新生Aクラスに早速試乗|Mercedes-Benz
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2014年12月10日

新生Aクラスに早速試乗|Mercedes-Benz

Mercedes-Benz A-Class|メルセデス・ベンツ Aクラス

Aはアタックだ

新生Aクラスに試乗

ジュネーブモーターショーで公開されて以来、まったくあたらしいその姿に注目があつまる、メルセデス・ベンツのあらたな「Aクラス」。驚くほどスポーティになった姿から、走りにも興味がつきないが、ついに、そのAクラスに試乗する機会を得た。河村康彦氏による、試乗リポート!

Text by KAWAMURA Yasuhiko

似ずに非なる、これがあたらしいAクラス

モデル名の“A”とは「攻撃(Attack)」のAである──ダイムラーA.G.会長であり、メルセデス・ベンツのブランド統括も兼任するDr.ディーター・ツェッチェ氏が語ったという、ちょっと唐突にも聞こえるそうしたフレーズ。が、いざ実車を前にすれば「なるほど、そうした新解釈もあながち的外れではなさそうだナ」と納得出来てしまうのが、今年春のジュネーブモーターショーで初披露をされたあたらしい「Aクラス」だ。

Mercedes-Benz A-Class|メルセデス・ベンツ Aクラス

ジュネーブモーターショーでのワールドプレミア

Mercedes-Benz A-Class|メルセデス・ベンツ Aクラス

先代Aクラス

1997年に誕生した初代モデルからは、数えて3代目。しかし、誰の目からも一見で明らかなように、そんな新型は、構造的にもルックス的にも共通のコンセプトを採用して来たこれまで2代のAクラスとは、まさに「似ずに非なる」モデルだ。なにしろそれは、ボディサイズを比較しただけでも明白。4ドア+テールゲートという構成にだけは変わりがなくても、今度のモデルは従来型にたいして全長が40cm以上も長く、高さは16cmも低くなっている。事実、かくも歴代のモデルと新型のあいだにあらゆる面での大きなギャップが存在する事は、「開発をまったくの白紙からスタートさせた」という開発陣のコメントにも象徴されている。そこで共通するのは、もはや「Aクラス」という名前だけなのだ。

Mercedes-Benz A-Class|メルセデス・ベンツ Aクラス

Aはアタックだ

新生Aクラスに試乗(2)

もっともスポーティなルックのメルセデス・ベンツ──A250スポーツ

それにしても、新型のエクステリア・デザインは驚くほどに大胆そのものだ。

エンブレムがなければ国籍不明となりかねない(?)ちょっと凡庸なリアビューの仕上がり具合だけは、少々残念におもえてしまう、が、それをのぞけば大きな“スリーポインテッドスター”を中央に配したグリルを主役に据えたフロントマスクも、深い陰影をもたらす2本のキャラクターラインが採用されたサイドビューも、なんともアグレッシブでスポーティだ。

Mercedes-Benz A-Class|メルセデス・ベンツ Aクラス

Mercedes-Benz A-Class|メルセデス・ベンツ Aクラス

ちなみに、今回は小さな飛行場を用いたクローズド・コースでごく短時間の“味見”をする程度のドライブに限られたが、「開発はAMG本体が担当した」と報告される専用のローダウンサスペンションや、オーバーブースト機能を備える、やはり専用チューニングのエンジンを搭載する「A250スポーツ」は、鮮やかに輝く“ダイアモンド・グリル”や、赤い挿し色がくわえられた前後エプロンの採用などで、さりげなく、しかし効果的に、ほかのグレードとの差別化を図っている。

いずれにしても、今度のAクラスは「佇まいそのものが、数あるラインナップの中にあっても、もっともスポーティなメルセデス」であると自分はおもう。

兄貴ゆずりのインテリア

そんな気合いの入ったエクステリアにたいして、インテリアの頑張りようもなかなかだ。

“10キー”を含む小さなスイッチを並べたセンターパネル部のちょっと旧態依然としたデザインだけは、せっかくの“あたらしい意欲”に水をさしているようにもおもえてしまう。他のモデルから譲り受けた(?)とおぼしき、ドアトリムにレイアウトされたシートやライトのスイッチ類も、「どうせなら斬新なデザインで挑んで欲しかった」という気持ちも皆無ではない。

けれども、大胆にも中央部に派手な空調ヴェントを3連レイアウトとしたダッシュボードや、昨今流行のタブレット型端末を、あえて立て掛けたかのように見せるナビゲーション用モニターなどのデザインも、なかなか“粋”でイイ感じ。

そして、それらすべての部分がFRレイアウトを採る兄貴分たちにも見劣りをしない高いクオリティを感じさせる点も、今度のAクラスの「みどころ」なのである。

Mercedes-Benz A-Class|メルセデス・ベンツ Aクラス

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Aはアタックだ

新生Aクラスに試乗(3)

A250ブルーエフィシエンシーであらたなAクラスを試す

この種のイベントではめずらしいスロベニアの地で開催された国際試乗会で、おもにテストドライブをおこなったのは、最高211psを発する2リッターターボ付き直噴4気筒エンジンを“7G-DCT”を語る7速DCT(デュアルクラッチトランスミッション)と組み合わせた「A250ブルーエフィシエンシー」。ちなみに、そんなこのグレードでのトランスミッションはDCTのみ。1.6リッターエンジンを搭載する「A180」や「A200」に見られる6段MTは、設定そのものがなされていない。

