルセデス・ベンツ A 180 ブルーエフィシェンシー スポーツ

ボディサイズ|全長4,355×全幅1,780×全高1,420mm
ホイールベース|2,700 mm
トレッド 前/後|1,545 / 1,545 mm
最低地上高|95 mm
トランク容量(VDA値)|341-1,157 リットル
重量|1,440 kg (パノラミックスライディングルーフ設定時 1,470 kg)
エンジン|1,595cc 直列4気筒 直噴DOHC ターボ
最高出力| 90kW(122ps)/ 5,000 rpm
最大トルク|200Nm(20.4kgm)/ 1,250-4,000 rpm
トランスミッション|7段オートマチック(7G-DCT)
駆動方式|FF
タイヤ|225/40R18
燃費(JC08モード)|15.9 km/ℓ
価格|335万円

Mercedes-Benz A 250 SPORT|メルセデス・ベンツ A 250 シュポルト
ボディサイズ|全長4,355×全幅1,780×全高1,420mm
ホイールベース|2,700 mm
トレッド 前/後|1,555 / 1,560 mm
最低地上高|120 mm
トランク容量(VDA値)|341-1,157 リットル
重量|1,450 kg (パノラミックスライディングルーフ設定時 1,480 kg)
エンジン|1,991cc 直列4気筒 直噴DOHC ターボ
最高出力| 155kW(210ps)/ 5,500 rpm
最大トルク|350Nm(35.7kgm)/ 1,200-4,000 rpm
トランスミッション|7段オートマチック(7G-DCT)
駆動方式|FF
タイヤ|235/40R18
燃費(JC08モード)|-
価格|420万円

           
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