新型ベントレー・コンチネンタルGTに試乗|Bentley
Bentley Continental GT|ベントレー・コンチネンタルGT
ベントレーの歴史にその名を残すGT
2017年9月のフランクフルトモーターショーでデビューし、12月には日本でも発表された 3代目ベントレー「コンチネンタルGT」。4WDシステムやサスペンション、そしてプラットフォームにいたるまで大幅に進化した同モデルに、モータージャーナリストの大谷達也氏が試乗した。
Text by OTANI Tatsuya
ワインディングロードでの機敏な走りは、2代目までとはまったくの別物
新型ベントレー「コンチネンタルGT」でオーストリアのハイウェイを穏やかに流す。
静謐なキャビン、なめらかな乗り心地、贅の限りを尽くした素材で覆われたインテリア……。そんな空間に身を置き、ゆったりとした気分でステアリングを操っていると、2、3時間ほど前までこの同じステアリングを握ってアルプスの山並みを走り抜けていたことが信じられない気分になってくる。
6.0リッターW12ターボエンジンとフルタイム4WDを組み合わせ、豪華な4シーターボディを優雅に走らせるというコンチネンタルGTの成り立ちは、3代目になってもまったく変わらない。おかげで、これまでと同じように高速道路では余裕たっぷりにクルージングできる。しかし、ワインディングロードで見せたその機敏な走りは、2代目までのコンチネンタルGTとはまったくの別物だった。
ヨーロッパ大陸を越えて走り続けるグランドツアラーとして生み出されたコンチネンタルGTは、高速走行時に安定した姿勢を保つことを目的とした足回りが極めて強靱なため、コーナリング時にもドライバーの意図を正確にくみ取って力強い走りを示してくれる。ただし、ステアリング特性としては安定志向が強く、スポーツカーのようにヒラリヒラリとノーズの向きを変えられるとは限らなかった。
ところが3代目コンチネンタルGTは、指先のちょっとした動きにもノーズが軽快に反応し、意のままにワインディングロードを駆け抜けることができる。ドライバーに無上の喜びをもたらすそのコーナリングは、従来スポーツカーだけに許された特権というべきものだが、新型コンチネンタルGTは圧倒的な高速クルージング性能をなに一つ損なうことなく、スポーツカーと見紛うようなシャープなハンドリングを手に入れたのである。
Bentley Continental GT|ベントレー・コンチネンタルGT
ベントレーの歴史にその名を残すGT(2)
ポルシェの血を引くスポーティな乗り味
その秘密は新型に与えられたメカニズムに隠されている。
2代目に比べると、新型は前車軸の位置を135mm前方に移動。この結果、これまで前車軸をまたぐようにして搭載されていたW12エンジンはほぼ前車軸の後方に積まれる格好になった。つまり、フロントエンジンのスポーツカーでしばしば採用される"フロントミッドシップ"と呼ばれるレイアウトに近づいたわけで、このおかげでコーナリング時にシャープなノーズの動きを見せるようになったのだ。
もう一つ特徴的なのはフルタイム4WDシステムに電子制御多板クラッチ式を用いた点にある。これまでコンチネンタルGTはトルセンデフによって前後車軸にエンジントルクを振り分けていたが、これは基本的なトルク配分が50:50もしくは40:60のように固定されているほか、前後の配分比に大きな差をつけると4WDとしての効果が薄れる傾向があった。
しかし、新型に採用された電子制御多板クラッチ式であれば、普段は後輪駆動と同じようにほぼすべてのエンジントルクを後車軸に伝えながらも、いざとなれば50:50に近いレベルまで前車軸にトルクを伝達することが原理的に可能。つまり4WDならではの優れたトラクション性能を引き出すこともできるので、4WDのメリットを失うことなく後輪駆動のような軽快なハンドリングも実現できるのだ。これが新型コンチネンタルGTにスポーツカー的なハンドリングとグランドツアラーらしいスタビリティの両面をもたらしたことは間違いない。
さらに新型はスーパースポーツカーで広く用いられているデュアルクラッチ式トランスミッション(DCT)と呼ばれるギアボックスを採用。従来のトルコン式ATと異なり、エンジンと車軸が強固に連結されるため、ドライバーの右足の動きが加減速力に反映され、これがスポーツドライビングの楽しみを倍加させていたのである。
ここに挙げた技術は、いずれもポルシェが中心となって開発したMSBと呼ばれるプラットフォームを採用することで実現できたもの。いわば新型コンチネンタルGTはポルシェの血を得たわけで、スポーティな味わいを得たのも当然といえる。
Bentley Continental GT|ベントレー・コンチネンタルGT
ベントレーの歴史にその名を残すGT(3)
豪華なインテリアはさらにラグジュアリーに
しかし、ベントレーはMSBをベースにしながらも、自分たちが求めるグランドツアラーの世界観を実現するため、大きなモディファイを実施した。例えば、空気量の調整代が大幅に増えた3チャンバー式エアサスペンションを駆使することで、スポーツカー並みのハードなセッティングからラグジュアリーサルーンのようなしなやかな設定まで自由自在に制御できるポテンシャルを手に入れるいっぽう、ベンテイガで登場した48V式アクティブアンチロールバーを活用してコーナリング性能と乗り心地を高い次元で両立。シチュエーション次第でスポーツカーにもグランドツアラーにも変化できる足回りを手に入れたのだ。
しかも、豪華なインテリアはさらにラグジュアリーに生まれ変わった。
上質なレザーを用いたシートには新たに"ダイヤモンド・イン・ダイヤモンド"と呼ばれるキルティング加工を設定。菱形を二重に刺繍することで、陽の当たり方次第で光が反射する様が変わり、さまざまに表情を変化させるステッチが誕生した。
センターコンソールにはコート・ド・ジュネーブと呼ばれる金属加工を新たに採用。これはスイス製高級機械式腕時計のムーブメントにヒントを得た一種の装飾加工で、幅5mmの線状模様を繰り返し表現することで深い味わいと圧倒的な精度感を生み出している。
まるでジュエリーのような輝きを放つダイヤモンドナーリング、ダッシュボードの表示を大型ディスプレイ、もしくはクラシカルなアナログメーターから選べるベントレー・ローティングディスプレイ、上下で別々のウッド素材を選択できるようになったダッシュボード周りのデザインなども、ベントレーならではのゴージャスなインテリアを一層引き立てている。
グランドツアラーの資質を一切損なうことなくスポーツカーのポテンシャルを獲得した3代目は、コンチネンタルGTの世界を大きく広げたモデルとしてベントレーの歴史にその名を残すことだろう。
Bentley Continental GT|ベントレー コンチネンタルGT
ボディサイズ|全長 4,850 × 全幅 2,187(ミラー開) × 全高 1,405mm
ホイールベース|2,851 mm
重量|2,244 kg
前後重量比|55:45
エンジン|6.0リッター W型12気筒 ツインターボ
最高出力| 635ps/ 6,000 rpm
最大トルク|900 Nm / 1,350-4,500 rpm
トランスミッション|8段DCT
駆動方式|4WD
サスペンション 前|4リンク ダブルウィッシュボーン式エアサスペンション
サスペンション 後|マルチリンク式エアサスペンション
ブレーキ 前|420mm ベンチレーテッドディスク
ブレーキ 後|380mm ベンチレーテッドディスク
タイヤ 前|265/40ZR21
タイヤ 後|305/35ZR21
最小回転半径|5.755 メートル
トランク容量|358 リットル
0-100km/h加速|3.7 秒
最高速度|333 km/h
CO2排出量(EU6)|278 g/km
価格|2568万円
ベントレー コール
0120-97-7797