従来のCVT(無段変速機)から一転で採用されたDCTは、そんな”初もの”感をイメージさせないスムーズな制御が持ち味だ。トルコンATにひけをとらない滑らかなスタートと、MTライクな小気味良い加速感を両立。0-100km/h加速タイムがわずかに6.6秒というデータも示す通り、アクセルペダルを深く踏み込んだシーンでの力強さも文句ナシだ。

Mercedes-Benz A-Class|メルセデス・ベンツ Aクラス

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エンジンはトルクフル

この「A250ブルーエフィシエンシー」での動力性能上の最大の特徴は、日常シーンで用いるエンジン回転数域がとにかく低い事。わずか1,200rpmから350Nmという大きな最大トルクを発生させるというスペックどおり、このモデルの心臓はごく低回転域からレスポンス良く太いトルクを発してくれる。そんなキャラクターを生かし、ノーマルモードでのDCTはスタート直後から驚くほど早く高いギアを選んでいく。そもそもギア比も、100km/hクルージング時のエンジン回転数がわずかに1,600rpmに過ぎないほど高く、常に低いエンジン回転数を選びつつ、多少のアクセル踏み込みではキックダウンもおこなわずに静かに進んで行くさまは、まるで新種のディーゼルモデルに乗っているような感覚でさえあるのだ。

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Aはアタックだ

新生Aクラスに試乗(4)

BかAか スポーツか

最初に乗った「A250 ブルーエフィシエンシー」は、専用のローダウンサスペンションに18インチのシューズを履いた、“AMGスポーツライン”仕様のモデルだった。

先に紹介の「A250スポーツ」ほどではないにせよ、軽いスポーツチューンが施されたモデルに快適性を期待する方が間違いか……と、正直そんな先入観も手伝ってか、このモデルのフットワークテイストは、むしろ予想外にしなやかとおもえるものでもあった。

少なくとも、直前に日本でテストドライブを経験した、あたらしい「Bクラス」よりも「サスペンションが良く動く」印象は確かだったし、同時に低重心感がみなぎる、4つの車輪がしっかりと路面を捉えるコーナリング時のフィーリングも好感の持てるものだった。そんな印象は、「174mmも高い位置にあった」というポジションのシートに、妙な脚の投げ出し姿勢で座っていた従来のAクラスと比べるべくもないのは当然だろう。

Mercedes-Benz A-Class|メルセデス・ベンツ Aクラス

Mercedes-Benz A-Class|メルセデス・ベンツ Aクラス

ちなみに、新型Aクラスのキャビンは「大人4人が実用的に乗り込む事は可能だが、後席はヒール段差(フロアとヒップポイント間の高低差)が小さめで、ドアの開口部形状から乗降時の頭の運びもややきつい」という“前席優先思想”が明白。後席居住性を重視するならば、選んで欲しいのはBクラス──それが、開発陣のおもいであるにちがいない。

いっぽう、そんなAMGスポーツラインから、標準サスに17インチシューズを組み合わせる“アーバンライン”仕様へと乗り換えると、今度は「さらに快適性がアップするだろう」という期待感を抱いていたゆえか、そこでは少々の落胆が否めないものだった。

確かに、特に低速域ではタイヤのちがいの分だけ、路面凹凸を乗り越した際のシャープな衝撃が緩和された印象はある。が、端的に言ってサスペンションの動きそのものがより滑らかになったとはおもえないし、ストローク感も先ほどまでのモデルよりも勝るとはおもえなかったのだ。

このあたりが、そもそもそういうものなのか、あるいは個体差による影響などがあるのか、断定をするのは難しい。が、現時点で言えるのは「この状況ならば、よりオススメにあたいするのはAMGスポーツラインの方」という事だ。

Mercedes-Benz A-Class|メルセデス・ベンツ Aクラス

いずれにしても、そんなあたらしいAクラスというのは、これまでのメルセデス・ラインナップには見られなかった価値観を肌で実感できるモデル。世界のマーケットで、あらたなる層のメルセデス・ユーザーを獲得できるのは確実だ。

渡辺敏文氏による新型Aクラスのインプレッションもご覧ください

spec

Mercedes-Benz A250 BlueEFFICIENCY|メルセデス・ベンツ A250 ブルーエフィシエンシー
ボディサイズ|全長4,292x全幅1,780x全高1,433 mm
ホイールベース|2,699mm
エンジン|1,991cc直列4気筒ターボチャージャー
最高出力|155kW(211ps)/5,500rpm
最大トルク|350Nm/1,200-4,000rpm
トランスミッション|7段DCT
駆動方式|前輪駆動
0-100km/h加速|6.6秒
最高速度|240km/h
燃費|6.1ℓ/100km
CO2排出量|143g/km
ホイール|17インチ(スタイルライン アーバンライン設定時) 18インチAMGマルチスポーク軽量ホイール(AMGスポーツ設定時)
タイヤ|225/45(スタイルライン アーバンライン設定時) 225/40(AMGスポーツ設定時)

           
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