MOVIE|後戻りできないテクノロジーの真実に迫るドキュメンタリー『世界が食べられなくなる日』
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2015年1月17日

MOVIE|後戻りできないテクノロジーの真実に迫るドキュメンタリー『世界が食べられなくなる日』

MOVIE|遺伝子組み換え農作物と原発──後戻りできないテクノロジーの真実に迫る

ドキュメンタリー『世界が食べられなくなる日』

遺伝子組み換え農作物と原子力という、20世紀に生み出されたテクノロジーの“真実”に迫るフランス人監督ジャン=ポール・ジョー監督によるドキュメンタリー『世界が食べられなくなる日』。6月8日(土)より、渋谷アップリンクほかで公開される。

Text by YANAKA Tomomi

遺伝子組み換え食品の実験にカメラが密着

これまで『未来の食卓』や『セヴァンの地球のなおし方』を発表し、食の重要性を訴えつづけるジャン=ポール・ジョー監督による新作『世界が食べられなくなる日』が日本に到着した。

本作ではラットに、彼らの寿命に相当する2年にわたり、遺伝子組み換え食品を与えつづけるという極秘でおこなわれた実験にカメラが密着。遺伝子組み換え食品の危険性について告発する。

そして遺伝子組み換え作物の及ぼす影響と同時に描かれるのが“原発のある風景”だ。世界第二位の原発保有数であり、常にリスクと隣り合わせのフランスと、福島第一原発事故以降の日本。その地に住む農家がどのような影響を受けたのかについても両国の農家へのインタビューとともに報告する。

世界が食べられなくなる日 02

世界が食べられなくなる日 03

安心して食べられる世界を残すために

2009年、フランスである動物実験が極秘に開始された。それはラットのエサに遺伝子組み換えトウモロコシ、農薬をいくつかの組み合わせで混ぜて与えるという、2年にわたる長期実験だった。

現在、市場に流通している遺伝子組み換え食品の安全基準は、ラットに遺伝子組み換え作物を3カ月間与えつづけても問題ないという実験結果をもとにしているという。人間の寿命を80歳とすれば、ラットの3カ月は人間の約10年に相当し、その後の影響については考慮されていないのが現状だ。

カメラは分子生物学者セラリーニ教授がおこなったこの世界初の2年間の実験をつぶさに撮影。対象のラットに腫瘍の発生率、死亡率の上昇がみられたという。そしてこれらの結果は2012年に専門誌で発表されると、フランスをはじめ世界中に大きな波紋が広がった。

世界が食べられなくなる日 04

また、作品のなかではセネガルでおこなわれている持続可能な農業システム「アグロエコロジー」についても報告するなど、農業の“あらたな未来”についても提示。古来からある農法の重要性を訴えている。

安心して食べられる世界を子どもたちに残すために私たちが必要としているものはあたらしい技術か、それとも古来から受け継がれる知識なのか──。どちらの未来を選ぶかがいま、私たちに問われている。

世界が食べられなくなる日 05

『世界が食べられなくなる日』
6月8日(土)より、渋谷アップリンクほかで公開
監督│ジャン=ポール・ジョー
配給│アップリンク
2012年/フランス/118分
http://www.uplink.co.jp/sekatabe/

           
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