アストンマーティンDB11が日本上陸|Aston Martin
Aston Martin DB11|アストンマーティンDB11
アストンマーティンDB11が日本上陸
アストンマーティンが誕生して今年で103年、総数約8万台が生産された。そのうち“DB”ネーミングのモデルは1/3に上るという。その最新モデル、「DB11」が日本でもローンチされた。価格はベースモデルが2,380万円、ローンチエディションは2,591万5,720円。
Text by UCHIDA ShunichiPhotographs by UCHIDA Chizuko
セカンドセンチュリープランの第1弾
DBシリーズの歴史は1950年に登場した「DB2」にまで遡る。このDBとは当時の経営者、デイビッド・ブラウン氏のイニシャルから取られている。DBシリーズで有名なのは、第1回日本グランプリでも活躍した「DB4GTザガート」をはじめ、ボンドカーで知られる「DB5」、ウイリアム王子の結婚式でも使用された「DB6」など多岐にわたる。
「2014年に就任したアストンマーティンのCEO、アンディー・パーマーは日本に強い思い入れを持っています」とは、アストンマーティンジャパン、マネージングディレクターの寺嶋正一氏だ。ちなみにパーマー氏の前職は日産自動車の副社長で、日本事情には精通している。
パーマー氏は、「アストンマーティンが持つ、イギリス伝統のクラフツマンシップ、デザインフィロソフィーと、日本が誇るモノ作りの精神、品質管理、おもてなしの心というものを融合させ、ブランドを発展させていこうと考えています。そして、次の新しい100年を“セカンド センチュリー プラン”と名付け、さまざまなプロジェクトを進めていますが、このセカンドセンチュリープランの先陣を切って登場するクルマがこのDB11なのです」と述べる。
アストン初のツインターボ搭載
「DB11」に搭載されるエンジンは、5.2リッターDOHC V12ツインターボエンジンで、608ps、700Nmを発生。0-100km/h加速は3.9秒、最高速は322km/hで、アストンマーティンのロードゴーイング史上最もパワフルな性能を誇る。トランスミッションはZF製8段ATだ。
また、最先端の可変バルブタイミング、インテリジェント バンク アクティベーション、ストップ/スタートテクノロジーにより、史上最も燃料効率の良いエンジンでもあるという。
このインテリジェントバンクアクティベーションは、クルージング中のアクセルオフ時や軽い加速時など、エンジン負荷が低い時に片側のバンクを休止させ、燃料消費を大幅に抑えるテクノロジーだ。バンク休止中に触媒コンバーター温度が適正範囲を下回りそうになると、エンジンマネージメントシステムがすぐに12気筒全てを作動させることで、ポテンシャルを最大限発揮させた時でも、パフォーマンスやドライビングプレジャーに妥協を強いることなく、効率と排ガス特性を向上させているという。
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乗り心地と走行性能を両立した足回り
DB11にはビルシュタインアダプティブダンピングとともに、制動によるアクティブトルクベクタリングと複数のダイナミックモードが採用されたことで、ドライバーニーズに応じて最適なレスポンスを実現するという。そのカギとなるのが、3種類のダイナミック ドライブモードと、操舵性、乗り心地、そしてハンドリングを高次元でバランスさせるシャシー テクノロジーだ。
まず、基本となるシャシー開発では、さまざまな負荷、車速、操舵角、操舵率、縦G、横G、上下の挙動を、各種センサーにより3次元解析。このデータをもとに、最新世代ビルシュタインアクティブダンピング、電動パワーステアリング、アクティブトルクベクタリングのチューニングとキャリブレーションが行われている。
3段階あるダイナミックドライブモードの1つ、「GTモード」では、グランドツアラーらしい乗り心地とキャラクターを実現。次に「スポーツモード」に切り替えると、車両全体の剛性感とコントロール性、レスポンスが強調される。具体的には新しい電動パワーステアリングとアクティブトルクベクタリングのレスポンスが高速化され、俊敏性が前面に押し出されるという。
「スポーツ プラス モード」では、サスペンション、ステアリング、エンジン、トランスミッション、アクティブトルクベクタリングが協調動作することでDB11のポテンシャルを最大限発揮。これによって、「ドライバーは、より積極的かつダイレクトにドライビングアクションに関与することができるのです」と寺嶋氏は説明する。
