MOVIE|“終活”と真摯に向き合う究極の物語『母の身終い』
LOUNGE / MOVIE
2015年5月25日

MOVIE|“終活”と真摯に向き合う究極の物語『母の身終い』

MOVIE|死後を生前から準備する“終活”と真摯に向き合う究極の物語

母親と息子の絆を描いた『母の身終い』

 

「自分らしい最後を迎えたい」。不治の病に冒され死期が近い母親が決心した、究極の選択に戸惑う息子。死後を生前から準備する“終活”を描く『母の身終い(みじまい)』が、11月30日(土)よりシネスイッチ銀座ほかにて全国ロードショーされる。

Text by KUROMIYA Yuzu

愛する人の究極の選択をどう受け止めるか

 

人はさまざまな出来事や、感情の激しい起伏をなんとか受け入れて、長い人生をひたすら歩んでいく。そして誰にでも訪れる最期のとき。そこで気にかかるのは人生の終わり方かもしれない。もちろん誰もが心穏やかに終焉を迎えたいと思うだろう。しかし、高齢化社会や核家族化に長じて起こる介護問題や終末医療の是非などが取りざたされる現代において、それは自分自身でコントロールできるのだろうか?

『母の身終い』はそんな思いや不安を抱く私たちに、ひとつの終焉のケースを提示し、人生のあり方や最期への心がまえ、そして愛をあらためて問う荘厳な人間ドラマだ。

母の身終い 02

母の身終い 03

 

監督を務めたのは、セザール賞3部門にノミネートされた『愛されるために、ここにいる』(2005年)で注目を集めたステファヌ・ブリゼ。息子アランを演じるのは繊細な感情表現に長けた演技派として評価の高い、ヴァンサン・ランドン。母イヴェットにはベテラン、エレーヌ・ヴァンサンを配役。また、アランがボーリング場で出会う女性クレメンスを、ロマン・ポランスキー監督夫人としても知られる女優エマニュエル・セニエが演じているのも注目だ。

“最後の日”を決めたがる母親と出所したばかりの息子

 

48歳のトラック運転手アランは、出来心から麻薬の密売に手を出して服役したのち、出所。母イヴェットの家に身を寄せて、なんとか人生の再出発をしようとあがいていた。しかし、ふたりの間には長年にわたる根深い確執があり、ふたつの心は簡単には和解しない。そして年老いた母親は、脳腫瘍に冒され死期も間近い。

そんなある日、息子は、母の薬が入った引き出しの中の書類を手に取って愕然となる。そこには「尊厳死の表明」「スイスの施設で尊厳死」「人生の終え方を選択する」といった文章が書かれ、母のサインがあったからだ。アランの心は激しく揺り動かされる。ふたりの残された時間は、あまりにも少ない。そしてついに母が旅立つ日の朝がやってきた――

日本でも近年話題になっている“終活”。自分らしく人生を終えることとは、また命は誰のものか。訪れる終焉に真摯に向き合った、成熟したフランス映画が誕生した。

 

 

『母の身終い』

11月30日(土)より、シネスイッチ銀座ほかで全国ロードショー

監督・脚本|ステファヌ・ブリゼ

出演|ヴァンサン・ランドン、エレーヌ・ヴァンサン、エマニュエル・セニエ

提供・配給|ドマ/ミモザフィルムズ

2012年/フランス/カラー/108分/
http://www.hahanomijimai.com/

© TS Productions - Arte France Cinema - F comme Films - 2012

           
Photo Gallery