ホンダが2015年度に発売する燃料電池車のコンセプトを披露|Honda
Honda FCV Concept|ホンダ FCV コンセプト
2015年度中の発売を目指す
ホンダが燃料電池車のコンセプトを発表
ホンダが発表した燃料電池自動車「FCV コンセプト」は、2008年よりリース販売している「FCX クラリティ」の後継モデルと位置づけられ、昨年のロサンゼルスショーで公開されたコンセプトモデルのデザインをリファインし、より市販車にちかづけたモデルである。
Text & Event Photographs by UCHIDA Shunichi
ホンダが描く水素エネルギー社会の未来
11月17日にホンダが発表したのは、FCXクラリティの実質的な後継として2015年に発売を予定する、あたらしい燃料電池車の試作モデル「FCV コンセプト」。
このコンセプトモデルの最大の特徴は、空力を意識した先進のエアロボディデザインを採用しつつ、ホンダのMM思想(マンマキシマム・メカミニマム──ひとの空間は最大に、機械の空間は最小に)に基づいた5人乗りのセダンパッケージを実現したことだ。
エクステリアデザインのコンセプトは、“Advanced Clean Dynamic”。
本田技術研究所四輪R&Dセンターで、FCV開発責任者を務める清水潔氏は「ロー&ワイドの走りを予感させるフォルムと、フロントのエアインテークからフロントホイールアーチに空気を逃がすことで、フロントタイヤ周辺のエアフローを整流させています。
これと同様の効果をリアフェンダーでもおこなうことで、デザインと空力性能を両立させているのです。まさに機能美あふれる先進エアロボディを目指しました」と説明する。
いっぽう、インテリアデザインのコンセプトは“Advanced Clean Comfort”とし「先進テクノロジーと心満たされる空間との調和を目指して、後部座席まで含めて広々としたインテリアをもたらしました。FCXクラリティからさらに進化させたセダンタイプのFCVとして、5名乗りを実現しています」と同氏は語る。
快適な居住空間確保のため、燃料電池パワートレインをボンネット内に
技術面で注目したいのは燃料電池パワートレインの小型化だ。FCXクラリティではセンタートンネルに収めていた燃料電池スタック(セルの集合体)を、今回のモデルでは小型化することで、駆動モーターとともにボンネット内に収めることに市販車として世界で初めて成功した。同時に出力は100kW以上、出力密度も3.1kW/ℓと従来比で約60パーセントの向上を果たしている。
また、このコンセプトカーには70MPaの高圧水素貯蔵タンクが搭載され、700km以上の航続距離を実現。水素タンクの再充填は約3分という短時間で完了し、現在のガソリン車と同等の使い勝手を可能にしている。
さらには、FCXクラリティで実証試験を積み重ねた外部給電機能も装備しており、FCVと外部給電器を組み合わせることで「走る電源」として、災害時などにクルマがつくる電力をコミュニティに提供することができる。
この新型FCVは2015年度中に日本での販売を目指す。その後、米国、欧州へ展開していく予定だ。
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2015年度中の発売を目指す
ホンダが燃料電池車のコンセプトを発表 (2)
FCV開発のリーディングカンパニーであるという自負
無尽蔵に存在する水や、多様な一次エネルギー源から製造が可能な水素。輸送や貯蔵もできることから、次世代の有望なエネルギーとしていまもっとも期待されるもののひとつだ。
伊東孝紳社長は会見で、「ホンダは自由な移動の喜びと、豊かで持続可能な社会の実現を目指し、電動化モビリティや、低炭素社会実現に向けた技術の開発に取り組んでいる。移動する喜びや、感動をいつまでもわかちあうために、弊社は地球温暖化や、化石燃料の枯渇といった課題への解決策として、水素エネルギーにいち早く着目をした」とコメント。
また「来る水素社会に向けて、ホンダが描く水素エネルギー社会をユーザーと共有したいと考え、“つくる・つかう・つながる”という3つのコンセプトをベースに、水素関連の技術開発をおこなってきた」とつづけた。
このうち、“つくる”の観点では、「太陽光発電や風力発電など、再生可能エネルギーによる分散型水素エネルギー供給を目指し、岩谷産業の協力のもと、スマート水素ステーションの実証実験をおこなっている」と説明。“つかう”については、「究極のクリーンカーでありながら、ワクワク、ドキドキする走行性能も有する燃料電池自動車、FCVを開発し、現在の日米のユーザーに使ってもらっている」という。
そして“つながる”では、「FCVを走る電源として、家庭や公共施設に電気を送ることで、クルマと地域社会を繋げ、皆様のお役にたつことを目指して、外部給電機の開発に取り組んできた。この3つのコンセプトによって水素エネルギーの利用拡大に、積極的に貢献していきたい」と意気込みを語る。
FCVについて伊東氏は、「2002年に開発したFCXは、世界で初めて米国認可を取得し、日米でリース販売を開始した。また、2003年には世界で初めて氷点下始動を可能にした燃料電池スタック、ホンダFCスタックを自社開発。
2008年には世界で初めてセダンタイプの革新的なパッケージや、異次元のドライブフィールといったクルマとしてのあたらしい価値や魅力を備えたFCXクラリティのリース販売を開始した。このFCXクラリティと、外部給電機を組みあわせることで、走る電源としての実証実験を積み重ねてきている」とこれまでを振り返る。
そして、「ホンダはFCVのリース販売を通じて、リアルワールドでの一般ユーザーの使い勝手や走行データを蓄積しており、FCV開発のリーディングカンパニーであると自負している」とコメントした。
FCXクラリティなどでの実証実験を繰り返し、完成度を高めているホンダFCV。競合他社からも水素燃料電池車が発表されており、ホンダFCVが市販された後、どのような販売競争が繰り広げられるか楽しみである。