空力に特化したエクステリア
DB11のボンネットは、“クラムシェルボンネット”と呼ばれるフロントにヒンジがあるタイプで、いわゆる逆アリゲータータイプという開き方をする。業界でも最大クラスのアルミ一体構造を持つこのボンネットは、フェンダー側に開閉のカットラインを通すことで、ボンネット上にカットラインがなくなり美しい仕上がりを見せる。
また、フロントグリルは、ザガート モデルを除き、アストンマーティン史上最も大きく彫の深いデザインであり、アストンマーティンのウイングバッチもこれまでで最も大きいとのこと。
サイドのデザインで特徴的なのは“ルーフストレーキ”だ。AピラーからCピラーにかけてアーチを描くこのデザインは、DB11のデザインシグネチャーの1つとなっており、製作には多くの工数が要求される。具体的には、素材を押出成形したあと、伸ばしと曲げ加工を施し、プレス成形行程を経て、レーザーカットし、磨きをかけ、最終的にアルマイト処理を施した結果、デザインチームが描いたとおりの形状になるという。
また、アストンマーティンのシンボルであるフロントフェンダーの“サイド ストレーキ”は、従来モデルでは装飾にすぎなかった。しかし、DB11では、フロントから吸い込んだ空気をサイドストレーキから吐き出すことで、高速安定性の向上に寄与しているとのこと。
エアロダイナミクスにおいては、リアクオーターガラスの隙間から空気を取り込み、トランクの上端に流すことによってリアセクション全体でダウンフォースを作り出す“アストンマーティン エアロブレード”も採用。これによって、スポイラーなどで流麗なシルエットを損なうことなく高い高速安定性を実現しているという。
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アストンマーティンDB11が日本上陸 (3)
新たな取り組みのインテリア
内装については、アストンマーティンの伝統的なデザインを残しつつも、実用性は格段に向上していると説明される。その一例として、ダイムラーの電装技術を取り入れたことで、ナビゲーションやインフォテインメントが使いやすくなっていることが挙げられた。また、インストルメントパネルにはアストンマーティンとして初めて12インチのTFTパネルを採用。モードを切り替えると、パネルの色が変わり、現在のモードが容易に認識できるようになっている。
そのほか、本来は革靴などに使われる加工技術、“ブローギング”をインテリアレザーに取り入れるなど、これまでにない試みもなされた。
寺嶋氏はアストンマーティン ブランドについて、「日本でも浸透してきてはいますが、まだまだGTなのか、スポーツカーなのか、セダンなのかがはっきりしないというお客様が数多くいます。実はアストンマーティンは、スポーツカーとしての側面も、GTカーとしての側面も持っています」とし、サーキットから、GTとしてのロングツーリング、そして、タキシードを着てパーティにも出かけられるなど、多岐にわたって楽しめるクルマだと強調。特にDB11は、ダイナミックドライブモードをはじめさまざまなセッティングを選ぶことができることから、「どのようなシーンにおいても活躍できるクルマです」としめくくった。
Aston Martin DB11|アストンマーティン DB11
ボディサイズ|全長 4,739 × 全幅 1,940 × 全高1,279 mm
ホイールベース|2,805 mm
重量|1,770 kg
エンジン|5,204 cc V型12気筒 直噴DOHC ツインターボ
圧縮比|9.2
最高出力| 447 kW(608 ps)/ 6,500 rpm
最大トルク|700 Nm/ 1,500-5,000 rpm
トランスミッション|8段AT
駆動方式|FR
ブレーキ 前|φ400×36mm ベンチレーテッドディスク
ブレーキ 後|φ360×32mm ベンチレーテッドディスク
サスペンション 前/後|ダブルウィッシュボーン式 / マルチリンク式
タイヤ 前/後|255/40R20 / 295/35R20(ブリヂストン S007)
トランク容量|270 リッター
0-100km/h加速|3.9 秒
最高速度|322 km/h
価格|2,380万円(ローンチエディションは2,591万5,720円)